著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、アイルランド、イギリス、アメリカです。
掲載誌:Pediatric Allergy and Immunology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食物アレルギーの子どもと家族は、原因食品を避け続けなければなりません。加工食品の原材料に気を配り、誤って口にしたときに備える必要があります。研究チームは、こうした緊張が学校生活や人付き合い、家庭生活に影響し、子どもだけでなく保護者の生活の質(QOL、日々の暮らしの満足度や負担感)も損なうと説明しています。
QOLを測る一般的な質問票は、病気の種類を問わず比較できる利点があります。一方で、誤って食べてしまう不安や食事制限といった、食物アレルギーに特有の悩みは捉えにくいとされます。そのため、食物アレルギー専用の質問票が開発されてきました。そのうちの二つが本研究の対象です。一つは保護者自身の負担を測るFAQL-PBで、17問から成ります。もう一つは、保護者の目から見た子どものQOLを測る10問の短縮版FAQLQ-PF10です。
著者らによると、この二つの質問票には、検証済みのイタリア語版がまだありませんでした。言語や文化が違うと、保護者が負担をどう感じ、どう答えるかも変わりえます。そこで研究チームは、二つの質問票をイタリア語に翻訳して文化的に調整し、信頼して使えるかを確かめることを主な目的としました。あわせて、QOLの低下と結びつく臨床的な要因も調べました。
どのように調べたか
翻訳と文化的な調整は、世界保健機関(WHO)の推奨手順に沿って行われました。専門家が内容を確認し、食物アレルギーの子どもを持つ保護者が試しに回答しました。保護者は、分かりやすさや質問の適切さについて意見を寄せ、その意見をもとに表現を整えて最終版を作りました。
調査は2019年2月から2020年12月にかけて、イタリアの二つの大学病院(ピサとフィレンツェ)の小児アレルギー部門で行われました。参加した保護者は180人です。このうち128人は、IgE抗体が関わるタイプの食物アレルギーと診断された0〜17歳の子どもの保護者でした。残る52人は、年齢をそろえた、食物アレルギーや慢性疾患のない子どもの保護者で、比較の対照としました。子ども用のFAQLQ-PF10は、元の質問票に合わせて0〜12歳の子どもの保護者だけが回答しました。保護者用のFAQL-PBは全員が回答しました。どちらも、点数が高いほどQOLが悪いことを示します。
研究チームは、質問票の性能を複数の面から確かめました。一部の参加者には1週間あけて同じ質問票にもう一度答えてもらい、結果が安定しているかを見ました。質問どうしが一貫して同じことを測っているかも調べました。さらに、子ども全般のQOLを測る質問票、保護者の抑うつ・不安・ストレスを測る質問票、食物アレルギーに関する別の専用質問票と結果を比べました。アレルギーのある子どもの保護者と対照の保護者の間で点数に差が出るかも確認しました。
主な結果
1週間をあけた2回の回答は非常によく一致しました。一致度を示す係数は、FAQLQ-PF10で0.95、FAQL-PBで0.87でした。質問どうしのまとまりを示す指標(クロンバックのα)も、それぞれ0.87と0.95と高い値でした。
二つの質問票は、食物アレルギーに関する別の専用質問票と中程度に関連していました。一方、一般的なQOLの質問票や、抑うつ・不安・ストレスの質問票との関連は弱いものでした。著者らはこの結果を、二つの質問票が一般的な尺度では捉えきれない食物アレルギー特有の影響を測っている証拠と解釈しています。実際、アレルギーのある子どもの保護者は、二つの質問票のどちらでも対照の保護者より明らかに高い点数を示しました。これに対して一般的なQOLや心理的苦痛の点数には、両グループの間で有意な差がありませんでした。
QOLの低下と結びつく要因も報告されています。強いアレルギー反応であるアナフィラキシーの経験、食物アレルギーによる救急外来の受診、ほかのアレルギー疾患の併存は、子どものQOLの悪化と保護者の負担の大きさの両方に関連していました。子どものQOLについては、年齢が上がるほど、また除去食の期間が長いほど悪化する傾向がありました。きょうだいにも食物アレルギーがある場合も悪化していました。保護者の負担は、牛乳アレルギーの子どもの保護者で最も大きくなっていました。また、牛乳や卵のアレルギーの保護者は、ピーナッツや木の実のアレルギーの保護者より負担が大きいと答えていました。複数の要因を同時に考慮した分析でも、関連は残りました。子どものQOLではアナフィラキシー経験と年齢が、保護者の負担ではアナフィラキシー経験と牛乳・卵のアレルギーが、それぞれ独立して関連していました。
著者らは、牛乳や卵が加工食品や家庭料理、給食などに広く使われていることを指摘しています。そのため完全に避けるのが難しく、日々の管理の負担が続くのではないかと考察しています。ただし、この研究はある一時点の調査です。そのため、これらの要因がQOLを悪化させる原因であるとまでは言えないと、著者ら自身が述べています。参加者が大学病院の患者に限られていたことや、回答者の多くが母親であったことも、結果の当てはまる範囲を限る点として挙げられています。
この研究が示すこと
この研究により、食物アレルギーが子どもと保護者の暮らしに与える影響を、短い専用の質問票でイタリア語でも安定して測れることが示されました。また、一般的なQOLの尺度では見えにくい負担が存在することも示されました。研究チームは、アナフィラキシーのような重症度の目安だけでなく、原因食品ごとの日常的な管理の負担にも目を向けることが、支援を必要とする家族を見つける助けになりうると述べています。
原著論文の著者・所属:Pasquale Comberiati(Department of Clinical and Experimental Medicine, Section of Pediatrics University of Pisa Pisa Italy)、Simona Barni(Allergy Unit, Department of Pediatrics Meyer Children's University Hospital Florence Italy)、Mario Miccoli(Department of Human and Social Sciences Università Mercatorum Rome Italy)、Audrey DunnGalvin(School of Applied Psychology University College Cork Cork Ireland)、Francesca Mori(Allergy Unit, Department of Pediatrics Meyer Children's University Hospital Florence Italy)、Lucrezia Sarti(Allergy Unit, Department of Pediatrics Meyer Children's University Hospital Florence Italy)、Andrea Poli(Department of Human and Social Sciences Università Mercatorum Rome Italy)、Daniel Munblit(Inflammation, Repair and Development Section, NHLI Imperial College London London UK)、Enza D'Auria(Allergy Unit, Department of Pediatrics Buzzi Children's Hospital Milan Italy; Department of Biomedical and Clinical Sciences University of Milan Milan Italy)、David Fleischer(Department of Pediatrics, Section of Allergy/Immunology, Children's Hospital Colorado University of Colorado School of Medicine Aurora Colorado USA)、Diego G. Peroni(Department of Clinical and Experimental Medicine, Section of Pediatrics University of Pisa Pisa Italy)、Mattew Greenhawt(Aquestive Therapeutics, Inc Warren New Jersey USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pasquale Comberiati, Simona Barni, Mario Miccoli, et al. Validation and reliability of the Italian versions of the Food Allergy Quality of Life ‐Parental Burden ( FAQL ‐ PB ) and ‐Parent Form 10 ( FAQLQ ‐ PF10 ) Questionnaires. Pediatric Allergy and Immunology 2026-10-01. DOI: 10.1111/pai.70510. 原著ライセンス:CC BY.