高血圧や心血管疾患のリスクを高める要因として、食事からの過剰なナトリウム(塩分)摂取が知られています。世界では年間およそ500万人の死亡がこれに関連すると考えられていますが、実際の診療現場では患者が普段どれくらいの塩分を摂っているかを手軽に把握する方法がほとんどありませんでした。今回、アメリカン・ジャーナル・オブ・ハイパーテンションに2026年09月に掲載予定の研究は、外来診療の中で使える簡便な質問票を開発し、実際の患者に試してもらった結果を報告しています。

研究チームは「Brief Office Sodium Screener(BOSS)」と名付けた自己記入式の質問票を考案しました。これは米国の国民健康栄養調査(NHNRT)と米国農務省の食品データベース(Food Data Central)を基に、1食分あたり300mg以上のナトリウムを含む「高ナトリウム食品」を洗い出し、頻度と1回あたりの量を尋ねる30項目にまとめたものです。回答時間は3分程度を想定しており、採点は各食品の1食分あたりのナトリウム含有量の中央値を用いて自動的に行われ、高塩分食品由来の1日あたりの推定ナトリウム摂取量と、摂取量に最も寄与している上位3品目が算出される仕組みです。

研究でわかったこと

2023年9月から2024年8月にかけて、三次医療機関の高血圧専門外来を受診した131人の患者がBOSSに回答しました。参加者の43%が男性、平均年齢は61歳(27〜91歳の範囲)、81%が白人と自己申告した集団です。診察前の受付時間帯にBOSSへの回答と、使いやすさや実感としての正確さについての質問にも答えてもらいました。

高ナトリウム食品からの推定ナトリウム摂取量の中央値は1日あたり1,699mgで、個人差は0〜7,901mgと幅がありました。摂取源として上位に挙がったのは鶏肉料理、パン、パスタ、チーズでした。使いやすさや精度についてフィードバックを寄せた118人のうち、85%が「使いやすい」と回答し、96%が「ある程度」「かなり」「非常に」正確だと感じたと答えています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、BOSSという質問票が外来診療の限られた時間の中でも実施でき、患者自身にも受け入れられやすいものであることを示す一つの検証段階の報告です。対象者は単一の高血圧専門外来を受診した131人にとどまり、81%が白人と自己申告した集団であるなど、対象の偏りがある点には留意が必要です。また、この研究は質問票の使いやすさや実感としての正確さを確認したものであり、実際の摂取量を血液や尿の検査など客観的な指標と比較して精度を検証したものではありません。あくまで一つの研究であり、この質問票が広く一般の診療現場で同様に機能するかどうかは、今後さらなる検証が必要と考えられます。

まとめ

今回の研究は、高血圧診療の現場で患者の塩分摂取傾向を短時間で把握する手がかりとして、BOSSという質問票が実用的で受け入れられやすい可能性を示しました。塩分の摂取源としては鶏肉料理やパン、パスタ、チーズなどが挙げられており、日常的に口にする加工度の高い食品が積み重なって摂取量に影響しうることがうかがえます。今後、より多様な集団での検証が進むことで、外来診療における塩分摂取の評価がどのように役立てられるか、さらに明らかになっていくことが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Siya Bhagat, Laura Harnish, Susan Devaraj, et al. Brief Office Sodium Screener: Assessing Sodium Intake from High Sodium Foods in the Outpatient Setting. アメリカン・ジャーナル・オブ・ハイパーテンション (2026). DOI: 10.1093/ajh/hpag105.