著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:International Journal for Vitamin and Nutrition Research

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ルテインは食事から摂取する色素成分で、網膜や脳に蓄積します。しかし、血液中のルテイン濃度が高くなっても、網膜の色素密度や認知機能が一貫して高まるわけではありません。研究チームは、ルテインの総量だけでなく、血液中でどのように運ばれるかが関係するのではないかと考えました。

そこで、卵の摂取によって、血中のルテインのうちHDLに運ばれる割合が変わるか、その変化が網膜の黄斑色素密度や認知機能と関連するかを調べました。HDLは、血液中で脂質などを運ぶ粒子の一種です。

何を、どのように調べたか

研究チームは、過去に実施した無作為化比較試験のデータと保存血液試料を使い、探索的な追加解析を行いました。対象は、ルテインを多く含む食品の摂取が少ない、50~85歳の健康な非喫煙者です。43人が参加し、41人が試験を完了しました。

参加者は、毎日、大きな卵2個に相当する全卵100グラムを食べる群と、ルテインを含まない卵白4オンスを食べる群に無作為に分けられました。完了者は全卵群21人、卵白群20人で、介入期間は6か月でした。それ以外の食習慣は変えないよう求められました。

今回の解析では、開始時と6か月後の血清中の総ルテイン濃度、HDLが運ぶルテインの濃度と割合、黄斑色素光学密度を比較しました。黄斑色素光学密度は、網膜の中心部にある色素の濃さを示す指標で、論文では神経組織へのルテイン蓄積の目安として用いています。また、画面上の図形などを使う認知機能検査を行い、記憶、学習、注意などの成績との関係を調べました。

主な報告結果

全卵群では、HDLが運ぶルテイン濃度の平均値が0.19から0.24マイクロモル/リットルへ、血清中の総ルテインに占めるHDL上の割合が59%から67%へ上昇しました。黄斑色素光学密度も、平均0.42から0.51へ上昇しました。これらは、いずれも開始時と比べて統計的に有意な変化でした。一方、血清中の総ルテイン濃度の増加は有意ではありませんでした。

卵白群では、HDLが運ぶルテイン濃度と割合が開始時より有意に低下し、黄斑色素光学密度には有意な変化がありませんでした。ただし、全卵群と卵白群の間に統計的に有意な差は検出されませんでした。

全参加者を対象とした解析では、血中ルテインの各指標の変化と黄斑色素光学密度の変化に関連は認められませんでした。全卵群のうち、HDLが運ぶルテインの割合が増えた14人に限ると、その割合の増加と黄斑色素光学密度の上昇が関連する傾向はありましたが、統計的に有意ではありませんでした(p=0.07)。

認知機能については、全41人の解析で、HDLが運ぶルテインの割合の増加が、視覚的な記憶や新しい組み合わせを学ぶ検査の一部の成績向上と関連していました。この関連は、年齢、教育歴、開始時の検査成績を考慮した解析でも認められました。一方、血清中の総ルテイン濃度の変化は、認知機能の変化と関連しませんでした。

この報告が示すこと

著者らは、血液中のルテインの総量だけでなく、HDLなどの運搬粒子への分配が、神経組織への蓄積や認知機能の状態を捉える手がかりになる可能性を示したと解釈しています。ただし、報告された関連は因果関係を示すものではなく、卵を食べることで認知機能が改善すると結論づけるものではありません。

研究チームは、少人数の探索的な追加解析であり、多数の検定に伴う偶然の有意差を調整していないこと、卵に含まれるルテイン以外の栄養素の影響を十分に分けられないこと、期間が6か月と比較的短いことを限界として挙げています。この報告の焦点は、ルテインが「どれだけあるか」に加え、「何に運ばれるか」にも目を向けた点にあります。

原著論文の著者・所属:Emily Mohn Haberlin(RNA Therapeutics Institute, University of Massachusetts Chan Medical School, Worcester, MA 01655, USA)、Tammy M. Scott(Friedman School of Nutrition Science and Policy, Boston, MA 02111, USA)、Helen M. Rasmussen(USDA Human Nutrition Research Center on Aging, Tufts University, Boston, MA 02111, USA)、Elizabeth J. Johnson(Friedman School of Nutrition Science and Policy, Boston, MA 02111, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emily Mohn Haberlin, Tammy M. Scott, Helen M. Rasmussen, et al. Egg Consumption Alters Lutein Transport in the Circulation and Enhances Macular Pigment Density in Older Adults. International Journal for Vitamin and Nutrition Research(出版社:Hogrefe Verlag) 2026-10-14. DOI: 10.31083/ijvnr50298. 原著ライセンス:CC BY.