著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
家庭での料理への関わりは、健康的な食生活と関連することが知られています。しかし、思春期の若者が料理に関わることと、孤独感、悲しさ、心理的ストレス、自殺念慮(自殺について真剣に考えること)といった心の不調との関係は、ほとんど調べられていませんでした。
研究チームによると、ブラジルでは思春期の若者の心の不調が大きな課題になっています。14〜19歳の自殺念慮の割合は、2006年の11.2%から2022年には26.7%に増えたと報告されています。一方、ブラジルの若者、とくにアマゾン地域に住む若者についての研究はまだ限られています。そこで著者らは、ブラジル北部ロライマ州ボア・ヴィスタの高校生を対象に、家庭での料理への関わりとこれら4つの心の不調との関連を調べました。
何をどのように調べたか
この研究は、ある一時点の状態を調べる「横断研究」です。2025年3月から5月にかけて、市内の9つの教育地区から公立高校を1校ずつ選び、14〜19歳の生徒1032人の回答を分析しました。
料理への関わりは、「家族の食事の計画」「食品を選ぶ・買う」「家族の食事づくり」の3つの場面について、「まったくしない」「ときどきする」「いつもする」の3段階で尋ねました。食事づくりには、食材を切る、味付けする、加熱するといった作業のほか、食卓の準備、後片付け、食器洗いなども含まれます。心の不調は既存の調査票の質問を使って尋ねました。たとえば悲しさや孤独感は、「よく」または「いつも」感じる場合を「不調あり」としました。
分析では、年齢、性別、人種・肌の色、通学する時間帯、世帯収入、身体活動、画面を見る時間、体格の影響をできるだけ取り除きました。そのうえで、料理に「まったく関わらない」生徒を基準にしました。ほかの生徒で不調のある人の割合が基準の何倍になるか(有病率比)を計算しています。
主な結果
対象の生徒のうち、悲しさを報告した人は32.1%、孤独感は35.6%、心理的ストレスは49.1%、自殺念慮は32.4%でした。
調整後の分析では、料理に「まったく関わらない」生徒と比べて、関わっている生徒の一部で、特定の心の不調の割合が低いという関連が見られました。食事の計画に「いつも」関わる生徒では、孤独感のある人の割合が、まったく関わらない生徒の約0.61倍でした。食品の選択・購入に「ときどき」関わる生徒では、悲しさ、孤独感、心理的ストレスの割合が低くなっていました。「いつも」関わる生徒では、孤独感と自殺念慮の割合が低くなっていました。食事づくりに「ときどき」関わる生徒では、悲しさ、孤独感、心理的ストレスの割合が低くなっていました。「いつも」関わる生徒では、悲しさと孤独感の割合が低くなっていました。
ただし、関連の出方は活動の種類や不調の種類によって異なりました。著者らは、「ときどき」と「いつも」の間で、頻度が高いほど割合が低くなるという段階的な形は見られなかったとしています。また、関連の大きさは小さいとも述べています。
この研究が示すこと
この研究は、ブラジルの高校生において、家庭での料理への関わりと心の不調が逆向きに関連していることを示しました。著者らは理由の可能性として、三つを挙げています。自分で決めて行動する力や「できる」という感覚が育つこと、家族との交流が増えること、食事の質がよくなることです。ただし、これらの仕組みは今回の研究では直接調べていません。
一時点の調査であるため、料理に関わることが心の不調を減らすという因果関係は示せていません。また、対象は一つの都市の公立校の生徒に限られています。家族関係などの家庭環境も詳しくは調べられていません。著者らは、現時点では料理への関わりを心の健康を守る対策として勧めるには根拠が不十分だとしています。そのうえでこの研究は、家庭での料理という日常の営みが、若者の心の状態を理解する手がかりになりうることを示しました。
原著論文の著者・所属:Guilherme José Silva Ribeiro(Graduate Program in Nutrition Science, Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Rafaela Mara Silva Fonseca(Graduate Program in Nutrition Science, Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Rafaela Nogueira Gomes de Morais(Graduate Program in Nutrition Science, Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、André de Araújo Pinto(Department of Physical Education, State University of Roraima, Boa Vista 69306-530, RR, Brazil)、Bruna Clemente Cota(Institute of Collective Health, Federal University of Bahia (UFBA), Salvador 40170-115, BA, Brazil)、Mariana de Santis Filgueiras(Graduate Program in Nutrition Science, Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)、Juliana Farias de Novaes(Graduate Program in Nutrition Science, Department of Nutrition and Health, Federal University of Viçosa, Viçosa 36570-900, MG, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Guilherme José Silva Ribeiro, Rafaela Mara Silva Fonseca, Rafaela Nogueira Gomes de Morais, et al. Involvement in Home Cooking Activities Is Inversely Associated with Emotional Problems Among Brazilian Adolescents. Nutrients 2026-10-30. DOI: 10.3390/nu18213606. 原著ライセンス:CC BY.