日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

ダイエットや栄養管理の指導現場では、何もしていない状態で体が消費するエネルギー量、いわゆる安静時エネルギー消費量(REE)を知ることが出発点になります。ただしREEを正確に測るには専用の間接熱量計という機器が必要で、誰もが使えるわけではありません。そこで広く使われているのが、身長・体重・年齢・性別などから計算式でREEを推定する方法です。今回、日本主導で行われた研究として、日本の藤田医科大学医学部臨床栄養学講座に所属する研究者らが、こうした予測式が実際の測定値とどの程度一致するのかを調べました。

何を、どうやって調べたのか

対象となったのは日本人の大学職員・学生36名(男性16名、女性20名、平均年齢28.9歳、BMI平均22.1)です。研究チームは携帯型の間接熱量計でこの36名のREEを実測し、その値を、よく使われる4種類の予測式(Harris-Benedict式、DRIs式、Cunningham式、Ganpule式)による推定値と比較しました。比較には、順位の対応関係を見るSpearman相関係数、測定値と推定値の一致度を評価するICC(2,1)という指標、さらに2つの測定方法の差を視覚的に検討するBland-Altman分析という手法が用いられ、系統的な偏り(比例バイアス)が見られた式については、その誤差がどんな要因と関係しているかを多変量線形回帰分析でさらに掘り下げています。

予測式ごとに異なるズレの傾向

相関係数は0.750~0.800、ICCは0.736~0.766で、いずれの式も実測値とは中程度から強い関連を示しました。ただし平均的なズレ(バイアス)の大きさと向きは式によって異なり、Harris-Benedict式は実測値より平均+50.7kcal/日高く見積もる傾向、逆にDRIs式は-73.1kcal/日、Cunningham式は-94.7kcal/日、Ganpule式は-90.6kcal/日と、いずれも実測値より低く見積もる傾向が見られました。また、実測値の±10%以内に収まった人の割合は式によって41.7~55.6%にとどまり、個人レベルで見ると誤差が無視できない大きさになるケースが少なくないことがうかがえます。さらにBland-Altman分析では4種類のうち3つの予測式で比例バイアス、つまり体格などの条件によって誤差の出方が変わる傾向が確認され、多変量解析では女性であるほど実測値を過小評価しやすく、BMIが高いほど過大評価しやすい傾向があることも示されました。

この結果をどう受け止めるか

研究チームは、これらの予測式は集団全体としては実測値とそれなりの相関を示すものの、性別やBMIといった個人の特性によって誤差の方向や大きさが変わりうるため、数値をそのまま鵜呑みにせず解釈には注意が必要だと結論づけています。なお、この研究は対象者数が36名と少なく、一致度の推定精度には限界があること、また今回の対象は比較的若い大学関係者であったため、高齢者や何らかの疾患を持つ人々においても同様の傾向が当てはまるかは今後の検証が必要だと、著者ら自身が限界点として述べています。

まとめ

今回の研究は、日常的に使われているREE予測式が、日本人を対象とした場合に実測値とどの程度ずれるのかを、性別やBMIとの関連も含めて具体的に検討したものです。予測式は手軽に使える一方で、個人の体格や性別によって推定の誤差が変わりうることが示唆されており、あくまで一つの探索的な研究結果として、今後より大規模で多様な集団を対象とした検証が期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Hitomi Matsuura, Kanako Deguchi, Katsumi Iizuka. Bias Characterization of Resting Energy Expenditure Prediction Equations in Japanese Subjects: A Pilot Exploratory Study. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18162743. 原著ライセンス: cc-by.