にんじんやほうれん草、トマトなどに含まれる色素成分「カロテノイド」は、体内では抗酸化物質として働くことが知られており、摂取量の把握は栄養調査で重要視されてきました。しかし食事内容を思い出して記入する自己申告式の調査には限界があり、より簡便な方法として、皮膚に光を当てて測定する「反射分光法(RS)」を使った皮膚カロテノイドスコア(SCS)が近年注目されています。今回紹介する研究は、このSCSが実際にどの種類のカロテノイド摂取量と関連しているのかを、米国の地理的に異なる複数地域のデータを使って詳しく調べたものです。
どのように調べたのか
研究チームは、米国8地域から集まった成人280人を対象に、44項目からなるカロテノイド摂取量スクリーナー(質問票)を用いて、過去7日間の総カロテノイド摂取量に加え、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ルテイン+ゼアキサンチン、リコピンという5種類の個別カロテノイドの摂取量を推定しました。同時に、参加者一人ひとりの皮膚カロテノイドスコアを、Veggie Meter®という機器を2台使って測定しています。得られたデータは、スピアマンの順位相関分析と、地域差を考慮した線形混合モデル(サイトごとのランダム切片を含む)によって解析されました。
研究でわかったこと
8つの地域におけるカロテノイド摂取量の平均値(標準偏差)は、種類によって1日あたり約21,226.8~28,863.5マイクログラムの幅があり、皮膚カロテノイドスコアの平均値も地域ごとに229.2~325.6の範囲でばらつきが見られました。全体としては、皮膚カロテノイドスコアと自己申告による総カロテノイド摂取量(週あたりのミリグラム量)との間に統計的に有意な関連が確認されました(相関係数0.2、回帰係数0.11、p<0.01)。個別のカロテノイドについても、リコピンを除く4種類(α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ルテイン+ゼアキサンチン)で有意な関連が示され、相関係数は0.15~0.23、回帰係数は0.11~21.1の範囲であったと報告されています(いずれもp<0.01)。一方でリコピンについては、統計的に有意な関連は認められなかったとされています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
研究チームは、これらの結果から、カロテノイド摂取量スクリーナーと反射分光法による皮膚測定を組み合わせることが、成人における個別のカロテノイド摂取量を評価する実用的な手段となりうると述べています。ただし、これは280人・8地域という特定のサンプルを対象にした一つの研究であり、特にリコピンについては皮膚スコアとの関連が確認されなかった点も含め、すべてのカロテノイドについて同じ精度で摂取量を推定できるとは限りません。今回の情報の中には、日本の研究機関や日本の食品・食習慣への言及は含まれていませんでした。この研究結果をもって特定の食品や成分の健康効果が証明されたと解釈するのは適切ではなく、今後さらに異なる集団や条件での検証が積み重ねられることが期待されます。
まとめ
この研究は、皮膚に光を当てるだけで測定できる皮膚カロテノイドスコアが、食事調査票で申告された複数種類のカロテノイド摂取量とどの程度対応するのかを、米国の多様な地域データを用いて検討したものです。総摂取量や大半の個別カロテノイドとは関連が見られた一方、リコピンとは関連が確認されなかった点は、今後の栄養評価手法を考えるうえで留意すべきポイントといえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Saima Hasnin, Susan B. Sisson, Stephanie Jilcott Pitts, et al. Self-Reported Dietary Carotenoid Intake and Skin Carotenoid Score Status in a Geographically Diverse U.S. Sample. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18152515. 原著ライセンス: cc-by.