この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Epidemiology Biostatistics and Public Health

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食物繊維の摂取が多いほど大腸がんのリスクが低いことは、これまでにも報告されてきました。この研究が着目したのは、そうした食物繊維の中でも「プレバイオティクス繊維」と呼ばれる一群です。プレバイオティクス繊維とは、人の消化酵素では分解されず、腸内細菌に選択的に利用される成分を指し、腸内環境の維持に関わる可能性があると考えられています。

著者らによれば、イヌリン型フルクタン(ITF)やガラクトオリゴ糖(GOS)といったプレバイオティクスと大腸がんリスクとの関係はこれまでにも調べられてきたものの、疫学的な証拠は一貫していません。大規模な症例対照研究でGOSについて逆相関(摂取が多いほどリスクが低い)が報告された一方、ITFについての結果はおおむね関連なしでした。個々のプレバイオティクス繊維に関するデータは、全体として限られたままだといいます。そこで研究チームは、ITF、フラクトオリゴ糖(FOS)、GOSといった具体的なプレバイオティクス繊維の摂取量と大腸がんリスクとの関連を、イタリアの症例対照研究のデータで検討しました。

調べ方

用いられたのは、2017年から2019年にかけてイタリア・ミラノで実施された多施設共同の症例対照研究のデータです。症例対照研究とは、病気になった人(症例)と、なっていない人(対照)とで、過去の生活習慣などを比べる方法です。対象は、組織診で大腸がんと確定した100人と、対照200人。対照のうち100人は腸のポリープ(腺腫)がある人、残る100人は腺腫もがんもない人でした。症例と対照は、研究施設、性別、年齢(±5歳)でそれぞれ個別に対応づけられています。

食事は、妥当性が確認された食物摂取頻度質問票で把握されました。プレバイオティクス繊維の摂取量、すなわちITF、FOS(総量および個別のケストース・ニストース・フルクトフラノシルニストース)、GOS(総量および個別のスタキオース・ラフィノース)の摂取量は、専用の成分データベースを使って推計されています。エネルギー摂取量は、疫学研究向けのイタリア食品成分データベースから算出されました。

解析では、対応づけの条件を考慮したロジスティック回帰モデルを用い、教育年数(7年未満、7〜11年、12年以上)とエネルギー摂取量の3分位を調整したうえで、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定しています。オッズ比は、ここでは摂取量の少ない群に対する多い群の大腸がんのなりやすさの比を表す指標で、1より小さいほどリスクが低い方向を示します。摂取量は対照群をもとに性別ごとの3分位に分け、加えて摂取量が1標準偏差増えた場合のオッズ比も推定されました。さらに、がんの部位別および性別に分けた解析も行われています。

主な報告結果

著者らの報告によると、一部のプレバイオティクス繊維では摂取量が多いほど大腸がんリスクが低いという関連がみられました。FOSの一種であるニストースでは、摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べてオッズ比0.44(95%CI 0.22〜0.89)で、3分位を通じた傾向も統計的に有意でした。GOSの一種であるラフィノースも逆相関を示し、連続量としてのオッズ比は0.63(95%CI 0.43〜0.91)でした。ラフィノースの逆相関は直腸がんでより強く(オッズ比0.30、95%CI 0.15〜0.63)、これ以外のプレバイオティクスでは一貫した関連は認められませんでした。

性別に分けた解析では、方向の異なる結果が報告されています。ニストースでは男性で逆相関がみられ(オッズ比0.55、95%CI 0.43〜0.89)、女性ではみられませんでした(オッズ比0.95、95%CI 0.61〜1.47、異質性のp値0.053)。逆にスタキオースでは女性で逆相関が認められ(オッズ比0.53、95%CI 0.31〜0.90)、男性では認められませんでした(オッズ比1.24、95%CI 0.92〜1.66、異質性のp値0.010)。

この研究が示すこと

著者らは、ニストースとラフィノースが大腸がん全体のリスクと逆相関し、ラフィノースは直腸がんとの逆相関を示したこと、またニストースとスタキオースでは性別によって異なる逆相関がみられたことを結論として挙げています。そのうえで、これらの結果は、特定のプレバイオティクス繊維が大腸がんの成り立ちに関わっている可能性を支持するものだと述べています。

この研究は、ある時点で病気の人とそうでない人の過去の食事を比べた観察研究であり、報告されているのは摂取量とリスクとの統計的な関連です。因果関係が示されたわけではありませんが、「食物繊維」とひとくくりにされてきたものを個々の成分まで分けて見ると、大腸がんとの関わり方が成分ごと、また部位や性別によって異なりうることを示した点に、この報告の意味があります。

著者:Arianna Natale(University of Milan)、Federica Fiori(University of Udine)、Maria Parpinel(University of Udine)、Federica Turati(University of Milan)、Marta Rossi(University of Milan)、Francesca Bravi(University of Milan)、Carlo La Vecchia(University of Milan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Arianna Natale, Federica Fiori, Maria Parpinel, Federica Turati, Marta Rossi, Francesca Bravi, Carlo La Vecchia Association of Prebiotic Fiber Intake With Colorectal Cancer Risk in an Italian Case-Control Study. Epidemiology Biostatistics and Public Health 2026-09-22. DOI: 10.54103/2282-0930/32070. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。