お米づくりの水田は、私たちの主食を支える一方で、メタン(CH4)という温室効果ガスの発生源としても知られています。気候変動の影響で稲の移植(田植え)時期がずれてきている中、収量を大きく落とさずにメタン排出を減らせる移植のタイミングはあるのか——この問いに取り組んだ研究が、韓国の安城(Anseong)で実施されました。

どんな研究が行われたか

研究チームは、日本型(ジャポニカ)品種であるコシヒカリとチャムドリーム(Chamdream)の2品種を用い、5月10日から6月25日の間に設定した4つの異なる移植日で水田を2年間にわたり栽培しました。栽培期間中は水田を継続的に湛水(たんすい)した状態で管理し、季節を通じたメタン排出量、メタン由来の地球温暖化係数(GWP_CH4)、収量あたりに換算した温室効果ガス強度(GHGI_CH4)、玄米収量、そして排出量が積み重なっていく経過を調べました。

わかったこと

収量については、品種と年の組み合わせごとに見ると、移植日による統計的に明確な差はおおむね見られませんでした。例外はチャムドリームの2023年で、5月10日に移植した区画は、それより遅い移植日の区画に比べて収量が有意に低くなりました。

季節全体のメタン排出量は、2023年より2024年の方が一貫して多く、処理区ごとの増加幅はおよそ1.3倍から2.5倍にのぼりました。一方、GWP_CH4とGHGI_CH4がもっとも低くなったのは、6月中旬から下旬にかけて移植した区画でした。統計的に収量の低下が確認されなかった処理区の中で比較すると、もっとも低いGHGI_CH4は、コシヒカリでは5月10日移植と比べて28〜45%低く、チャムドリームでは54〜65%低い値でした。この結果をもとに選ばれた移植日は、コシヒカリでは2年間とも6月25日、チャムドリームでは2023年の6月10日から2024年には6月25日へと変化しました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

著者らは、これらの2年間の結果について、あらゆる条件に当てはまる「万能な最適解」を示すものではなく、今回試験した条件のもとで品種ごとに異なる「6月中旬から下旬」という範囲を特定したものだと位置づけています。実際、同じ品種でも年によって最適とされる移植日がずれる結果も出ており、気象条件などによって結果が変わりうることがうかがえます。この研究には日本の国立研究機関に所属する著者も加わっています。

まとめ

この研究は、韓国産の2つのジャポニカ米品種を対象に、水田の移植時期を6月中旬から下旬にずらすことで、収量に統計的な悪影響を与えずにメタン由来の温室効果ガス強度を下げられる可能性を示唆するものです。ただし、最適な時期は品種や年によって異なり、2年間・特定地域での事例研究である点には留意が必要です。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:品種特異的なメタン排出と移植日に対する収量換算温室効果ガス強度の応答:韓国における事例研究(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)