この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Agriculture Environment and Food Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ワインづくりでは、搾ったあとのブドウの皮や種などが「ブドウ粕(ポマース)」として大量に残ります。研究チームは、この副産物をトルコの伝統的なチーズ「イズミル・トゥルム」の熟成に活かせないかを調べました。
イズミル・トゥルムは塩水(ブラインと呼ばれる食塩水)の中で熟成させる、中程度の硬さをもつ全脂チーズです。研究チームによれば、ワインの搾りかすでチーズを熟成させる方法は伝統的に行われてきたものの、研究例は限られており、とくにトゥルムチーズの熟成用の塩水にブドウ粕を使った報告はこれまでなかったといいます。そこで本研究では、ブドウ粕を加えることでチーズの機能性(総フェノール量と抗酸化活性)がどう変わるかを検証しました。
調べ方
著者らは牛乳からイズミル・トゥルムチーズをつくり、4つのグループに分けて熟成させました。白ワイン用ブドウ(スルタニエ種)の粕を使ったもの(W)、赤ワイン用ブドウ(プティ・ヴェルド種)の粕を使ったもの(R)、その両方を1対1で混ぜたもの(RW)、そしてブドウ粕を使わない対照群(C)です。ブドウ粕を煮出して冷ました液で食塩12%の塩水を用意し、5kg入りの缶に詰めて4℃で180日間熟成させました。
熟成1日目、30日目、60日目、90日目、180日目に、pHや酸度、乾物・脂肪・タンパク質の量といった基本的な成分に加え、抗酸化活性(DPPH法とCUPRAC法という2種類の測定法)、総フェノール量、食感、色を測定しました。フェノール化合物とは野菜や果物に自然に含まれる成分で、食品の味や香り、色に関わるものです。官能評価は訓練を受けた15名のパネリストが、熟成1日目、90日目、180日目に実施しました。
報告された主な結果
熟成が進むにつれてpHは下がり、滴定酸度は上昇し、その変化は統計的に有意でした。一方、乾物・脂肪・タンパク質の含量については、グループ間で統計的な差は認められなかったと報告されています。塩分量も試料間でほぼ一定で、ブドウ粕の影響は見られませんでした。
抗酸化活性については、DPPH法で測ると、RW(赤白混合)の試料が1日目と180日目の両方で最も高い値を示しました。もう一方のCUPRAC法では、赤ワイン粕を使ったR試料が最も高く、180日目に21.08 mg Trolox/gに達しました。総フェノール量はR試料で526.25 mg GAE/100 gと高く、熟成期間中を通じて増加する傾向が見られました。対照群のフェノール量は一貫して低い値にとどまりました。
食感は、ブドウ粕の種類と熟成期間の両方の影響を受けました。硬さは熟成とともに低下し、著者らは硬さと総フェノール量のあいだに負の相関(r = −0.611)を認めています。ただしこれは両者が同時に変化したという関連であり、一方が他方を引き起こしたという因果関係を示すものではありません。色については、赤ワイン粕を含むRWとRでa*値(赤み)が正の値となり、ブドウ粕の色素が移ったためと考えられると述べられています。
官能評価では、全体としては対照群が食感・味・香り・総合的な好ましさで最も好まれ、ブドウ粕を使った試料はそれに近いものの、やや低い評価でした。ただし個別の項目では、味ではW、食感ではRW、香りではRがそれぞれ最も好まれています。苦味は検出されませんでした。
この研究が示すこと
研究チームは、ブドウ粕を使った熟成がイズミル・トゥルムチーズの抗酸化活性と総フェノール量を高め、保存中も受け入れられる官能品質を保っていたと結論づけています。
ワイン産業から出る副産物を捨てずにチーズづくりに活かすというこの試みは、伝統的なチーズ製造に新しい視点を持ち込むとともに、食にまつわる資源を無駄なく使う方法のひとつの実例として位置づけられています。
著者:Aysun ATALAY(EGE ÜNİVERSİTESİ, ZİRAAT FAKÜLTESİ, SÜT TEKNOLOJİSİ BÖLÜMÜ, SÜT TEKNOLOJİSİ ANABİLİM DALI)、Filiz YILDIZ-AKGÜL(AYDIN ADNAN MENDERES ÜNİVERSİTESİ, ZİRAAT FAKÜLTESİ, SÜT TEKNOLOJİSİ BÖLÜMÜ)、Özer Kınık(EGE ÜNİVERSİTESİ, ZİRAAT FAKÜLTESİ, SÜT TEKNOLOJİSİ BÖLÜMÜ)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aysun ATALAY, Filiz YILDIZ-AKGÜL, Özer Kınık. Evaluation of wine production by-products in dairy: physicochemical, antioxidant, textural, and sensory properties of İzmir Tulum cheese ripened with grape pomace. International Journal of Agriculture Environment and Food Sciences 2026-09-03. DOI: 10.31015/jaefs.2026.3.7. 原著ライセンス:CC BY.