著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:収量と品質を両立する「光のレシピ」を探る
紫セロリは、アントシアニンという色素を含む付加価値の高い野菜です。太陽光を使わずLEDなどの人工光だけで作物を育てる植物工場では、光の色(波長)の組み合わせを細かく調整できます。目的に合わせて光の色、強さ、照射時間を組み合わせた条件は「光のレシピ」と呼ばれています。
著者らによると、赤色光と青色光の最適な比率は作物の種類によって異なります。また、地上部の成長と根の発達がトレードオフになりやすいため、紫セロリで生育量と栄養品質をともに高める条件はまだ十分に定まっていません。そこで研究チームは、紫セロリの品種「Oster Purple Jade Celery」を用い、生育、光合成に関わる性質、抗酸化酵素、栄養成分、そして蓄積を抑えたい成分とされる硝酸を、光の条件ごとに比べました。研究チームは、赤色光を主体として青色光を一定割合加えれば、根と地上部のトレードオフを避けながら品質も高められるという仮説を立てていました。
どのように調べたか
実験は植物工場内の水耕栽培で行われました。比較の基準として白色LEDを用い、これに赤色光のみの条件と、赤と青の光子量の比率を5:5、7:3、8:2とした条件を加えた計5条件を設定しました。光の強さと1日12時間の照射時間はすべての条件で同じにそろえ、苗を30日間育てました。
30日目に、草丈や根の長さ、葉・葉柄(いわゆる茎の部分)・根の重さを測りました。あわせて、クロロフィルなどの光合成色素、光エネルギーの利用効率を示すクロロフィル蛍光の指標、抗酸化酵素の働き、糖・タンパク質・ビタミンC(アスコルビン酸)・硝酸の含有量も調べています。なお、著者らは光合成速度そのものは測っていないと明記しており、光合成の効率に関する判断は、蛍光指標や生育量、糖の蓄積から導いたものです。
主な結果:赤8対青2の条件が総合的に最も良好
赤色光だけで育てると、草丈は白色光より22.8%高くなった一方、根の長さは33.4%短くなりました。乾物は葉柄に多く配分されました。論文は、赤色光だけでは地上部が伸びる一方で根の発達が抑えられたと報告しています。
これに対し、赤と青を8:2で組み合わせた条件では、葉、葉柄、根のいずれの生重量も白色光より大きくなりました。乾燥させた後の植物全体の重さ(総乾物重)は68.8%増えています。この条件ではクロロフィルやカロテノイドの量も増えました。光エネルギーを光合成の反応に回せる割合を示す指標は43%、電子伝達の速度を示す指標は34.3%上昇しました。一方で、使い切れない光エネルギーを熱として逃がす度合いは61.0%低下しました。著者らはこれらの結果を、光をより効率よく使えている状態だと解釈しています。
品質面では、8:2の条件で葉の可溶性糖が688.4%、ビタミンCが248%増えました。葉の可溶性タンパク質や抗酸化酵素の一種であるカタラーゼの活性も高まりました。さらに、葉の硝酸含有量は白色光より28.5%低くなりました。一方、7:3の条件では生重量やクロロフィル量が低めで、硝酸含有量は高くなるなど、青色光の割合が多いほど良いという単純な結果にはなっていません。多数の指標をまとめて比較する主成分分析でも、8:2の条件が生育、光化学反応、抗酸化、品質のすべての面で最も効果的だと評価されました。
研究が示すこと
この研究は、同じ強さの光でも赤と青の比率を変えるだけで、紫セロリの形、重さ、成分が大きく変わることを示しました。研究チームは、赤8対青2という比率が、植物工場で紫セロリの収量と品質を両立させるための根拠ある光のレシピになると結論づけています。なお、今回の比較は特定の品種と栽培条件のもとで行われたものであり、アントシアニン量そのものは測定項目に含まれていません。
原著論文の著者・所属:Wei Lu(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Chan Zhang(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Chunlei Zhu(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China; Xinjiang Shengshi Huaqiang Agricultural Technology Co., Ltd., Hotan 848000, China)、Kexin Guo(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Jiuhui Tang(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Yuansheng Bao(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Chi Qin(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Zijing Luo(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Mingman Xu(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Chengyao Jiang(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Mengyao Li(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Yangxia Zheng(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China)、Sen Wang(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China; Institute of Urban Agriculture, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 611000, China)、Naimin Kong(College of Horticulture, Sichuan Agricultural University, Chengdu 611130, China; College of Mechanical and Electrical Engineering, Sichuan Agricultural University, Ya’an 625014, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wei Lu, Chan Zhang, Chunlei Zhu, et al. Optimizing Red–Blue LED Light Recipes for Improved Biomass Production and Nutritional Quality of Purple Celery in Plant Factory Cultivation. Agriculture 2026-08-18. DOI: 10.3390/agriculture16161768. 原著ライセンス:CC BY.