著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Media of Health Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期は体が急速に成長し、多くの栄養を必要とする時期です。成長の仕方や必要な栄養は男女で異なるとされ、性別と栄養状態の関係はこれまでも調べられてきました。ただし、性別との関連があるとする研究とないとする研究があり、結果は一致していません。
著者らが着目したのは、インドネシアとフィリピンの国境に位置するサンギヘ諸島です。論文によれば、島しょ部では島間の交通が限られるため食料を島外からの移入に頼りやすく、魚を中心とした伝統的な食生活に加えて、加工度の高い食品(超加工食品)が日常の食事に広がりつつあります。これまでインドネシアの思春期の栄養研究は都市部や本島部に偏っており、こうした国境の島しょ地域のデータは不足していました。対象となった学校でも、包括的な栄養状態の評価は行われたことがなかったといいます。
そこで研究チームは、サンギヘ諸島県にある公立中学校の生徒を対象に、性別と栄養状態に関連があるかを分析しました。
何を調べたか
調査は2024年10月、サンギヘ諸島県のマンガニトゥ第2公立中学校で行われました。在籍する185人全員を対象とする方針でしたが、欠席者や当日その場にいなかった生徒を除き、12〜15歳の139人が参加しました。内訳は女子が59.0%、男子が41.0%です。
研究チームは生徒の身長と体重を測り、体格指数(BMI:体重を身長の2乗で割った値)を算出しました。子どもや思春期の体格は年齢によって基準が変わるため、世界保健機関(WHO)の2006年の基準を使って、同じ年齢の標準と比べてどの程度の位置にあるかを示す「年齢別BMI」で評価しています。その結果をもとに、生徒を「低栄養(やせ)」「適正」「過体重」「肥満」の4区分に分けました。
性別(学校の登録情報)と栄養状態の区分との関連は、カテゴリーどうしの関連を調べる統計手法であるカイ二乗検定で分析しました。この分析は関連の有無を調べるもので、原因と結果の関係を示すものではありません。
主な結果
生徒の多く(79.1%)は適正な栄養状態でした。一方で、低栄養が5.8%、過体重が5.0%、肥満が10.1%見られました。過体重と肥満を合わせた「栄養過多」は15.1%で、低栄養の5.8%を上回りました。著者らは、同じ集団の中に栄養不足と栄養過多が同時に存在する「栄養の二重負荷」が見られると指摘しています。
性別との関係については、低栄養、適正、過体重のいずれの区分でも、男女の間に統計的に意味のある関連は認められませんでした(肥満を比較の基準とした分析で、p値はそれぞれ1.000、0.436、0.758)。
論文では、生徒への短い聞き取りや研究者の観察も紹介されています。生徒たちはインスタント麺、タピオカ入りの甘い飲み物、袋入りのスナック菓子を好むと答え、インスタント麺とご飯を弁当として持参する生徒もいました。また、男子は休み時間に屋外で体を動かし、女子は屋内で過ごす傾向が見られたといいます。ただし、食事内容や身体活動量は数値として測定されていません。
研究が示すこと
著者らは、この集団では性別が栄養状態を左右する主要な要因ではなく、食生活や身体活動、超加工食品の入手しやすさといった行動や環境の要因がより大きく関わっていると考えています。そのうえで、性別だけに着目するのではなく、定期的な身体測定や栄養教育などを学校・家庭・地域の保健機関が連携して進める必要があると述べています。
一方で、この研究は一つの学校で一時点に行われた調査であり、因果関係は示せないこと、食事や身体活動、経済状況などの影響は考慮していないことを、著者ら自身が限界として挙げています。
それでも、データが乏しかった国境の島しょ地域の中学生について、栄養不足と栄養過多が同時に存在し、その分布に男女差が見られなかったことを実測で示した点に、この研究の意義があります。
原著論文の著者・所属:Astri Mahihody(Nursing Study Program, Department of Health, Politeknik Negeri Nusa Utara, Indonesia)、Jelita Siska Herlina Hinonaung(Nursing Study Program, Department of Health, Politeknik Negeri Nusa Utara, Indonesia)、Grace Angel Wuaten(Environmental Sanitation Study Program, Department of Health, Politeknik Negeri Nusa Utara, Indonesia)、Meityn Disye Kasaluhe(Environmental Sanitation Study Program, Department of Health, Politeknik Negeri Nusa Utara, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Astri Mahihody, Jelita Siska Herlina Hinonaung, Grace Angel Wuaten, Meityn Disye Kasaluhe Gender Differences in Nutritional Status Among Adolescents in Sangihe Islands, Indonesia: A School-Based Cross-Sectional Study. Media of Health Research 2026-07-30. DOI: 10.70716/mohr.v4i3.562. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。