著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:International Journal of Food Microbiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
チーズ由来のカビに対する精油の働きを調べる
研究チームは、チーズのカビによる変敗を抑える方法を探るため、オレガノとタイムの精油を調べました。精油は植物から取り出した揮発性の成分を含む油です。対象としたのは、カチョカヴァッロチーズから分離したカビ、アルターナリア・アルテルナータです。増殖を抑える効果に加え、カビの細胞に起こる変化と、チーズの香りへの影響も検討しました。
著者らは、液体培地、チーズを含む寒天培地、チーズのスライスで精油の効果を比較しました。使用したオレガノ精油はカルバクロール、タイム精油はチモールを主成分としていました。
チーズ表面で増殖を防いだ濃度
液体培地では、オレガノ精油は0.94%、タイム精油は0.12%で、カビの代謝活動が検出されなくなりました。いずれも体積比の濃度です。この条件で処理したカビを、精油を含まない培地に移しても10日間コロニーが生じなかったことから、著者らは殺菌作用があったと報告しています。
チーズのスライスに精油を噴霧し、14±1℃で10日間保存した試験でも、オレガノ0.94%とタイム0.12%でカビの増殖を防いだと報告されました。一方、チーズを含む寒天培地では、試した濃度で増殖や胞子の発芽は減ったものの、完全には抑えられませんでした。精油の効果は、試験する環境によって異なっていました。
細胞の損傷と、ストレスに対応する変化
細胞を蛍光で染めて観察すると、精油で処理したカビでは、細胞膜の電気的な状態の変化や、エネルギー生産を担うミトコンドリアの機能異常が認められました。さらに、細胞を傷つけうる反応性の高い酸素・窒素由来の物質の蓄積や、DNAの損傷を示す変化も報告されました。24時間後には、菌糸と胞子の多くが生存能力を失っていることを示す染色結果が得られました。
同時に、脂質を蓄える粒や、細胞壁の成分であるキチンにも変化が見られました。著者らは、これらを損傷だけでなく、ストレスに対応しようとする反応としても捉えています。ただし、観察された変化が一定の順序で次の変化を引き起こしたという因果関係までは、この研究では確立していません。
香りへの影響も濃度で変わる
カビを接種していないチーズでは、訓練を受けていない16人が、精油を加えて24時間後の香りを予備的に評価しました。高濃度では強いハーブの香りが付き、香りの総合評価が低くなりました。一方、増殖を防いだオレガノ0.94%とタイム0.12%では、香りの変化は比較的小さく、評価も無処理のチーズに近いものでした。この試験は香りの相対的な変化を調べたもので、消費者の好みや製品全体の品質を確認したものではありません。
この研究は、試験した条件では両精油がチーズ由来のカビを抑え、その作用に複数の細胞変化が伴うことを示しました。また、カビを抑える効果と香りへの影響を、濃度と合わせて考える重要性を伝えています。
原著論文の著者・所属:Shazia Akram(Department of Bioscience and Technology for Food, Agriculture and Environment, University of Teramo, Via R. Balzarini 1, 64100, Teramo, Italy)、Giuseppe Natale Basile(Department of Soil, Food and Plant Sciences, University of Bari Aldo Moro, Bari, Italy)、Luca Valbonetti(Department of Bioscience and Technology for Food, Agriculture and Environment, University of Teramo, Via R. Balzarini 1, 64100, Teramo, Italy)、Giuseppe De Mastro(Department of Soil, Food and Plant Sciences, University of Bari Aldo Moro, Bari, Italy)、Annalisa Serio(Department of Bioscience and Technology for Food, Agriculture and Environment, University of Teramo, Via R. Balzarini 1, 64100, Teramo, Italy)、Clemencia Chaves-Lopez(Department of Bioscience and Technology for Food, Agriculture and Environment, University of Teramo, Via R. Balzarini 1, 64100, Teramo, Italy. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shazia Akram, Giuseppe Natale Basile, Luca Valbonetti, et al. Targeting Alternaria alternata in cheese: Multi-mechanism antifungal activity of essential oils integrating lethal and adaptive stress responses with preliminary olfactory evaluation. International Journal of Food Microbiology 2026-09-15. DOI: 10.1016/j.ijfoodmicro.2026.112065. 原著ライセンス:CC BY.