著者の所属・活動拠点の国は、中国、イギリスです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

腎結石(腎臓結石症)は再発率の高さで知られる疾患で、有効な対策をとらない場合10年以内の再発率は50%を超えるとされます。症状が出ないケースから、激しい痛みを伴う腎仙痛、血尿、急性腎障害、慢性腎臓病にまで至ることもあり、手術による治療が必要になる入院の割合は26%にのぼるという報告もあります。こうした背景から、腎結石になりやすい人の特徴を食事の面から探る研究が進められてきました。

近年注目されているのが、腸内細菌叢(腸内フローラ)と腎結石の関係です。腸内細菌には、腸管内のシュウ酸の吸収や尿酸の代謝、脂質代謝、炎症反応などを介して結石のできやすさに影響する可能性が指摘されています。そして、腸内細菌叢の状態を左右する最大の要因の一つが日々の食事です。そこで考案されたのが「DI-GM(Dietary Index for Gut Microbiota、腸内細菌叢のための食事指標)」というものさしで、これまでの研究知見をもとに、腸内細菌にとって good とされる食品10種類(アボカド、ブロッコリー、ひよこ豆、コーヒー、クランベリー、発酵乳製品、食物繊維、緑茶、大豆、全粒穀物)と、好ましくないとされる食品4種類(赤身肉、加工肉、精製穀物、高脂肪食)の摂取状況を点数化し、合計0〜14点のスコアで表す仕組みになっています。今回の研究チームは、このDI-GMスコアと腎結石リスクの関連を、中国人成人を対象に調べました。

どのように調べたのか

研究は、天津で2007年に開始された大規模コホート「TCLSIH(Tianjin Chronic Low-Grade Systemic Inflammation and Health)」のうち、瀋陽(シェンヤン)で実施されているサブコホートのデータを用いた症例対照研究です。2019〜2021年に中国医科大学盛京医院の泌尿器科で腎結石と新規に診断され手術を受けた患者から、他の慢性疾患やがんの既往がある人を除いた278人を「症例群」としました。これに対し、同じサブコホートに参加し腎結石の既往がなく、年齢(±1歳)と性別を1対2の比率でマッチングさせた556人を「対照群」とし、合計834人を分析対象としています。

食事の内容は、100品目からなる検証済みの食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて過去1か月分を調べ、中国食品成分表に基づいて栄養素摂取量を算出したうえでDI-GMスコアを計算しました。腎結石の診断は、患者本人の申告ではなく、ICD-10のN20コードが記録された病院の手術記録を系統的に確認する方法で確定しており、著者らはこの点を、これまでの多くの研究が自己申告による問診票に頼っていたのと比べた強みとして挙げています。分析では、BMI、収入、教育歴、喫煙・飲酒状況、1日の水分摂取量、総エネルギー摂取量などの影響を段階的に調整した上で、DI-GMスコアと腎結石リスクの関連を統計的に評価しました。

研究でわかったこと

解析の結果、DI-GMスコアが高い人ほど腎結石のリスクが低い傾向が一貫して見られました。DI-GMスコアが0〜5点の人を基準とすると、6〜7点の人ではリスクが低く(調整後オッズ比0.38)、8点以上の人ではさらにリスクが低いという結果でした(調整後オッズ比0.17、95%信頼区間0.08〜0.36)。これは、スコアが0〜5点の人と比べて8点以上の人では腎結石のリスクが83%低かったことを意味します。スコアが上がるほどリスクが段階的に下がる傾向(トレンド)も統計的に確認されました。

腸内細菌に良いとされる食品グループ(10項目)のみで見た場合も、摂取が多いグループでリスクの低さと関連していました。逆に、腸内細菌に好ましくないとされる食品グループ(4項目)の摂取が少ないグループでも、同様にリスクの低さと関連していました。なお、スコアとリスクの関係が滑らかな直線的な関係から外れる「非線形」のパターンは確認されず、また年齢別(60歳以下・60歳超)、性別(男女)で分けたサブグループ解析でも、この関連の傾向におおむね一貫性が見られました。

研究チームは、腸内細菌の一部がシュウ酸を分解する働きを持つ可能性など、これまでの文献で示唆されているメカニズムに言及していますが、今回の研究では腸内細菌そのものを直接測定したわけではないと明記しており、この点はあくまで背景知識としての紹介にとどまる点に注意が必要です。

この研究を読むうえでの注意点

著者らは論文中でいくつかの限界を挙げています。まず、DI-GMは食物摂取頻度調査票(FFQ)による自己申告データから算出しているため、思い出し誤差(リコールバイアス)の影響を受ける可能性があります。次に、DI-GMはあくまで食事内容から腸内細菌叢への影響を推測する指標であり、実際の腸内細菌の構成を遺伝子解析などで直接測定したものではないため、今回見られた関連が本当に腸内細菌を介したものかどうかは今回のデータだけでは確認できません。また、症例対照研究という研究デザイン上、原因と結果の順序(食習慣が先か、結石になったことで食事が変わったのか)を完全に区別することはできません。

さらに、今回の症例群は手術を要した腎結石患者に限られているため、無症状で経過観察されている腎結石患者など、より軽症の人たちにもこの結果がそのまま当てはまるかは分かりません。結石の成分や大きさ、部位、具体的な手術方法についてのデータは分析に含まれておらず、尿中のシュウ酸や尿酸値といった関連する検査値も入手できなかったため、それらを踏まえた詳しい検証はできていません。また、症例群のほうが対照群よりBMIが低いという結果も得られていますが、これは総エネルギー摂取量の違いだけでは説明しきれない可能性があり、著者らは今後の前向きコホート研究で背景を調べる必要があるとしています。

今回のデータは中国・瀋陽のコホートに基づくものであり、著者らは、これまでのDI-GMと腎結石に関する研究が主に米国のNHANESデータに基づいており、食事パターンが大きく異なるアジア圏でのデータが少なかった点を、本研究の意義として挙げています。あくまで一つの症例対照研究の結果であり、因果関係を証明するものではない点に留意が必要です。

まとめ

中国人成人を対象にしたこの研究では、腸内細菌叢に配慮した食事パターンを示すDI-GMスコアが高い人ほど、腎結石のリスクが低い傾向が見られたと報告されています。ただし、これは腸内細菌を直接調べた結果ではなく、また症例対照研究という性質上、食事が結石を防いだと結論づけることはできません。著者らも、今後は前向きのコホート研究や、腸内細菌そのものを解析する研究によって、この関連や背後にある仕組みをさらに検証する必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Xing Jin(Department of Nursing, Shengjing Hospital of China Medical University)、Jia Li(Department of General Surgery, Shengjing Hospital of China Medical University)、Yuanqi Zhao(China Medical University–The Queen's University of Belfast Joint College)、Kun Xu(Department of Urology, Shengjing Hospital of China Medical University)、Yuge Wang(Department of Pathology, Shengjing Hospital of China Medical University)、Song Bai(Department of Urology, Shengjing Hospital of China Medical University)、Yashu Liu(Department of General Surgery, Shengjing Hospital of China Medical University)、Zhenhua Li(Department of Urology, Shengjing Hospital of China Medical University)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Xing Jin, Jia Li, Yuanqi Zhao, et al. Adherence to the Dietary Index for Gut Microbiota and reduced risk of nephrolithiasis: a case–control study of Chinese adults. フロンティアーズ・イン・ニュートリション (2026). DOI: 10.3389/fnut.2026.1893492. 原著ライセンス: cc-by.