わが子に食物アレルギーがあるとわかったとき、保護者の心にはどれほどの不安や緊張が広がるのでしょうか。毎日の食事の選択、外食時のリスク管理、アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)への備え——そうした日常的な心理的負荷は、当事者でなければなかなか想像しにくいものです。そこに注目した研究が、保護者の「乗り越える力(レジリエンス)」を科学的に測る尺度の開発という形で報告されました。

研究でわかってきたこと

この研究は、昭和医科大学病院小児科を受診した食物アレルギー児の保護者359名を対象に実施されたWEB調査をもとにしています(有効回答率89.8%)。研究では、保護者のレジリエンスを多角的に評価するための尺度を開発し、その信頼性と妥当性を統計的に検証しています。

因子分析の結果、開発された尺度は以下の5つの要素(因子)で構成されることが示唆されています。

  • 医療者の支え:医師や看護師など医療スタッフへの信頼感や連携感
  • 問題解決志向:困難な状況に対して前向きに解決策を探そうとする姿勢
  • 疾患理解:食物アレルギーという疾患そのものへの理解の深まり
  • 栄養士の支え:食事指導・除去食管理における栄養士のサポート
  • 家族の支え:家族内での助け合いや理解の共有

また、下位尺度ごとに関連する背景因子が異なる傾向も報告されています。たとえば「疾患理解」については、子どもの年齢が高いほど、あるいは気管支喘息を合併している場合や鶏卵牛乳小麦などの主要な食物を除去している場合に、スコアが高い傾向が示唆されています。つまり、アレルギーとより深く向き合わざるを得ない状況を経験するなかで、保護者自身の疾患理解が深まっていく可能性があるということです。

この尺度は、保護者一人ひとりのレジリエンスの強みや支援ニーズを多面的に把握できるため、医療現場での個別サポートや保護者向けプログラムの設計に役立つと研究者は述べています。

注目の食品と実測データ

今回の研究に関連する食品(食物アレルギー児や保護者自身)については、当システムのデータベースへの収録が現時点では行われていないため、栄養成分の実測値をご紹介することができません。

ただし、食物アレルギーの文脈でとくに管理が求められる食品として、鶏卵牛乳小麦が挙げられます。これらはいずれも日常的に広く利用される食品であり、除去食を実践する際には代替栄養素の確保が課題となることがあります。たとえば牛乳を除去する場合のカルシウム摂取については、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)を参考に、代替食品(豆乳小魚緑黄色野菜など)の活用が推奨されることがあります。食物アレルギーに関する具体的な除去食の指導は、必ず医師や管理栄養士に相談するようにしましょう。

日々の食事に取り入れるヒント

食物アレルギーのある子どもを育てる保護者にとって、毎日の食事準備は大きな課題のひとつです。この研究が示すように、「栄養士の支え」はレジリエンスを構成する重要な要素のひとつとされています。以下のような実践的なアプローチが、日常をやや軽くする手がかりになるかもしれません。

  • 専門家の定期的な相談を習慣に:管理栄養士への相談は、除去食による栄養バランスの偏りを防ぐための具体的な提案を受けられる機会です。病院や保健センターで相談窓口を活用しましょう。
  • 家族全員で「疾患理解」を深める:研究では「家族の支え」もレジリエンスの重要な構成要素とされています。祖父母や兄弟も含めて食物アレルギーについて共通理解を持つことが、保護者の精神的な安定につながる可能性があります。
  • 除去食のレパートリーを少しずつ増やす:除去食を「制限」ではなく「新しい調理の可能性」ととらえ直し、代替食材を活かしたレシピを少しずつ試してみることが、食事準備のストレス軽減につながるかもしれません。
  • 同じ立場の保護者とのつながりを持つ:患者会やSNSコミュニティなど、同じ状況にある保護者同士の交流は、「問題解決志向」を育む環境にもなり得ます。

食物アレルギーを持つ子どもの食生活は、慎重な管理が必要である一方で、適切なサポートがあれば豊かで楽しい食体験を築くことも十分に可能です。保護者が孤立せず、医療者・栄養士・家族といった多様なサポートを活用しながら、自分自身の「乗り越える力」を育てていける環境が広がっていくことが望まれます。バランスの取れた食生活と、周囲とのつながりを大切に。一人で抱え込まないことが、何よりの第一歩かもしれません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:食物アレルギー児を養育する保護者のレジリエンス尺度開発(J-STAGE 収録論文(日本)(2026-05-28))