著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Frontiers in Environmental Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、インドで残留性有機汚染物質(POPs)がどこから発生し、環境や食品、人の体内にどのように分布しているかを、既存の研究から整理しました。POPsは環境中で分解されにくく、遠くまで運ばれ、食物連鎖を通じて生物に蓄積する性質を持つ化学物質です。

著者らは、過去に使われた農薬だけでなく、工業用途の物質や燃焼などで意図せず生じる物質も対象に、健康リスクの評価や測定方法、汚染への対処に関する知見をまとめることを目指しました。

何を、どのように調べたか

この研究は、新たに試料を採取する実験ではなく、文献を一定の手順で集めて整理する系統的レビューです。研究チームはGoogle Scholar、PubMed、ScienceDirectなどで、土壌、大気、水、堆積物、野菜や肉などの食品、血液や母乳を表す語と、個々の汚染物質の名称を組み合わせて検索しました。

文献選定の報告指針であるPRISMAに沿って約450件の検索結果を調べ、200件を超える論文を選んで検討しました。英語で書かれ、インド亜大陸の環境中のPOPs濃度を扱う報告や、食品に関する近年の論文などを対象とし、政策文書や国際機関の報告も参照しました。

主な対象は、DDTやHCHなどの有機塩素系農薬、工業用途に使われてきたPCBやPFAS、非意図的に発生するダイオキシン類などです。それぞれの発生源、環境や食品・体液中の濃度、健康リスクの評価、分析方法を整理しました。

主な報告結果

著者らは、農薬由来の汚染には、過去の農業利用による残留と、現在の感染症媒介生物の防除に伴う使用の両方が関わると報告しました。一方、PCBやダイオキシン類などの発生源として、不適切な電子廃棄物のリサイクルや都市ごみの燃焼、工業活動を挙げています。

汚染物質は大気、水、土壌、堆積物に広く分布し、その移動には地域の気温や降水が関係していました。論文は、南インドの高温環境では物質が土壌などから大気へ移りやすく、北インドでは冬の気温低下に伴って分解生成物などが土壌へ沈着する傾向を説明しています。また、従来型のPOPsについては、土壌中の濃度が時間とともに低下する傾向を報告しました。

食品や人の血液・母乳からの検出も整理されました。著者らは、体液中の濃度の増加を報告した研究や、摂取量・健康リスクの評価結果を踏まえ、汚染された食品や飲料水を通じた継続的な曝露を懸念事項に挙げています。

この報告が示すこと

このレビューが示すのは、インドのPOPs汚染を、過去の農薬使用の名残だけでは捉えられないということです。著者らは、現在も続く発生源と、地域ごとに異なる物質の移動を踏まえた監視が必要だと結論づけています。

一方、著者らは、PFASなどの新たな対象物質について、土壌や大気などの情報が不足していると指摘しました。地域別の調査結果を集約するデータベースと、人の体内への蓄積を追う全国的な監視体制を整えることが、汚染状況と曝露の把握に重要だとしています。

原著論文の著者・所属:Asik Dutta(Division of Soil Science and Agricultural Chemistry, ICAR-Indian Agricultural Research Institute)、Sarvendra Kumar(Division of Soil Science and Agricultural Chemistry, ICAR-Indian Agricultural Research Institute)、Irshana Shajahan(Department of Chemical Engineering, SRM Institute of Science and Technology)、Paromita Chakraborty(Environmental Science and Technology Laboratory, Centre for Research in Environment, Sustainability Advocacy and Climate Change (REACH), Directorate of Research, SRM Institute of Science and Technology)、T. J. Purakayastha(Division of Soil Science and Agricultural Chemistry, ICAR-Indian Agricultural Research Institute)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Asik Dutta, Sarvendra Kumar, Irshana Shajahan, et al. A comprehensive review of the sources, distribution, ecological impacts, and remediation of persistent organic pollutants in India. Frontiers in Environmental Science(出版社:Frontiers Media) 2026-09-17. DOI: 10.3389/fenvs.2026.1882149. 原著ライセンス:CC BY.