著者の所属・活動拠点の国は、パキスタンです。

掲載誌:Pakistan Journal of Positive Psychology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

社会的孤立、つまり人とのつながりや交流が乏しい状態は、高齢者にとって深刻な公衆衛生上の問題として広く認識されるようになっています。論文の著者らは、孤立が心身の健康に影響するだけでなく、食事のとり方や食欲を少しずつ変え、栄養状態全体にも影響しうると指摘しています。

そこで研究チームは、60歳以上の人々について、社会的孤立が食事のパターンや食べ物の選び方にどのような影響を及ぼしているかを調べることを目的としました。

調査の方法

この研究は、ある一時点で対象者の状況を調べる「横断研究」です。対象は、パキスタンのラホール市内のさまざまな地域で孤立して暮らす60歳以上の高齢者95人でした。参加者は、無作為抽出ではなく、協力を得やすい人から選ぶ「便宜的抽出」と呼ばれる方法で集められています。

調査には決まった質問項目からなる質問票が使われ、年齢などの基本的な属性、生活習慣、食事のとり方について情報が集められました。集めたデータは統計ソフトで分析されました。なお、ここでの紹介は論文の抄録に記載された内容に基づいています。

主な結果

抄録によると、95人のうち22人(23.16%)がいつも一人で食事をしていました。また24人(25.3%)が、社会的孤立は自分の食習慣に大きな影響を与えていると答えました。

食欲や食事の回数に関する回答もありました。約24人(25.26%)が一人で食べることによって食欲がなくなったと答え、39人(41.05%)が孤独のために時々食事を抜くことがあると回答しています。

飲食物の内容については、約29人(30.53%)が紅茶やコーヒーを毎日飲んでいました。さらに多くの人が揚げ物や甘いものを頻繁に食べていたと報告されています。著者らはこれを、気持ちを慰めるための「コンフォートフード」に頼る傾向の表れであり、栄養面の健康に影響するものと解釈しています。ただし、こうした食べ物を選ぶ理由を回答者自身が孤立や孤独と結びつけていたかどうかは、抄録には記載されていません。

研究が示すこと

著者らは、社会的孤立が高齢者の食行動を大きく変え、栄養不良や健康リスクの増大につながることが多いと結論づけています。そのうえで、この問題には、社会参加を促し、栄養のある食べ物を手に入れやすくし、心の支えを提供するような、地域を基盤とした総合的な取り組みが必要だと提言しています。

この調査では、一定の割合の高齢者が、一人で食べることを食欲低下の理由として、また孤独を時々の欠食の理由として自ら挙げていました。食べ物の選び方との関係は著者らの解釈によるものですが、高齢者自身の回答からは、食事の中身だけでなく、誰と食べるか、人とのつながりがあるかという点も食生活に関わっていることがうかがえます。

原著論文の著者・所属:Ifraeem Rabia Taqwa(Akhtar Saeed College of Allied Health Sciences, Lahore, Pakistan)、Ayesha Rafique(Akhtar Saeed College of Allied Health Sciences, Lahore, Pakistan)、Aqsa Ali(Akhtar Saeed Medical and Dental College, Lahore, Pakistan)、Sania Malik(The Superior University, Lahore, Pakistan)、Sohail Ahmad(The University of Agriculture, Swat, Pakistan)、Muhammad Ahmad Afzal(Government College University, Faisalabad, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ifraeem Rabia Taqwa, Ayesha Rafique, Aqsa Ali, et al. Impact of Social Isolation on Dietary Intake in the Elderly. Pakistan Journal of Positive Psychology 2026-09-15. DOI: 10.67785/pjpp.5.263. 原著ライセンス:CC BY.