この研究は、イタリア、ドイツの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Structure
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
液体の油を支える構造を調べる
研究チームは、米ぬかワックスの成分と製造条件が、ひまわり油をゲル状にしたときの安定性にどう影響するかを調べました。対象は「オレオゲル」と呼ばれる材料です。液体の油の中でワックスなどが立体的な網目をつくり、油を保持します。食品に使われる固形脂肪の代替候補として研究されていますが、その働きは網目のつながり方に左右されます。
著者らは、研究室で抽出・精製した米ぬかワックスと、市販の2種類を比較しました。成分を分析するとともに、ひまわり油に混ぜて加熱し、冷却中にかき混ぜる場合と、かき混ぜずに静置する場合を調べました。できたゲルについて、顕微鏡で結晶の構造を観察し、保存中に油が分離するかも確認しました。
静かに冷やすとつながり、かき混ぜると分離した
研究室で精製したワックスでは、冷却中にかくはんしない条件で、重量の1%を加えると、容器を逆さにしたり揺すったりしても形を保つゲルが得られました。これは、今回試した濃度の中で、安定したゲルをつくる最小の濃度でした。顕微鏡観察でも、0.5%の場合との構造の違いが確認され、静置して冷却したゲルには、作製から1週間後にも目に見える油の分離がありませんでした。
一方、冷却中もかくはんを続けると、連続した網目の形成が妨げられました。結晶は互いにつながった一体の構造ではなく、小さな塊に分かれ、作製後数日のうちに油の分離が見られました。著者らは、この不安定化を、結晶が成長してつながる間も機械的な力を加え続けたことと結び付けています。
組成と作り方を合わせて考える
成分分析では、3種類のワックスはいずれも、長い鎖状の脂肪酸とアルコールが結合した「ワックスエステル」を主成分としていました。ただし、研究室で精製したものは、市販品より長い分子が多く、分子の長さの分布も狭いという違いがありました。市販品には、主成分以外の微量成分がより多いことも示唆されました。著者らは、精製したワックスの組成が、結晶同士の強い結び付きと連続した構造の形成を促すと報告しています。
ただし、かくはんする条件では、市販品に含まれる微量成分が、結晶の凝集を部分的に和らげた可能性も報告されました。この研究が伝えるのは、組成が均一なワックスを選ぶだけで、どの製造条件でも安定したゲルになるわけではないということです。油を保持する構造をつくるには、ワックスの組成と、冷却中に加える力の両方が重要になります。
著者:Danilo Candela(Department of Applied Science and Technology (DISAT), Politecnico di Torino, Torino Italy)、Henriette Brykczynski(Department of Food Process Engineering, Technische Universität Berlin, Berlin Germany)、Cecilia Fiore(Department of Applied Science and Technology (DISAT), Politecnico di Torino, Torino Italy)、Eckhard Flöter(Department of Food Process Engineering, Technische Universität Berlin, Berlin Germany)、Elena Simone(Department of Applied Science and Technology (DISAT), Politecnico di Torino, Torino Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Danilo Candela, Henriette Brykczynski, Cecilia Fiore, et al. Impact of rice bran wax composition and oleogelation conditions on the structural stability of sunflower oil-based oleogels. Food Structure 2026-09-30. DOI: 10.1016/j.foostr.2026.100568. 原著ライセンス:CC BY.