この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Pharmacology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

食物繊維の摂取不足は、便秘と密接に関わることが知られています。便秘に対しては下剤がよく使われますが、長期使用や不適切な使用は下痢や電解質バランスの乱れといった副作用を招くことがあるとされています。今回、中国の清華大学、中国薬科大学、南京中医薬大学附属病院、河北御芝林医薬有限公司の研究者らのグループが、市販の健康食品『甜甜カプセル(Tiantian Capsule、TTC)』について、低食物繊維食によって誘発された便秘ラットへの効果と、その背景にあるしくみを調べた研究が、学術誌『フロンティアーズ・イン・ファーマコロジー』に2026年08月に掲載予定です。

甜甜カプセルは、アロエ(Aloe vera、蘆薈)の葉汁乾燥物、カボチャの一種(Cucurbita moschata、南瓜)の果肉乾燥物、茯苓(Wolfiporia cocos、別名Poria cocos)の菌核乾燥物、白キクラゲ(Tremella fuciformis、銀耳)の子実体乾燥物、およびトウモロコシの芯由来のキシロオリゴ糖という5つの原材料から作られており、配合比率はそれぞれ25%、25%、12.5%、12.5%、25%とされています。これまでの研究で、甜甜カプセルはロペラミド誘発性の便秘を緩和することが報告されていましたが、食物繊維不足による便秘への効果や仕組みはよくわかっていませんでした。

研究でわかったこと

研究チームは、6〜8週齢・体重180〜220gの雄性Sprague-Dawleyラット32匹を、通常食を与える対照群、低食物繊維食のみを与えるモデル群、低食物繊維食に加えて甜甜カプセル(36 mg/kg/日)を投与する群、同じく低食物繊維食に加えて陽性対照薬であるヘンプシード軟カプセル(HSSC、126 mg/kg/日)を投与する群の4群(各群8匹)に分け、5〜6週間にわたり飼育・投与する実験を行いました。なお、体表面積換算では、甜甜カプセルの投与量は体重60kgの成人に換算しておよそ1日0.35g、HSSCはおよそ1日1.22gに相当するとされ、これは経口摂取可能な範囲であり製品情報に記載された推奨摂取量と同程度と説明されていますが、著者らは薬物動態的な裏付けを行っていないため、あくまで目安として捉えるべきだと述べています。

低食物繊維食を与えたラットは、対照群に比べて便の重さや便の個数が明らかに減少し、便秘のような状態になることが確認されました。1週間の投与後、甜甜カプセル投与群では便の水分量、便の重さ、便の個数がいずれもモデル群より有意に増加し、その効果の方向性はHSSC群と同程度だったとされています。また、大腸や小腸の組織を顕微鏡で観察したところ、モデル群では粘液を分泌する杯細胞の減少や粘膜の変化がみられましたが、甜甜カプセルおよびHSSCの投与により杯細胞の増加や粘膜構造の改善が認められました。

さらに研究チームは、大腸組織の遺伝子発現を網羅的に調べるトランスクリプトーム解析を行いました。その結果、甜甜カプセルの投与に伴い、セロトニン(5-HT)に関わる神経系のシグナル伝達経路(セロトニン作動性シナプス)や、腸管免疫に関わる経路(腸管免疫ネットワークにおけるIgA産生)に変化がみられることが示唆されました。具体的には、セロトニンなどモノアミンの分解に関わるMaob遺伝子の発現が投与後に低下しており、これがセロトニンの分解を抑えることで血中のセロトニン濃度の維持につながった可能性があるとされています。また、平滑筋の収縮に関与するとされるHtr2aやHtr2b、Cacna1dといった遺伝子の発現変化もみられました。免疫関連では、Cd40、Cd40lg、Icos、Ccr9、Cxcr4といった遺伝子の発現上昇が確認され、これらはIgA分泌に関わるB細胞の働きに関連する可能性があると考察されています。

これらの遺伝子発現の変化と対応するように、X線を使った消化管通過機能の評価では、モデル群で消化管の通過時間の遅延がみられましたが、甜甜カプセルおよびHSSCの投与によって通過スコアが改善しました。血液検査(ELISA法)では、モデル群でセロトニン(5-HT)、モチリン(MTL)、ガストリン(GAS)、サブスタンスP(SP)といった消化管の運動を促す物質が減少し、逆に血管作動性腸ペプチド(VIP)、エンドセリン-1(ET-1)、ソマトスタチン(SS)といった運動を抑制する方向に働くとされる物質が増加していましたが、甜甜カプセルの投与によりこれらの変化が改善方向に戻ったとされています。

便中の細菌叢(腸内フローラ)を調べる16S rRNA解析では、低食物繊維食によって細菌の多様性が低下し、門レベルではFirmicutes(フィルミクテス門)の増加とBacteroidetes(バクテロイデス門)の減少がみられましたが、甜甜カプセルの投与によりこれらの変化が部分的に回復し、多様性指標(Shannon指数、Simpson指数)も改善しました。属レベルでは、モデル群で増えていたAllobaculumなどが甜甜カプセル投与後に減少し、逆にモデル群で減っていたBacteroidesやPhascolarctobacteriumなどが増加したことが報告されています。相関解析では、例えばAllobaculumは便の重さや個数、血中セロトニン濃度と負の相関を示し、Phascolarctobacteriumはこれらと正の相関を示したとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究はラットを用いた動物実験であり、著者らも今回用いた低食物繊維食モデルは比較的軽度の機能性便秘を再現するものであり、重度の組織学的な異常が必ずしも生じるわけではないと述べています。そのため、モデルの妥当性は主に便の指標と消化管通過時間に基づいて判断し、組織染色は補助的な証拠として位置づけたとしています。また、著者らは今回みられた遺伝子発現・ホルモン・腸内細菌叢の変化が互いにどのように因果的につながっているかを直接証明したわけではなく、あくまで甜甜カプセルが複数の経路に協調的に作用しうるという仮説を支持する実験的証拠であると位置づけています。甜甜カプセルの投与量をヒトに換算した数値についても、薬物動態的な裏付けを伴わない目安であることが明記されています。今回の結果はあくまで動物実験によるものであり、ヒトでの効果を保証するものではない点に留意が必要です。

まとめ

この研究では、アロエやカボチャ、茯苓、白キクラゲ、キシロオリゴ糖を配合した市販の健康食品『甜甜カプセル』が、低食物繊維食で誘発した便秘モデルラットにおいて、排便機能や腸の組織変化を改善したことが報告されました。あわせて、セロトニン関連の消化管運動調節や腸内細菌叢の組成変化が伴っていたことが示唆されています。著者らは、この結果は今後さらなる仕組みの検証や開発が必要な段階のものだとしています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):甜甜カプセルは5-HT関連の消化管運動改善と腸内細菌叢の再構築を伴い、低食物繊維食誘発性便秘を緩和する(フロンティアーズ・イン・ファーマコロジー・2026年08月)

著者:Tingyu Zhang(Bioinformatics Division, Department of Automation, Tsinghua University, Beijing, China)、Jing Sun(Department of TCMs Pharmaceuticals, School of Traditional Chinese Pharmacy, China Pharmaceutical University, Nanjing, Jiangsu, China)、Jing Sun(Affiliated Hospital of Integrated Traditional Chinese and Western Medicine, Nanjing University of Chinese Medicine, Nanjing, Jiangsu, China)、Tiantian Wang(Hebei Technology Innovation Center of Precise Nutrition and Health, Hebei Yuzhilin Pharmaceutical Co., Ltd., Shijiazhuang, Hebei, China)、Jian Zhang(Affiliated Hospital of Integrated Traditional Chinese and Western Medicine, Nanjing University of Chinese Medicine, Nanjing, Jiangsu, China)、Qingyuan Liu(Bioinformatics Division, Department of Automation, Tsinghua University, Beijing, China)、Chayanis Sutcharitchan(Bioinformatics Division, Department of Automation, Tsinghua University, Beijing, China)、Lili Li(Hebei Technology Innovation Center of Precise Nutrition and Health, Hebei Yuzhilin Pharmaceutical Co., Ltd., Shijiazhuang, Hebei, China)、Boyang Wang(Bioinformatics Division, Department of Automation, Tsinghua University, Beijing, China)、Yinqing Li(Hebei Technology Innovation Center of Precise Nutrition and Health, Hebei Yuzhilin Pharmaceutical Co., Ltd., Shijiazhuang, Hebei, China)、Zhiqi Yin(Department of TCMs Pharmaceuticals, School of Traditional Chinese Pharmacy, China Pharmaceutical University, Nanjing, Jiangsu, China)