冬場に手足の冷えを感じやすい「冷え性」は、多くの人にとって身近な悩みです。冷えには血管の反応、つまり寒さにさらされたときに皮膚の血流がどう変化するかが関わっていると考えられています。また、血管の内側を覆う「血管内皮」の働き(血管内皮機能)は、全身の血管の健康状態を示す指標として知られています。今回紹介するのは、えごま油などに含まれる必須脂肪酸「α-リノレン酸(ALA)」を継続的に摂取すると、これらにどのような変化が見られるかを調べた研究です。ALAはこれまでの研究で血管機能の改善やアレルギー症状の緩和との関連が示唆されてきましたが、健康な人を対象にALA単独の効果を検証した報告はこれまでなかったとされています。

研究でわかったこと

この研究は、冷え性を自覚している健康な日本人成人120名を対象に行われた、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験です。参加者は、ALAの含有量が異なる食用油(低用量群:1日1.27g、高用量群:1日2.03g)、またはプラセボ(対照)のいずれかを12週間摂取するグループに分けられました。そのうえで、寒冷曝露後の皮膚血流・皮膚表面温度、血管内皮機能(FMD:血流依存性血管拡張反応)、目や鼻のアレルギー症状が測定されました。

その結果、寒冷曝露後の早い時間帯において、ALA摂取群では皮膚血流や皮膚表面温度が対照群より高い値、またはその傾向を示したと報告されています(皮膚表面温度については低用量群でp=0.014、高用量群でp=0.061)。血管内皮機能については、全体としてはALA群と対照群の間に統計的に明確な差は見られませんでした(低用量群p=0.128、高用量群p=0.412)。ただし、介入前のFMD値が6%未満だった人たちに限定したサブグループ解析では、低用量群・高用量群のいずれにおいても有意な改善が認められています(それぞれp=0.038、p=0.043)。一方、アレルギー症状についてはグループ間で差はみられませんでした。血液検査では、ALA摂取群で血清ALA濃度が対照群より有意に高くなっており、さらに高用量群ではEPAやDPAといった他のn-3系脂肪酸の血清濃度も有意に上昇したことが確認されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

研究チームは、ALAの摂取が血中のn-3系脂肪酸濃度を高め、疾患のない日本人成人において冷え性や血管内皮機能に良い方向の効果を示したとまとめています。ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。血管内皮機能に関しては全体解析では有意差が出ておらず、改善がみられたのは介入前の数値が低かった人に限られたサブグループ解析である点には注意が必要です。またアレルギー症状については今回明確な効果は確認されていません。対象者が冷え性を自覚する健康な日本人成人に限られている点も、結果を読み解くうえで踏まえておきたいポイントです。

まとめ

今回紹介した研究では、ALAを含む食用油を12週間摂取することで、血清中のn-3系脂肪酸濃度が上昇するとともに、寒冷曝露後の皮膚血流・皮膚温や、一部の対象者における血管内皮機能に良い方向の変化が見られたと報告されています。冷え性や血管の健康と食事の関係を考えるうえで興味深い知見ですが、効果を断定するものではなく、今後さらなる研究による検証が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食事性α-リノレン酸は健康な成人において寒冷曝露後の皮膚血流と血管内皮機能を改善する:ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)