著者の所属・活動拠点の国は、インドネシア、ナイジェリアです。

掲載誌:Veterinary World

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、野生動物が薬剤耐性菌を取り込み、保有し、運ぶ過程に、生息環境や行動、移動がどのように関わるかを文献から整理しました。薬剤耐性とは、本来なら効くはずの抗菌薬があっても、細菌などが生き残ったり増殖したりできる性質です。特に、野生動物に関わる耐性菌が、人や家畜へ伝わる可能性を検討しました。

野生で暮らす動物の多くは、抗菌薬による治療を直接受ける機会が限られます。それでも耐性菌が見つかることから、著者らは、環境汚染や動物同士の接触を含め、人や家畜だけを調べていては捉えにくい耐性菌の分布に着目しました。

何を、どのように調べたか

この研究は、既存の知見を文章で整理・解釈するナラティブレビューです。研究チームはPubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarで文献を検索しました。当初の検索対象は2007~2025年の出版物で、最終検索は2025年11月に実施し、原稿の改訂時に2026年の関連文献や政策動向も追加しました。

対象は陸上、淡水、海洋の野生動物に関する研究で、耐性菌や耐性遺伝子の検出、生息地の汚染、採食行動、捕食する・される関係、動物の移動、人や家畜との接点を扱いました。新たな動物調査ではなく、異なる研究を横断して、耐性菌の保有と伝播の証拠を整理することを目指したものです。

主な報告結果

著者らは、さまざまな野生動物で耐性菌が確認されていると報告しています。例として、渡り鳥では一部の抗菌薬を分解する酵素を作る大腸菌、野生哺乳類ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、人との接触が多い地域の霊長類ではフルオロキノロン系抗菌薬に耐性を持つ細菌が挙げられました。

レビューでは、野生動物が耐性菌にさらされる主な経路として、汚染された水・土壌・食物、食べる・食べられる関係、人や家畜との接触が整理されました。農地からの流出水や排水も接点となり、水生・海洋動物も排水や医薬品残留物などにさらされます。都市化や農地拡大、生息地の分断、動物の採食行動は、こうした接触機会に影響するとしています。

著者らは、近距離の移動や長距離の渡りが、耐性菌や耐性遺伝子を生態系の間で運ぶ可能性を指摘しました。また、微生物同士で遺伝子が受け渡される仕組みも、耐性遺伝子の維持や拡散に関わると整理しています。ただし、野生動物から耐性菌が見つかったことだけでは、それがどこから来たのか、長く定着しているのか、人へ伝わったのかまでは示せないと強調しています。

この報告が示すこと

このレビューは、野生動物を単に人への感染源とみなすのではなく、人・家畜・環境のつながりの中で薬剤耐性を捉える必要性を示しています。著者らは、これらの健康を一体として考える「ワンヘルス」の視点から、野生動物の生態を耐性菌の監視や解釈に組み込むことが重要だと結論づけています。

一方、既存研究は動物種、地域、採取方法、菌の検出方法にばらつきがあり、直接比較しにくいという限界があります。一時点や限られた地域の調査も多く、このレビューは耐性菌の保有率を統合した数値や、人へ伝わる危険の大きさを算出していません。野生動物の関与を理解するには、菌を保有しているという観察と、実際に感染を伝えたという証拠を区別することが重要です。

原著論文の著者・所属:Mustofa Helmi Effendi(Universitas Airlangga)、Aswin Rafif Khairullah(National Research and Innovation Agency)、Hani Plumeriastuti(Universitas Airlangga)、Bima Putra Pratama(National Research and Innovation Agency)、Dian Ayu Permatasari(Universitas Airlangga)、Indira Putri Negari(National Research and Innovation Agency)、Budiastuti Budiastuti(Universitas Muhammadiyah Surabaya)、Anissa Nofita Sari(National Research and Innovation Agency)、Wasito Wasito(National Research and Innovation Agency)、Nnabuife Bernard Agumah(Ebonyi State University)、Riza Zainuddin Ahmad(National Research and Innovation Agency)、Ikechukwu Benjamin Moses(Ebonyi State University)、Wiwiek Tyasningsih(Universitas Airlangga)、Dea Anita Ariani Kurniasih(National Research and Innovation Agency)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mustofa Helmi Effendi, Aswin Rafif Khairullah, Hani Plumeriastuti, et al. Wildlife as reservoirs and vectors of antimicrobial resistance: Ecological drivers, movement dynamics, and One Health implications for spillover to humans. Veterinary World(出版社:Veterinary World) 2026-11-04. DOI: 10.14202/vetworld.2026.4981-5010. 原著ライセンス:CC BY.