著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
入院中の高齢者では、低栄養はよく見られ、臨床的にも重要な問題です。論文によると、加齢に伴う食欲低下や複数の病気、身体機能の低下によって食事量が減りやすく、病気に伴う炎症や体の分解の進行も栄養状態を悪化させます。低栄養は感染症、入院の長期化、回復の遅れ、死亡リスクの上昇と関連し、虚弱やサルコペニア(加齢による筋肉量や筋力の低下)とも結びついています。
栄養状態の評価には、さらに詳しい評価が必要な人を拾い上げる「スクリーニング」と、低栄養かどうかを判断する「診断」の段階があります。CONUTスコアは、血清アルブミン、総コレステロール、総リンパ球数という日常的な血液検査の値から計算するスクリーニング指標です。患者への聞き取りやベッドサイドでの計測が要らないことが利点です。ただし、これらの検査値は病気や治療の影響も受け、体格や体組成を直接は測りません。そのため著者らは、CONUTを低栄養の確定ではなく、検査値に基づく栄養リスクの目安として扱っています。
研究チームの以前の研究では、別の指標であるGNRIによる栄養リスクを、体の計測値がよく見分けていました。しかし、GNRIの計算式には体重が含まれているため、体重やBMIとの関連の一部は計算上の重なりを反映している可能性がありました。CONUTには体の計測値が含まれないので、こうした重なりなしに関連を調べられます。そこで本研究は、入院中の高齢者でCONUTスコアと、体の計測値、計測値から導いた各種指数、体組成との関連を調べました。あわせて、これらの指標がCONUTで定義した栄養リスクをどの程度見分けられるかを評価しました。
何を調べたか
この研究は横断研究です。横断研究とは、ある一時点のデータを比較する研究のことです。対象は、老年科病棟に入院した60歳を超える患者で、進行中の老年医学研究の枠組みで集められたデータを使いました。血液検査の値は、通常の診療で行われた検査結果を診療記録から取り出しており、研究のために追加の検査は行っていません。
測定項目は多岐にわたります。BMIや上腕・ふくらはぎなどの周囲長といった一般的な計測値に加え、計測値を組み合わせた各種の指数も含みました。さらに、生体電気インピーダンス法(BIA)で、体脂肪量や筋肉量などの推定値を求めました。BIAは、体に微弱な電流を流して体組成を推定する方法です。むくみや腹水のある人、心臓ペースメーカーを使っている人、進行した慢性腎臓病の人などは対象から除かれました。著者らは、こうした除外はBIAによる評価のために必要だったと説明しています。
主な結果
CONUTで栄養リスクありとされた人では、上腕周囲長とふくらはぎ周囲長が小さく、これらとCONUTスコアとの間には弱い負の相関がみられました。たとえば上腕周囲長29センチを区切りにすると、リスクありの人の73%を拾い上げられました(感度)。一方で、リスクなしの人を正しく除外できた割合は51%にとどまりました(特異度)。見分ける力の総合的な目安であるAUCは0.638で、識別能力は限られていました。AUCは1に近いほど識別能力が高いことを示します。また、多くの項目を同時に検定することによる偶然の差を補正した解析では、上腕周囲長について統計的に有意な結果は示されませんでした。
筋肉量は、リスクあり群となし群のあいだで有意な差がありませんでした。著者らは、CONUTの構成要素がいずれも筋肉量を直接反映しないことから、この結果は意外ではないと述べています。
最も一貫した関連を示したのは体脂肪でした。リスクあり群では体脂肪量が少なく、多重比較の補正後も統計的に有意だったのは体脂肪率だけでした。体脂肪量と体脂肪率は、調べた指標の中で最も高い識別能力を示しましたが、その水準はやはり控えめなものでした。一方、計測値を組み合わせた複雑な指数は、補正後にいずれも有意な関連を示さず、単純な計測値や体組成を上回る識別能力も示しませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、入院中の高齢者において、体の計測値や体組成はCONUTによる栄養リスクを見分ける力が限られていると結論づけています。したがって、これらの測定はCONUTによる分類の代わりにはならないとしています。著者らは、血液検査に基づく指標と体の測定は互いに置き換えられるものではなく、補い合う情報をもたらすという見方を示しています。
解釈には注意も必要です。単一施設の比較的小規模な研究であり、リスクありとされた人の多くは軽度で、重度の人は含まれていませんでした。また、低栄養の正式な診断基準による評価は行っていません。横断研究であるため、体脂肪が少ないことが栄養状態の悪化の結果なのかどうかも、この研究からは分かりません。こうした前提のもとで、本研究は、手軽な体の測定だけで血液検査に基づく栄養リスクの判定を代用することは難しいことを示しています。
原著論文の著者・所属:Justyna Nowak(Department of Cardiovascular Disease Prevention, Department of Metabolic Disease Prevention, Faculty of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia, 41-902 Bytom, Poland)、Marzena Jabczyk(Department of Nutrition-Related Disease Prevention, Department of Metabolic Disease Prevention, Faculty of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia, 41-902 Bytom, Poland)、Michał Skrzypek(Department of Biostatistics, Faculty of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia, 41-902 Bytom, Poland)、Michał Górski(Department of Psychiatry, Department of Neurology, Faculty of Health Sciences in Katowice, Medical University of Silesia in Katowice, 40-635 Katowice, Poland)、Barbara Zubelewicz-Szkodzińska(Department of Endocrinology, District Hospital, 41-940 Piekary Slaskie, Poland; Department of Nutrition-Related Disease Prevention, Department of Metabolic Disease Prevention, Faculty of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia, 41-902 Bytom, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Justyna Nowak, Marzena Jabczyk, Michał Skrzypek, et al. Discriminative Performance of Anthropometric and Body Composition Measures for Identifying CONUT-Defined Nutritional Risk in Hospitalized Older Adults: A Cross-Sectional Study. Nutrients 2026-10-09. DOI: 10.3390/nu18203316. 原著ライセンス:CC BY.