著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。
掲載誌:ACS Food Science & Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
天然のワックス(ろう)は、食品や医薬品、化粧品に機能性の原料として使われています。しかし著者らによると、その結晶構造については、これまで踏み込んだ調査がほとんど行われてきませんでした。
そこで研究チームは、食品用ワックス6種類を取り上げ、結晶構造に注目して性質を比べました。対象は、ヒマワリワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、米ぬかワックス、黄色のミツロウ、白色のミツロウです。それぞれ2つの供給元から入手した試料を調べています。
何をどう調べたか
研究チームは、走査型電子顕微鏡でワックスの粒子の形や大きさを観察しました。あわせてX線回折という方法で、結晶の内部で分子がどのように規則正しく並んでいるかを調べています。X線回折は、物質に当てたX線の散らばり方から、原子や分子の並びの周期を読み取る手法です。さらに、ワックスが溶ける温度と、冷えて固まる(結晶化する)温度も比較しました。
主な結果
論文の報告では、同じ種類のワックスであれば、供給元による違いは色を除いて小さいものでした。
顕微鏡観察では、すべての試料が薄い板のような形の粒子をもっていました。粒子が最も小さかったのは、ヒマワリワックスと米ぬかワックスです。
X線回折では、ワックスの種類によって分子の層の重なり方に違いが見られました。ヒマワリワックスと米ぬかワックスは、分子が層状に積み重なった構造の規則性が高い一方、ほかのワックスでは層の並びの規則性が低めでした。
X線回折からは、細長い分子の鎖どうしがどのように詰まっているかを示す、短い周期の情報も得られています。ワックスの分子の鎖は同じ向きにそろって並びますが、鎖はジグザグ形をしており、隣り合う鎖でそのジグザグの面の向きがどうなっているかによって詰まり方の型が分かれます。抄録によると、すべてのワックスに共通して、このジグザグの面の向きが隣どうしで直交する型(直交型の直方晶副格子)と整合する特徴が見られました。一方、ミツロウでは、ジグザグの面の向きがそろった型(平行型の直方晶副格子)が示されました。
研究チームは、微小な結晶(結晶子)の形が方向によってどれだけ偏っているか、すなわち異方性も数値で比べています。その度合いは、黄色のミツロウ、白色のミツロウ、米ぬかワックス、カルナウバワックス、ヒマワリワックス、キャンデリラワックスの順に小さくなりました。溶ける温度と固まる温度も、ワックスの種類によって異なっていました。
研究が示すこと
これらの結果をもとに、著者らは天然ワックスの構造を階層として整理した模式図を提案し、今後の利用や研究の手がかりにしたいとしています。一見よく似たワックスでも、種類によって粒子の大きさや分子の並び方の規則性、鎖の詰まり方が異なることを、比較を通じて示した研究です。
原著論文の著者・所属:Sebastian Mannweiler(University of Hohenheim , , Garbenstraße 25 , ,)、Pia Schweizer(University of Hohenheim , , Garbenstraße 25 , ,)、Hanna Salminen(University of Hohenheim , , Garbenstraße 25 , ,)、Jochen Weiss(University of Hohenheim , , Garbenstraße 25 , ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sebastian Mannweiler, Pia Schweizer, Hanna Salminen, et al. Crystallographic Characterization of Six Food Waxes. ACS Food Science & Technology 2026-08-06. DOI: 10.1021/acsfoodscitech.6c00258. 原著ライセンス:CC BY.