大学進学は、実家を離れて自炊を始めたり、生活費のやりくりに追われたりと、食生活が大きく変わりやすい時期です。こうした生活の変化は、必要な食料を十分かつ安定的に入手できない状態を指す「食料不安」のリスクを高める可能性があるとされています。今回紹介する研究は、フランスのグルノーブル大学(UGA)の学生を対象に、国の栄養指針にどれだけ沿った食生活を送っているかを点数化し、それが食料不安の有無とどう関連するかを調べたものです。

この研究の中心にあるのは、フランス国家栄養健康プログラム(Programme National Nutrition et Santé、通称PNNS)が示す食事の推奨事項です。研究チームは、学生257人を対象にオンライン調査を実施して食事内容を尋ね、その回答をもとに12項目の基準からなる独自の「PNNSスコア」を新たに作成しました。これは、果物や野菜、全粒穀物、肉・鶏肉・卵といった食品群ごとに、推奨量にどれだけ沿っているかを点数化する試みです。あわせて、同じ学生集団を対象に別途すでに公表されていた調査結果を用いて、各学生の食料不安の状況も突き合わせました。

研究でわかったこと

まず全体として、学生集団のPNNSスコアの平均は、満点を100%とした場合の62%にとどまりました。国の推奨する食生活に、必ずしも十分に沿えていない学生が多いことがうかがえる結果です。

食料不安の状態にあった学生は全体の9%と、割合自体は比較的少数でした。しかし、その学生たちの食事内容を詳しく見ると、いくつかの特徴的な違いが浮かび上がりました。果物や野菜の摂取に関する推奨事項への遵守度は、食料不安のある学生の方が有意に低いという結果が示されました(p=0.007)。一方で、全粒穀物の推奨事項(p=0.025)、そして肉・鶏肉・卵の推奨事項(p=0.013)については、逆に食料不安のある学生の方が遵守度が高い傾向が示されました。さらに、食料不安のある学生は、学年を通じて体重の変動がより大きくなる傾向も見られたと報告されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、著者ら自身が「概念実証(proof of concept)」と位置づけている段階の調査です。対象はグルノーブル大学という一つの大学の学生257人に限られており、食料不安のある学生の人数も全体の9%と少数であるため、ここで見られた食品群ごとの違いをただちに一般化できるものではありません。著者らは、この手法をより大規模な学生集団や他の大学にも広げることで、学生の栄養状態の改善に向けた政策づくりに役立つ知見が得られる可能性があるとしています。今回の調査結果は、なぜこうした違いが生まれるのかという因果関係まで明らかにしたものではなく、一つの研究として今後の検証を要するものである点に留意が必要です。

まとめ

この研究は、フランスの大学生を対象に、国の栄養指針への遵守度を数値化する方法を試み、食料不安のある学生とそうでない学生とで、果物・野菜、全粒穀物、肉・鶏肉・卵といった食品群への遵守度に違いが見られたことを報告しています。学生の食生活と経済的な事情との関わりを考えるうえで、一つの手がかりを示す調査といえそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Joanna Choueiri, Dominique J. Bicout, Dulce Dias, et al. Dietary adherence to the French National Nutrition and Health Program recommendations and its association with food insecurity among college students in Grenoble, France. ビーエムシー・パブリック・ヘルス (2026). DOI: 10.1186/s12889-026-29151-w. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.