この研究は、カナダの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

クランベリージュースは、アントシアニンやプロアントシアニジン(縮合型のポリフェノール)といった生理活性成分を多く含む飲料です。これまで広く使われてきた加熱殺菌は微生物を減らすうえでは有効な一方、熱に弱いポリフェノールを壊してしまう可能性があると著者らは述べています。そこで加熱以外の方法が検討されており、その一つが高出力の超音波処理です。液体に強い超音波を当てると微小な泡が生まれて激しくつぶれる「キャビテーション」という現象が起こり、その衝撃が細胞の構造を壊して成分を溶け出させたり、微生物の細胞を破壊したりします。

著者らは、これまでの研究の多くが「総ポリフェノール量」のような合計値しか報告しておらず、どの成分が新たに溶け出し、どの成分が分解したのかを区別できていない点を課題として挙げています。特にクランベリーの特徴とされるプロアントシアニジンには、結合の仕方が異なるA型とB型があります。この二つを区別したうえで、処理時間を変えたときに何が起きるのかは明らかになっていませんでした。本研究はその空白を埋めることを目的としています。

調べた方法

研究チームは、冷凍クランベリーから搾って濾過したジュースを1つのまとまった原料として用意し、同じ原料から取り分けた試料に超音波処理を行いました。使用したのは20 kHzのプローブ型超音波処理装置で、振幅60%、5秒照射・5秒休止を繰り返す条件です。処理時間は1分、3分、5分、7分の4通りで、無処理のジュースを対照としています。処理中は容器を砕氷の上に置いて温度を抑え、処理後の温度は25 ℃を超えませんでした。ただし著者らは、処理中の温度を連続記録してはいないため、泡がつぶれる局所での一時的な加熱までは否定できないと明記しています。

測定項目は幅広く設定されました。糖度(可溶性固形分)、pH、色といった基本的な性質に加え、総ポリフェノール量、総フラボノイド量、総アントシアニン量、抗酸化能を示す二つの指標(DPPHとFRAP)、アスコルビン酸(ビタミンC)、総カロテノイド、そしてミネラル量を調べています。さらに、質量分析を用いてA型のプロシアニジンA1とB型のプロシアニジンB2をそれぞれ個別に定量しました。微生物については、大腸菌K12株を意図的に加えたジュースを処理し、生き残った菌数を数えています。各条件は独立に3回繰り返し、統計解析を行いました。

報告された主な結果

まず、糖度とpHは処理時間によって統計的に意味のある違いを示しませんでした。色については測定上の差は出たものの、色差の値はいずれも人の目で判別しにくい範囲にとどまったと報告されています。

成分については、処理時間によって方向の異なる変化が見られました。3分から5分の中程度の処理では、無処理と比べて総フラボノイド量が42.3%、総ポリフェノール量が33.9%増加しました。著者らはこれを、キャビテーションが細胞の構造を壊し、それまで組織に結びついていた成分が溶け出したためと説明しています。総カロテノイドは処理時間とともに増え続け、7分では116.9%の増加となりました。一方で、総アントシアニン量とDPPH・FRAPの両方の抗酸化指標は低下しました。著者らは、超音波で新たに溶け出したポリフェノールは、入れ替わりに失われたアントシアニンや重合体の成分に比べ、単位量あたりのラジカル消去能が低いためと解釈しています。

個別に測定した二つのプロシアニジンでは、対照的な結果が得られました。A型のプロシアニジンA1は5分までのどの処理時間でも対照との差が3.4%以内に収まり、3分と5分では1.1%以内という安定ぶりでした。これに対しB型のプロシアニジンB2は処理時間とともに減り続け、7分では対照より20.2%低い値になりました。著者らは、この違いをA型が持つ追加のC-O-C結合という構造上の特徴によるものと説明しています。

微生物については、加えた大腸菌K12の生菌数が3分の処理で2.00 log CFU/mL(99%)減少しました。ただし、5分や7分へ延長しても、それ以上の測定可能な減少は得られませんでした。

この研究が示すこと

これらの結果から研究チームは、3分の処理が最適だと結論づけています。この時間で、観察された最大の殺菌効果が得られ、同時にポリフェノールとフラボノイドの溶出が最も大きく、しかもプロシアニジンA1にはまだ測定できる損失が生じていないためです。

この研究の意義は、合計値だけを見ていては分からなかった「何が増え、何が減っているか」を、構造の違うプロシアニジンごとに切り分けて示した点にあります。超音波処理は抽出と分解という逆向きの作用を同時に引き起こし、その釣り合いが処理時間によって動きます。著者らは、超音波処理を加熱殺菌の単独の代替とみなすのではなく、複数の処理を組み合わせる工程の一部として位置づけるのが妥当だと述べています。

著者:Mabel Kyei Kwofie(Bioresource Engineering Department, McGill University, 21111 Lakeshore, Sainte-Anne-de-Bellevue, QC H9X 3V9, Canada. Electronic address: [email protected])、Valerie Orsat(Bioresource Engineering Department, McGill University, 21111 Lakeshore, Sainte-Anne-de-Bellevue, QC H9X 3V9, Canada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mabel Kyei Kwofie, Valerie Orsat. Effect of high-power probe ultrasonication (20 kHz) treatment duration on the physicochemical, bioactive, mineral and microbiological quality of cranberry (Vaccinium macrocarpon) juice. Ultrasonics Sonochemistry 2026-09-10. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.108048. 原著ライセンス:CC BY.