スマートフォンでSNSを開けば、色鮮やかな料理の広告や配達アプリの案内が次々と流れてくる。こうした環境の変化が、若い世代の食生活にどのような影響を与えているのだろうか。パキスタンで行われたこの研究は、大学生を含む成人のSNS利用者を対象に、SNS上の食品広告への接触や運動習慣が、日々の食生活の質とどう関係しているかを調べたものである。過体重や肥満、それに伴う生活習慣病はパキスタンでも大きな課題となっており、その背景には不健康な食習慣や運動不足があるとされる。研究チームは、デジタル技術の普及がこうした傾向にどう関わっているのかを検証しようとした。

調査の方法

研究では、パキスタンでSNSを利用している成人471人を対象に、構造化された質問票を用いた横断調査を実施した。質問票では、回答者の基本属性、SNSの利用状況、日々の食事の傾向、そしてデジタル上の食品広告に接した経験などを尋ねている。分析の核となったのは「自分の食生活全体をどう評価するか」という質問への回答で、これをもとに参加者を『健康的』または『不健康』な食習慣のいずれかに分類した。そのうえで、どのような要因が不健康な食習慣と結びついているかを、複数の要因を同時に考慮できる統計手法(多重二項ロジスティック回帰分析)を用いて調べている。

わかったこと

調査対象者のうち86%が不健康な食習慣に分類され、健康的な食習慣とされたのはわずか14%にとどまった。座りがちな生活を送っている参加者は、そうでない参加者に比べて不健康な食習慣を持つ傾向が有意に高く、統計上のリスクの高さを示す指標(調整オッズ比)は2.02倍であったと報告されている。また、食事の選び方についても違いが見られ、あらかじめ献立が決まった宅配プラン(ミールサブスクリプション)を選ぶ人と比べて、家庭で調理した食事を好む人は7.03倍、フードデリバリーアプリを利用する人は8.79倍、レストランでの外食を選ぶ人は10.20倍、それぞれ不健康な食習慣に該当しやすいという結果であった。一方で、過去1か月間まったく外食をしなかった参加者は0.15倍、外食が1〜3回にとどまった参加者は0.44倍と、高カロリーな食事を選ぶ傾向が低いことも示された。こうした結果から、研究チームは食品広告への接触頻度の高さと座りがちな生活習慣が、パキスタンの成人における不健康な食行動と関連する主な要因であると位置づけている。

この研究をどう読むか

この研究は、SNSの利用者471人を対象とした一時点の横断調査であり、広告への接触や運動習慣、食生活の評価はいずれも本人の回答に基づくものである。そのため、SNS広告や運動不足が食習慣の『原因』であると断定できるものではなく、あくまで統計的な関連が示されたと捉えるのが適切だろう。また今回の対象はパキスタンの成人であり、食文化や外食・宅配サービスの利用状況が異なる地域、たとえば日本の状況にそのまま当てはめられるかどうかは、この論文からは判断できない。一つの研究として示された関連性であり、結論が確定したわけではない点に留意したい。

まとめ

この研究は、パキスタンの成人SNS利用者において、座りがちな生活習慣や外食・デリバリーの利用頻度が、不健康とされる食習慣と統計的に関連していることを示したものである。デジタル化が進む中で、食品広告への接触機会や食の選び方が食生活にどう影響しうるかを考えるうえで、一つの手がかりを提供する調査といえるだろう。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Reeha Anwar, Muniba Khaliq. The Role of Social Media Advertisements and Physical Activity on Eating Behaviors among University Students in Pakistan: A Cross-Sectional Study. 食品・栄養の進歩 (2026). DOI: 10.66540/afn/2026.1015.