著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品に使われる粉の性質を変える方法として、熱を加えない「非加熱」の加工技術が注目されています。その一つが大気圧低温プラズマ(ACP)処理です。プラズマとは、気体に高い電圧をかけるなどして、電気を帯びた粒子や反応しやすい成分が生じた状態を指します。「低温」とは、高温にせずにこの状態をつくり出すという意味です。

研究チームは、この大気圧低温プラズマを、主要な穀物粉である小麦粉・米粉・コーンフラワー(トウモロコシ粉)の3種類に当てました。粉の物理的・化学的な性質と、食品の材料としての働き(機能特性)がどう変わるかを詳しく調べることが目的です。

調べた内容

抄録によると、処理には電極付近で起こる放電の一種であるコロナ放電を用い、28キロボルトの電圧で10分間処理しました。処理後の粉について、pHと水分量、水や油を吸収する能力、ゲルの強さを調べています。

さらに、ゲルがどれだけ固体に近く弾力をもつかを、変形や流れやすさを測るレオロジー(流動特性)解析で評価しました。粉に含まれるでんぷんの結晶構造はX線回折で、加熱したときの変化は示差走査熱量測定(DSC)で調べています。

主な結果

著者らの報告では、プラズマ処理によって粉の基本的な性質が大きく変わりました。3種類の粉のいずれでも、pHと水分量が一貫して低下しました。

水との関わり方も変化しました。水を吸収する能力が目立って高まり、ゲルの強さも大きく向上しました。この効果は特に米粉で顕著で、米粉は最も弾力に富む丈夫なゲルの網目構造をつくったと報告されています。一方、油を吸収する能力はかなり低下しました。

レオロジー解析では、形を保とうとする弾性の指標(G')が流れやすさの指標(G'')を上回りました。これにより、できたゲルが液体よりも固体に近い、弾力のある性質をもつことが確かめられました。

X線回折では、穀物のでんぷんに典型的な「A型」と呼ばれる結晶構造が処理後も保たれていました。ただし熱的な性質には変化が見られたことから、研究チームは、プラズマによってでんぷんの分子の中で微細な構造の組み替えが起きたと考えています。

研究が示すこと

この研究は、熱を使わないプラズマ処理によって、身近な穀物粉の吸水性やゲルをつくる力を変えられることを、3種類の粉で比較して示しました。著者らは、大気圧低温プラズマを、環境に配慮した物理的な改質手段として有効なものと位置づけています。そのうえで、水を保持する力やゲル形成が求められる用途、たとえば特殊な食品のコーティングや、形や食感をつくり込んだヴィーガン食品への利用に向くとしています。

原著論文の著者・所属:Leila Ehsani(Food Science and Technology Department, Agriculture Faculty, Urmia University, Urmia, West Azerbaijan, Iran)、Forogh Mohtarami(Food Science and Technology Department, Agriculture Faculty, Urmia University, Urmia, West Azerbaijan, Iran)、Arash Ghaitaranpour(Food Science and Technology Department, Agriculture Faculty, Urmia University, Urmia, West Azerbaijan, Iran)、Mohsen Esmaiili(Food Science and Technology Department, Agriculture Faculty, Urmia University, Urmia, West Azerbaijan, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Leila Ehsani, Forogh Mohtarami, Arash Ghaitaranpour, et al. Strategic modification of wheat, rice, and corn flours using atmospheric cold plasma: a focus on hydration and gelation functionality. Applied Food Research 2026-09-14. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102607. 原著ライセンス:CC BY.