この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食事の傾向は、体内の炎症、酸化ストレス、腸の透過性、腸内細菌といった経路を通じて胃がんの発生に関わる可能性があると考えられています。しかし著者らは、炎症・抗酸化・腸内細菌に着目した複数の食事指標を同時に評価し、あわせて複数の生物学的指標(バイオマーカー)も測定した包括的な研究は、胃がんの分野ではまだ限られていると述べています。

そこで研究チームは、これら3種類の食事指標と胃がんの有無との関連を、検査値の違いとあわせて調べることを目的としました。

調べ方

この研究は症例対照研究と呼ばれる方法で行われました。すでに病気がある人(症例)と、病気のない人(対照)を集め、過去の食事や検査値をさかのぼって比べる設計です。対象は成人960人で、組織検査によって胃がんと確認された患者480人と、対照となる参加者480人から構成されています。

食事の摂取内容は、妥当性が確認済みの食物摂取頻度調査票で評価されました。そこから、食事がどれだけ炎症を促しやすいかを表す食事炎症指数(DII)、抗酸化成分の摂取量をまとめた複合食事抗酸化指数(CDAI)、腸内細菌にとって好ましい食事かどうかを示す腸内細菌に関する食事指数(DI-GM)が算出され、それぞれ値の低い順に3グループ(三分位)へ分けられました。あわせて、炎症、酸化ストレス、腸の透過性、腸内細菌に関わるバイオマーカーが標準的な検査法で測定され、他の要因の影響を調整できる多変量ロジスティック回帰という統計手法で、食事指標と胃がんリスクの関連が検討されました。

主な報告結果

著者らの報告によると、胃がん患者は対照群と比べてDIIの値が有意に高く、CDAIとDI-GMの値は有意に低いという結果でした(いずれもp<0.001)。

要因を十分に調整したモデルでは、DIIが最も高いグループは胃がんである見込み(オッズ比)が大きく、オッズ比6.21(95%信頼区間4.39〜8.79)と報告されています。一方、CDAIが高いこと(オッズ比0.20、95%信頼区間0.14〜0.28)とDI-GMが高いこと(オッズ比0.25、95%信頼区間0.18〜0.35)は、いずれもリスクとの逆向きの関連を示しました(いずれも傾向性のP<0.001)。

バイオマーカーについては、DIIはCRP、TNF-α、MDA、ゾヌリン、好中球リンパ球比(NLR)といった炎症・酸化関連の指標と正の相関を示しました。ただし著者らは、食事指標の三分位間でのバイオマーカーの差は全体として小さかったと述べています。胃がん患者においては、DI-GMの三分位が腸の透過性の指標であるゾヌリン濃度と有意に関連していました。判別能を評価するROC解析では、DIIのAUCが0.712、CDAIが0.688、DI-GMが0.631で、いずれも中程度の判別性能と報告されています。

この研究が示すこと

研究チームは、炎症を促しやすい食事の傾向が胃がんである見込みの高さと関連し、抗酸化成分に富む食事や腸内細菌に好ましい食事は逆向きの関連を示したとまとめています。これらの関連には、炎症、酸化ストレス、腸の透過性、腸内細菌の代謝に関わる検査値の違いが伴っていました。

同時に著者らは、症例対照研究という設計上、因果関係は導けず、今回の結果は原因と結果ではなく関連としてとらえるべきだと明記しています。食事の傾向と胃がんを結ぶ生物学的な経路を、複数の指標と検査値の両面から同時に描き出した点が、この報告の中心にあります。

著者:Yongjing Chen(Department of Gastroenterology, Shanxi Cancer Hospital, Shanxi Hospital Affiliated to Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences, Cancer Hospital Affiliated to Shanxi Medical University)、Rong Yang(Department of Gastroenterology, Shanxi Cancer Hospital, Shanxi Hospital Affiliated to Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences, Cancer Hospital Affiliated to Shanxi Medical University)、Qingzhen Song(Department of General Internal Medicine, Shanxi Cancer Hospital, Shanxi Hospital Affiliated to Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences, Cancer Hospital Affiliated to Shanxi Medical University)、Yuan Li(Department of Gastroenterology, Shanxi Cancer Hospital, Shanxi Hospital Affiliated to Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences, Cancer Hospital Affiliated to Shanxi Medical University)、Junjie Ma(Department of Gastrointestinal Surgery, Shanxi Cancer Hospital, Shanxi Hospital Affiliated to Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences, Cancer Hospital Affiliated to Shanxi Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yongjing Chen, Rong Yang, Qingzhen Song, et al. Inflammatory, antioxidant, and gut microbiota–related dietary indices and gastric cancer risk: a case–control study. Frontiers in Nutrition 2026-09-16. DOI: 10.3389/fnut.2026.1893032. 原著ライセンス:CC BY.