この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
フレイルとは、加齢に伴って心身の働きが弱まり、健康を損ないやすくなった状態を指します。高齢者に多く、生活の質に大きく影響します。一方で、フレイルは良くなったり悪くなったりと揺れ動く状態でもあります。そのため研究チームは、日常生活の中で変えられる要因を見つけることが予防や対策の手がかりになると考えました。
著者らによると、フレイルに関わる生活習慣のうち、肉の摂取はこれまであまり調べられてきませんでした。肉はエネルギーや良質なたんぱく質、必須アミノ酸の供給源です。そこで研究チームは、中国・南京市の地域で暮らす60歳以上の高齢者を対象に、肉を食べる頻度とフレイルとの関連を調べました。
何をどのように調べたか
調査は2023年に実施された横断研究です。横断研究とは、ある一時点のデータをまとめて集め、要因と状態の関係を分析する方法です。研究チームは南京市の全12区から段階的に地域を絞り込み、合わせて24の地域社会から参加者を無作為に選びました。最終的に5,484人のデータを分析しています。
フレイルの判定には、高齢者向けの質問票「グローニンゲン・フレイル指標」の中国語版を使い、4点以上をフレイルありとしました。肉の摂取は、過去12か月の食事の頻度を尋ねる質問票で調べました。赤肉と白肉それぞれを食べる頻度を尋ね、両方を合わせた1週間あたりの回数を算出しています。そのうえで、中国栄養学会が高齢者に勧める目安である週7回以上かどうかで、参加者を二つに分けました。
分析では、年齢、性別、居住地域、学歴、職業、身体活動、喫煙・飲酒、野菜の摂取、睡眠の質、抑うつ症状、体格、持病、血中脂質など、フレイルに関わりうる多くの要因の影響を統計的に調整しました。
主な結果
参加者全体でフレイルに当てはまった人の割合は16.9%でした。年齢が上がるほど割合は高く、60〜69歳で13.2%、70〜79歳で17.9%、80歳以上で32.8%でした。また、男性より女性で、都市部より郊外で、割合がやや高いと報告されています。肉の摂取が目安に達していた人は全体の62.6%でした。
さまざまな要因を調整した後も、肉を週7回以上食べていた人は、目安に届かなかった人に比べてフレイルに当てはまりにくい傾向がありました。オッズ比は0.70です。オッズ比はなりやすさの比を表す指標で、1より小さいほど該当しにくいことを示します。この関連は、性別ごと、都市部と郊外ごと、60歳代と70歳代でも統計的に意味のある水準でみられました。ただし80歳以上では、統計的に意味のある関連は確認されませんでした。
80歳以上で関連がみられなかった理由について、著者らは、加齢に伴う食欲の低下や消化器の問題などにより、たんぱく質を利用する効率が下がっている可能性を挙げています。ただし、今回の調査では肉を食べた量のデータがなく、詳しい分析はできなかったとしています。
この研究が示すこと
研究チームは、地域で暮らす高齢者において、肉の摂取とフレイルの間に逆向きの関連、つまり肉を十分な頻度で食べている人ほどフレイルが少ない関係があるかもしれないと結論づけました。そのうえで、肉の摂取不足がフレイルの危険因子となりうると述べています。
一方、著者ら自身が強調しているとおり、これは一時点の調査であり、肉を食べることがフレイルを防ぐという因果関係を示したものではありません。フレイルでない人のほうがもともと肉を多く食べている可能性もあります。さらに、回答は自己申告に基づき、肉の種類別の分析や食べた量の把握はできていません。研究チームは結果を慎重に解釈する必要があるとしながら、高齢化が進む社会で、日々の食習慣とフレイルの関係を考えるための一つの手がかりを示しました。
著者:Zhao Dong(Nanjing Vocational Health College)、Qing Ye(Nanjing Medical University Affiliated Nanjing Municipal Center for Disease Control and Prevention)、Caihong Hu(Nanjing Medical University Affiliated Nanjing Municipal Center for Disease Control and Prevention)、Yunting Xu(Nanjing Medical University Affiliated Nanjing Municipal Center for Disease Control and Prevention)、Guofeng AO(Nanjing Medical University Affiliated Nanjing Municipal Center for Disease Control and Prevention)、Luyan Yang(Nanjing Medical University Affiliated Nanjing Municipal Center for Disease Control and Prevention)、Fengli Li(Geriatric Hospital of Nanjing Medical University)、Shifen Jia(Geriatric Hospital of Nanjing Medical University)、Yaqing Xiong(Geriatric Hospital of Nanjing Medical University)、Yu Dou(Geriatric Hospital of Nanjing Medical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhao Dong, Qing Ye, Caihong Hu, et al. The relationship between meat consumption and frailty among community-residing older adults in Nanjing municipality, China. Frontiers in Nutrition 2026-10-06. DOI: 10.3389/fnut.2026.1955451. 原著ライセンス:CC BY.