著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Chemistry X

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

混ざり方と働きの関係を調べる

研究チームは、乳由来のホエイたんぱく質と、オーツ麦に含まれる多糖類のβグルカンを混ぜたとき、pHによって構造や働きがどう変わるかを調べました。たんぱく質と多糖類の組み合わせは、食品の泡や、水と油が混ざった状態を安定させる材料として研究されています。ただし、両者が溶けている状態と、結びついて集まった状態とで、どのような性質の違いが生じるかは十分に分かっていませんでした。

著者らは、それぞれの水溶液を1対1で混ぜ、pHを2〜7に調整しました。濁りや粒子の大きさ、電気的な性質、たんぱく質の構造を調べるとともに、泡立ちや乳化の性能、試験管内での抗酸化能と酵素の働きを抑える活性を比較しました。

pHによって変わる三つの状態

研究チームは、混合物に三つの状態を確認しました。pHの低い側と高い側では、両成分がともに溶けている状態になりました。その間には、両者が結びついても溶けたままの領域と、結びついたものが凝集して液から分かれる領域がありました。詳しい比較には、それぞれを代表するpH2.0、4.5、5.5、7.0の試料を用いました。

pH4.5では粒子が最も大きく、顕微鏡でも大きな凝集体が観察されました。一方、pH5.5では、大きな凝集体をつくらず、結びついた成分がより均一に分布していました。著者らは、pHによって両成分の電荷が変わり、互いに引き合う力や反発する力が変化することが、こうした違いを生むと説明しています。また、構造解析では、βグルカンを加えた試料のたんぱく質は、単独の場合よりも規則性の低い構造になっていたと報告しています。

泡立ちと乳化では、優れる条件が異なる

混合物は、同じpHのホエイたんぱく質単独、βグルカン単独と比べて、泡をつくる能力と泡を保つ能力が高くなりました。混合物の中では、溶けた複合体ができるpH5.5で、泡立ちと泡の安定性が最も高いと報告されました。

水中に油を細かく分散させる乳化の試験では、混合物は各成分単独よりも高い乳化活性を示しました。ただし、乳化しやすさと、乳化した状態の保ちやすさでは、優れる条件が異なりました。乳化活性の指標はpH7.0で最も高く、乳化の安定性はpH5.5で最も高くなりました。凝集が強いpH4.5では、乳化の安定性が最も低くなりました。

試験管内の活性にも違い

抗酸化能の指標として用いたDPPHラジカルを消去する試験では、混合物はpH2.0で最も強い活性を示しました。また、でんぷんなどの糖質の分解に関わるαアミラーゼとαグルコシダーゼの働きを抑える活性は、同じpHの各成分単独よりも混合物で高く、混合物の中ではpH2.0で最大でした。これらは試験管内で測定された性質であり、人が摂取した際の健康効果を示した結果ではありません。

この研究が示すのは、同じ二つの成分を混ぜても、pHと混ざり方によって得意な働きが異なるということです。著者らの報告は、泡を保つ、乳化を安定させるといった目的に応じて、たんぱく質と多糖類の状態を選ぶための基礎的な知見となります。

原著論文の著者・所属:Heyang Xu(Key Laboratory of Dairy Science (Northeast Agricultural University), Ministry of Education, College of Food Science, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Zhishen Mu(Inner Mongolia Enterprise Key Laboratory of Dairy Nutrition, Health & Safety, Inner Mongolia Mengniu Dairy (Group) Co., Ltd., Huhhot 011500, China)、Han Wang(Key Laboratory of Dairy Science (Northeast Agricultural University), Ministry of Education, College of Food Science, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Xin Wen(Key Laboratory of Dairy Science (Northeast Agricultural University), Ministry of Education, College of Food Science, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Jialun Hu(College of Food Science and Engineering, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)、Zhanmei Jiang(Key Laboratory of Dairy Science (Northeast Agricultural University), Ministry of Education, College of Food Science, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)、Munkh-Amgalan Gantumur(Key Laboratory of Dairy Science (Northeast Agricultural University), Ministry of Education, College of Food Science, Northeast Agricultural University, Harbin 150030, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Heyang Xu, Zhishen Mu, Han Wang, et al. Insight into functionality and bioactive properties of whey protein/beta-glucan complex discrepancy during different pH-induced phase transition. Food Chemistry X 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104343. 原著ライセンス:CC BY.