ルテインやゼアキサンチンといったカロテノイドは、緑黄色野菜などに多く含まれる色素成分の一種です。これらは子どもの網膜の発達に重要とされており、胎児は臍帯(へその緒)を通じて、乳児は母乳を通じてこれらの成分を受け取ると考えられています。つまり、母親の栄養状態が子どもの網膜発達に影響する可能性があるというわけです。しかし、日本人の母親を対象にカロテノイドの状態を調べた研究はこれまで限られていました。そこで今回紹介する研究では、日本人妊婦を対象にカロテノイドのレベルを調べ、子どもの網膜発達研究を進めるための第一歩として位置づけています。

どのように調べたのか

この研究では、妊婦284名と産後の女性40名を対象に、「Veggie Meter(ベジーメーター)」という機器を使って皮膚のカロテノイドレベル(SC値)を横断的に測定しました。これは指などの皮膚に光を当ててカロテノイドの蓄積量を推定する方法です。さらに、8名の女性については、妊娠初期・中期・後期から産後1ヶ月まで、同じ人を追跡する形(縦断的)でも測定が行われました。あわせて、普段の食事や生活習慣についてのアンケート調査も実施されています。

研究でわかったこと

324名全体の皮膚カロテノイド値(VMスコア)の中央値は322でした。妊娠週数とVMスコアの間には関連が見られなかった一方、産後の日数が経つほどVMスコアは低くなる傾向が示されました(統計的な関連の強さを示す指標でρ=−0.339、p=0.032)。単胎妊娠と多胎妊娠の間、また通常の妊娠と何らかの合併症がある妊娠の間では、VMスコアに差は見られませんでした。

より詳しい統計解析(多変量解析)では、年齢が高いこと、野菜ジュースやトマトジュースを飲む頻度が高いこと、野菜を好むこと、そして1日あたりの野菜摂取量が多いことが、いずれもVMスコアの高さと関連していました。一方で、BMI(体格指数)が高いことはVMスコアの低さと関連していました。

また、単純な比較(単変量解析)では産後のVMスコアは妊娠中よりも有意に低い結果でしたが、他の要因を考慮した詳しい解析(多変量解析)では、出産という要因の影響はぎりぎり有意水準に届かない程度(p=0.0598)にとどまりました。同じ人を継続して調べた8名のデータでも、時間の経過とともにVMスコアが下がっていく傾向は見られたものの、統計的に意味のある変化とまでは言えませんでした。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究の著者らは、日本人の妊婦・産後女性における皮膚カロテノイドレベルを調べた結果として、「授乳期間中に母体のカロテノイドレベルが低下する可能性がある」という懸念を挙げています。ただし、著者ら自身も、この点をはっきりさせるにはさらなる研究が必要だとしています。今回の研究は予備的な位置づけのものであり、対象人数も限られていることから、この結果だけで確定的な結論が出たわけではない点には注意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、日本人の妊婦・産後女性を対象に皮膚カロテノイドレベルを測定し、年齢や野菜摂取の習慣、BMIなどとの関連、そして産後にカロテノイドレベルが低下する可能性が示唆されました。子どもの網膜発達と母親の栄養状態との関係を考えるうえでの基礎的な知見として位置づけられていますが、著者らも述べているとおり、今後さらなる研究による検証が必要とされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:日本人妊婦・産後女性における皮膚カロテノイドレベル:予備的研究(インターナショナル・ジャーナル・フォー・ビタミン・アンド・ニュートリション・リサーチ・2026年05月)