この研究は、ギリシャの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Archives of Paediatric Dentistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

むし歯は子どもや若者に最も多くみられる慢性の病気のひとつで、口の中の細菌のはたらきに食生活が影響することが知られています。砂糖を頻繁にとることや加工された炭水化物の摂取が多いことはむし歯の増加と関係があり、逆に砂糖の少ない食生活はむし歯が少ないことと結びついていると、著者らは先行研究を引いて説明しています。

ところが実際の歯科診療では、食生活の分析はあまり行われていません。論文は、その理由として診療時間が足りないことと、集めた食事データを分析する道具がないことを挙げています。研究チームは、2歳から15歳の子どもを対象に、むし歯につながりやすい食生活(食事の「カリオジェニシティ」、つまりむし歯を起こしやすさ)を評価する4つの方法を比べることを目的としました。

何を、どう調べたか

対象は、アテネ大学の保育施設および小児歯科・矯正歯科の外来と空軍病院から集められた2〜15歳の子ども247人です。全身疾患のある子どもや固定式の矯正装置を装着している子どもは除かれました。調査は質問票と「24時間思い出し法」(前日一日に食べたもの・飲んだものを思い出して記録する方法)で行われ、24時間思い出し法は最初の来院時と、その約1か月後に電話で、合わせて2回実施されました。

食生活の評価に使われた4つの方法は次のとおりです。1つ目は、食習慣についての8つの質問の回答を点数化した「食事スコア(DS)」。2つ目は、食品の摂取頻度をたずねる食物摂取頻度質問票を点数化した「FFQスコア(FFQS)」。3つ目は、24時間思い出し法のデータから、砂糖を含む食品・飲料をとった回数に20分をかけて一日のうち歯が酸にさらされる時間を合計する「ミニッツ・アシッド・スコア(MAS)」。4つ目は、同じ24時間思い出し法のデータを入力する、研究グループが開発したスマートフォン用アプリ「Dental Diet」です。このアプリは食品の種類だけでなく、食事の間隔や所要時間、そのあとの歯みがきの有無なども取り込んで口の中のpHの推移を図として表し、一日のうち酸にさらされていた時間の割合からむし歯のリスクを百分率で示します。

あわせて、訓練を受けた小児歯科医が一人で全員の口の中を診察し、ICDAS IIの基準に沿ってdmft/DMFT指数(むし歯・喪失歯・処置歯の本数)を記録しました。ごく初期の病変を含めた指数も別に計算されています。統計解析では、それぞれの食事評価方法の値とむし歯の状態との関係が調べられました。

報告された主な結果

報告によると、すべての年齢層でむし歯との統計的に意味のある関係が示されたのは、4つのうちアプリだけでした(p<0.001)。オッズ比(値が大きいほどむし歯がある側に傾くことを示す指標)はアプリで1.12〜1.22、MASで1.01、FFQSで0.87〜1.19、DSで0.86〜1.49と報告されています。FFQSとDSがむし歯と統計的に意味のある関係を示したのは、就学前の子どもの年齢層に限られました(p<0.05)。

著者らは、この年齢による違いについて、DSとFFQSは質問への回答そのものに基づくのに対し、アプリとMASは実際に報告された一日の食事内容を分析した結果である点を指摘しています。年齢が上がると保護者が子どもの食事を把握しきれなくなるため、子ども自身も記入に加わる24時間思い出し法のほうがより妥当な結果につながった可能性があるという説明です。

同じ24時間思い出し法のデータを扱うMASとアプリの判定は、すべての年齢層で統計的に有意に一致していました。ただし一致の程度を表すκ値は就学前で0.337、学童で0.109、10代で0.111と報告されており、内訳を見ると、アプリで「高い」と判定された子どもの多くはMASでも高く出た一方、中程度や低いとされた群ではMASのほうがむし歯の起こしやすさを低く見積もる傾向がありました。著者らは、MASが砂糖をとる回数だけを計算に使うのに対し、アプリは食品の粘りけや食事の種類・時間といった複数の要素を考慮するためだろうと述べています。

著者らは限界も挙げています。標本は代表性のあるものではないため結果は示唆的で一般の集団に当てはめることはできないこと、自己申告の質問票には望ましい行動を答えてしまう偏りがありうること、そして横断研究であるため示せたのは関連であって因果関係ではないことです。

この研究が示すこと

結論として論文は、このアプリが子どものむし歯につながりやすい食生活を検出でき、歯科の現場で役立つ道具になりうると述べています。従来の質問票による方法も、就学前の子どもについては十分な道具となりうるとされました。食生活の評価は歯科でほとんど行われてこなかったという出発点に戻れば、この研究は、限られた診療時間のなかでも扱える測り方の選び方を考える手がかりを、実際の比較データとともに示したものだといえます。

著者:Matina V Angelopoulou(Paediatric Dentistry, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece. [email protected])、Andreas Agouropoulos(Paediatric Dentistry, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece)、S. Gizani(Paediatric Dentistry, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Matina V Angelopoulou, Andreas Agouropoulos, S. Gizani. Comparison of different cariogenic dietary assessment methods in children. European Archives of Paediatric Dentistry 2026-09-13. DOI: 10.1007/s40368-026-01282-z. 原著ライセンス:CC BY.