著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:International Journal of Economics Business and Innovation Research

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

品質は良いのに知られていない、という課題

大都市の周辺にある村には、市場に近くインフラも整っているのに、地元の農産物や加工品が地域の外であまり知られていないという状況が見られます。品質は良くても、ブランドや包装、流通の広さで勝る工業製品との競争で不利になりやすいのです。

インドネシア・北スマトラ州の研究チームは、この問題をマーケティング管理の観点から調べました。マーケティング管理とは、市場を分析し、誰に何をどう売るかを計画し、製品・価格・販売経路・販売促進の組み合わせ(マーケティング・ミックス)として実行し、結果を評価して見直す一連の流れを指します。著者らは、個々の要素を扱った研究はあっても、村の事業者がこの流れ全体でどこが強く、どこが弱いのかを描いた研究は少ないと指摘しています。

研究の目的は、地元の農業関連事業者のマーケティングの実践と、本人たちが感じているマーケティングの成果を記述し、競争力を高めるために優先して強化すべき機能を明らかにすることでした。

村の事業者50人へのアンケートと現地観察

調査は2026年4月から7月にかけて、北スマトラ州デリ・セルダン県のメダン・クリオ村で行われました。この村では米、トウモロコシ、唐辛子、野菜、果物が栽培され、それらを使った軽食、伝統菓子、チップス、ハーブ飲料などが作られています。

対象は、農家、農家グループや女性農家グループのメンバー、農産物を加工する小規模事業者です。農業関連の事業を1年以上営み、従来型またはデジタルの販売活動を行っていることを条件に選ばれた50人が、40項目のアンケートに回答しました。各項目は「全くそう思わない(1)」から「とてもそう思う(5)」までの5段階で答える形式で、販売促進とデジタル流通、市場に関する知識の管理、製品とブランドの戦略、マーケティングの成果という4つの領域に分かれています。

研究チームは平均点などを算出したうえで、各項目をマーケティング管理の段階(分析、計画、実行、評価)ごとに組み直して比べました。さらに2026年7月21日に実施した事業者向けの参加型支援プログラムでの観察を、アンケート結果を裏づける材料として用いています。

製品づくりは強く、知ってもらう力は弱い

マーケティング管理の段階ごとに見ると、最も評価が高かったのは製品戦略で、平均は5点満点中4.76でした。衛生・味・日持ちといった品質基準を守っているという項目では、全員が「とてもそう思う」と答えています。一方、最も弱かったのは販売促進で平均3.72、続いて、狙う顧客層を定めて自社製品の立ち位置を明確にする計画面が4.05、デジタルでの販売経路が4.16でした。

個別の項目では、WhatsApp、Instagram、Facebookなどのソーシャルメディアを販売促進に使っているかという問いが平均2.86と、40項目の中で唯一「中程度」の区分にとどまりました。賛同は56%にとどまる一方、40%がそう思わないと答え、回答のばらつきも最大でした。著者らは、デジタルで顧客とやりとりしている事業者と、対面販売に頼る事業者とに分かれていると解釈しています。また、通信の基盤はあることから、課題は手段の有無よりも、発信の継続性や質、双方向性にあると論じています。

事業者が感じている成果は全体として高い評価でしたが、「デジタルマーケティングを使ってから利益が増えた」という項目は平均3.86で、「この1年で売上が増えた」の4.36を明らかに下回りました。著者らは、売上が伸びても利益が自動的に増えるわけではなく、オンライン販売に伴う包装や配送、宣伝の費用が増えている可能性を挙げています。なお、価格についてはアンケートで直接測っておらず、支援プログラムの中で原価計算と価格設定が強化の必要な点として確認されたと報告しています。

現地観察では、包装やブランド表示、記録の管理が、自己評価から想像されるよりも弱いことが分かりました。多くの製品は簡素な包装で、ラベルの情報が不十分なうえ、商標やロゴ、製品にまつわる物語がありませんでした。取引の記録は手書きが中心で、記録されていないものもあったといいます。著者らは、自己申告では実際より良く答えやすい傾向がありうるため、満点に近い得点は慎重に解釈すべきだと述べています。

「良い製品」を「選ばれるブランド」にするために

著者らは、この村の事業者は市場志向というより製品志向であり、良い製品を作る力は十分にある一方、顧客層を定め、競合に対する立ち位置を示し、価値を一貫して伝える力が弱いと結論づけています。課題は良い製品を作ることではなく、その製品を目に見え、位置づけがはっきりし、適正な価格で、継続して伝えられるブランドにするための管理にある、というのが論文の主張です。

支援プログラム後には、ソーシャルメディアを宣伝に使えるようになった、より魅力的な包装やロゴを使い始めた、簡単な帳簿をつけ始めたといった変化が観察され、参加者15人への事後評価でも多くが満足や有用性に賛同したと報告されています。著者らはこれを、弱い機能を強化できる可能性を示す初期の手がかりと位置づけています。

この研究は1つの村の自己申告データを記述的に分析したもので、価格は測定対象に含まれていません。そのうえで、品質の高い地域産品が広く知られるには、作る力に加えて、売り方全体を整える力が欠かせないことを、具体的な村の姿を通して示しています。

原著論文の著者・所属:Amelia, Ocdy(Universitas Pembangunan Panca Budi, Medan, Indonesia)、Siswa Pratama(Universitas Pembangunan Panca Budi, Medan, Indonesia)、Sulardi(Universitas Pembangunan Panca Budi, Medan, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amelia, Ocdy, Siswa Pratama, Sulardi From Good Products To Visible Brands: A Marketing Management Perspective On Local Agribusiness Actors In A Peri-Urban Village Of North Sumatra. International Journal of Economics Business and Innovation Research 2026-10-03. DOI: 10.63922/ijebir.v5i06.6800. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。