著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアの職業高校(SMK)は、生徒が卒業後すぐに働けるよう、仕事に直結する知識と技能を身につけさせることを目指しています。調理分野の1年生(カリキュラム上の「フェーズE」)では、基本となる合わせ調味料の作り方やスパイスの使い方といった実習に直結する内容を学びます。
研究チームが東ジャワ州モジョケルトの職業高校で授業を観察したところ、使われている教科書は長い文章が中心の白黒印刷で、イラストもほとんどありませんでした。生徒は飽きやすく、つかみにくい内容を理解しにくい様子で、図書室の本も数が少なく、クラス内で回し読みする必要がありました。スパイスや調味料は形や色、働きを目で見て覚えることが大切な題材です。そこで著者らは、デザインツール「Canva」を使い、視覚的に分かりやすいデジタル配布資料(e-handout)を開発しました。研究の目的は、その開発の過程を示すこと、内容と媒体としての適切さを専門家に評価してもらうこと、そして生徒の反応を調べることの3点です。
教材の作り方と評価の方法
開発には、教材づくりでよく使われる「ADDIE」という手順を用いました。これは分析、設計、開発、実施、評価の5段階で進める考え方です。今回の研究は、そのうち最初の3段階(分析・設計・開発)までに範囲を限っています。著者らは、使える妥当な教材を完成させることを目標としており、学習成果への効果を測る「実施」と「評価」の段階は扱っていません。
分析の段階では、既存の教科書がデジタル化されておらず、説明が不十分でイラストも少ないことを確認しました。設計の段階では、どのページに何を載せるかを示す絵コンテを作りました。開発の段階で内容をCanvaに入力し、全52ページの教材に仕上げました。この教材には文章のほか、画像、アニメーション、動画、使い方の説明、用語集、練習問題と解答が含まれます。スマートフォンやノートパソコンからリンクやQRコードを使ってオンラインで開くことができ、ダウンロードは必要ありません。
評価にはアンケートを使いました。回答は「とても良い」から「良くない」までの4段階で、どちらとも言えないという中間の選択肢は設けていません。内容(教材の中身)と媒体(見た目や使いやすさ)は、それぞれ3人の専門家が評価しました。評価者は調理教育の大学教員と、この学校の担当教員です。さらに、調理科1年生34人が教材全体を読んだうえで、25項目のアンケートに答えました。結果は平均点と百分率で示し、75%を超えると「非常に適切」と判定しました。
主な結果
内容面の評価は、専門家からの指摘を受けて修正したあとの最終評価で、平均3.57点(89.46%)となり、「非常に適切」と判定されました。導入部分、本文、補足資料のいずれの観点でも同じ判定でした。一方で、専門家からは文字の大きさを12ポイントにし、飾りのない書体にすると読みやすくなるといった指摘もありました。
媒体面の評価は平均3.68点(92.13%)で、こちらも「非常に適切」でした。特に使いやすさの点数が高く、論文はその理由として、ページ間のリンク、学習動画、教材に組み込まれたオンラインのクイズなどを挙げています。ただし表紙については、配色が目立たないという指摘がありました。
生徒の反応は平均3.48点(87.18%)で、著者らはこれを「とても良い」と評価しています。生徒からは、練習問題で自分の理解度を確かめられることや、記号やイラストが興味を引くこと、インターネットにつながればいつでもどこでも開けることが評価されました。著者らは、同じ大学のグループが以前に作った食品衛生の教材と比べて、媒体面の点数は今回の方が高く、内容面と生徒の反応はやや低かったと報告しています。
この研究が示すこと
この研究は、身近なデザインツールを使って、文字中心の教科書を画像や動画を取り入れたデジタル教材に作り替えることができ、その教材が専門家と生徒の双方から高く評価されたことを示しています。ここでの評価は、アンケートで測った「適切さ」と「生徒の受け止め方」です。この教材を使って生徒の成績や理解度が実際に上がるかどうかは、今回の研究では調べていません。それでも、目で見て覚える要素の大きい調理の学習で、教材の見せ方を工夫しようとする現場の試みとして、一つの具体例を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Luna Rizky Nurmala(Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Surabaya)、Sri Handajani(Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Surabaya)、Ita Fatkhur, Romadhoni(Pendidikan Tata Boga, Fakultas Teknik, Universitas Negeri Surabaya)、Ratna Palupi Nurfatimah(D4 Tata Boga, Fakultas Vokasi, Universitas Negeri Surabaya)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luna Rizky Nurmala, Sri Handajani, Ita Fatkhur, Romadhoni, et al. PENGEMBANGAN E-HANDOUT BERBASIS PLATFORM CANVA PADA MATERI BUMBU DASAR DAN REMPAH UNTUK SMK KULINER FASE E. Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar 2026-08-13. DOI: 10.23969/jp.v11i03.65146. 原著ライセンス:CC BY.