この研究は、マレーシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Malaysian Journal of Nutrition
ライセンス: 論文に記載なし
パッケージ食品の裏側にある栄養成分表示。塩分(ナトリウム)の量を見て購入を決める人も多いのではないでしょうか。しかし、その表示された数値は本当に正確なのでしょうか。マレーシアでは成人の1日あたりのナトリウム摂取量が平均2892mgと、推奨される2000mg未満を大きく上回っているとされ、2022年にはナトリウム表示が義務化されました。ところが、表示されている数値と実際にラボで測定した数値との間にズレがあることが海外では報告されており、マレーシア国内での実態はよくわかっていませんでした。今回紹介する研究は、この「表示と実測のズレ」と、健康的な食品の目印とされる「ヘルシー・チョイス・ロゴ(HCL)」の基準への適合状況を調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、塩味の効いたナッツ、市販のビスケット、缶詰の魚など加工食品・超加工食品52製品を対象に分析を行いました。このうち8製品には、マレーシア保健当局が定める栄養基準を満たした食品に付与される「ヘルシー・チョイス・ロゴ(HCL)」が表示されていました。ナトリウム含有量は、乾式灰化と硝酸による分解処理を経て、フレーム原子吸光分光法という手法で測定されました。表示の遵守状況は、規制で定められている「表示値の120%未満」という許容基準に基づいて評価されました。
その結果、HCL表示のある8製品のうち、この許容基準を満たしたのはアーモンド(表示94.8mg/実測103.6mg、100gあたり)、レーズンビスケット(表示245.4mg/実測286.8mg)、トマトソース煮のサバ缶(表示337.0mg/実測365.6mg)の3製品(37.5%)にとどまりました。残る62.5%の製品では、実際にラボで測定したナトリウム量が表示値より多いという結果でした。また、食品カテゴリー間でナトリウム含有量に統計的に明確な差は見られませんでした。
ヘルシー・チョイス・ロゴが付いた製品は、全体的に見るとロゴのない製品よりナトリウム含有量が低い傾向にありましたが、甘いクッキーや缶詰魚のカテゴリーでは、その差は統計的に有意なものではなかったとされています。なお、HCLの取得は任意制度であるため、研究チームはロゴを取得していない製品についてもHCLの栄養基準に照らして評価しましたが、すべての基準を満たす製品は一つもなかったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、マレーシア国内で販売されている限られた52製品を対象にした調査であり、すべての加工食品の実態を表すものではありません。また、表示値と実測値のズレが見られた背景には、製造工程での変動や測定方法の違いなど複数の要因が考えられますが、要旨の中ではその原因までは詳しく分析されていません。あくまで一つの研究であり、これをもって業界全体の傾向が確定したわけではない点に留意する必要があります。
研究チームは、こうした表示と実測のズレを踏まえ、ナトリウム表示に関するより厳格な規制執行と、定期的なラボでの検証の必要性を指摘しています。
まとめ
この研究では、マレーシアで販売されている加工食品・超加工食品を対象に、ナトリウムの表示値と実測値を比較したところ、規制上の許容基準を満たした製品はヘルシー・チョイス・ロゴ表示品のうち一部にとどまり、ロゴ非取得製品はいずれも同ロゴの栄養基準を満たしていなかったことが示されました。食品の栄養表示を見る際には、こうした表示と実態の間にズレが生じうることも一つの視点として知っておくとよいかもしれません。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):マレーシアにおける加工食品・超加工食品のナトリウム表示遵守状況とヘルシー・チョイス・ロゴ栄養基準適合性の評価(マレーシア栄養学ジャーナル・2026年08月)
著者:Qiao Yi Ng(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, Selangor, Malaysia)、Azrina Azlan(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, Selangor, Malaysia, Laboratory of Halal Science Research, Halal Products Research Institute, Putra Infoport, Universiti Putra Malaysia, Serdang 43400, Malaysia)、Lu Ying Khoo(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, Selangor, Malaysia)