この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Food Measurement & Characterization

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コンブチャは、甘みを加えた緑茶や紅茶を、細菌と酵母が共生した培養体(SCOBY と呼ばれます)で発酵させて作る飲み物です。発酵中、酵母が糖をアルコールに変え、酢酸菌がそのアルコールを酢酸に変えるため、飲料は酸っぱくなり pH が下がります。近年は世界的に市場が広がり、風味づけをした製品が人気を集めていると論文は述べています。

研究チームが注目したのは、砂糖(ショ糖)の代わりに別の原料を使うとコンブチャがどう変わるか、という点です。取り上げたのはサトウキビ果汁と「カカオハニー」の二つでした。サトウキビ果汁は糖のほかに有機酸、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、ポリフェノールなどを含みます。カカオハニーはカカオの加工過程で出る副産物で、糖や食物繊維、ビタミン、有機酸、フェノール化合物を含む一方、適切に処理されないと土壌汚染や悪臭の原因になるため、有効活用の道を探ることには環境面の意味もあると説明されています。

ただし、複数の代替原料を組み合わせた場合の影響を扱った研究はまだ少ないとされます。そこで著者らは、サトウキビ果汁、カカオハニー、およびその組み合わせが発酵にどう影響するかを、従来のショ糖ベースの作り方と比べて評価することを目的としました。

何を、どう調べたか

実験では緑茶の浸出液を土台に、4通りの仕込み(T1〜T4)を用意しました。T1 は糖度15度に調整したサトウキビ果汁を多く使い、T2 は同じ果汁を糖度5度と薄めに使います。T3 と T4 はショ糖を使う従来型です。一次発酵を168時間おこなったあと、T1・T2・T3 にはカカオハニーを加え、T4 にはショ糖を加えて72時間の二次発酵をおこないました。合計240時間で、T4 が比較対照(コントロール)にあたります。発酵はいずれも25度前後で、3回ずつ繰り返して実施されました。

測定したのは、pH、酸の量(滴定酸度)、糖などの溶けている成分の量(可溶性固形分、単位は°Brix)、色、総フェノール量、抗酸化活性、そして有機酸とエタノールの濃度です。抗酸化活性については性質の異なる二つの方法(リンモリブデン錯体法と ABTS 法)を併用しました。さらに、香りのもとになる揮発性化合物をガスクロマトグラフィー質量分析で調べています。データは分散分析で比較され、揮発性成分の分布は主成分分析で整理されました。

報告された主な結果

著者らの報告によると、発酵が進むにつれてどの仕込みでも可溶性固形分が減り、酸度が上がり、pH が下がりました。減少の度合いはサトウキビ果汁を使った T1・T2 のほうがショ糖の T3・T4 より大きかったとされます。240時間後の pH は 2.98〜3.15 の範囲で、ブラジルの基準が示す安全な範囲(2.5〜4.2)に収まっていたと報告されています。

有機酸では酢酸が最も多く、最高値は T1(168時間で7.99 g/L、240時間で7.94 g/L)でした。乳酸も T1 で最も高く(168時間で4.86 g/L)、コハク酸も同様に T1 が最高でした。著者らは、サトウキビ果汁には単糖のほかにミネラル、ビタミン、アミノ酸が含まれ、微生物の活動を後押しするのに対し、ショ糖は栄養面で乏しいことが差の背景にあると説明しています。

アルコール分にも差が出ました。240時間後、T3 は0.29%、T4 は0.20%と低く、ブラジルの規定でノンアルコール飲料とされる0.5%未満に収まりました。一方、T1 は1.99%、T2 は1.08%で、規定上はアルコール入りのコンブチャに分類される水準だったと報告されています。

抗酸化に関わる結果は原料によって様子が異なりました。発酵開始時の総フェノール量は T1 が最も高く(720.87 mg GAE/100 mL)、これはサトウキビ果汁由来のポリフェノールの寄与とされています。168時間の時点では T2 が最高値(1,099.13 mg GAE/100 mL)に達しました。ところが240時間後にはすべての仕込みで総フェノール量が下がり、T1 の落ち込みが最も大きく(354.57 mg GAE/100 mL)、対照の T4 が最も高い値(913.26 mg GAE/100 mL)を保ちました。ABTS 法でも同じ向きの傾向がみられ、T1 は最終的に15.65%まで下がった一方、T3 と T4 は94%台を維持しています。著者らは、糖の濃度が高い T1 では微生物の代謝が活発になり、フェノール化合物の分解が進んで抗酸化力の低い物質へ変化した可能性を挙げ、糖濃度が低い T2 のほうが代謝のバランスが取れて成分が保たれやすかったと考察しています。なお、これらは発酵液の化学的な測定であり、人での効果を調べたものではありません。

香りの成分としては、初期段階と最終飲料をあわせて91種類の揮発性化合物が検出され、エステル類、アルコール類、酸類が多くを占めました。最終飲料で最も多いアルコールはフェニルエチルアルコールで、エステル類の量は T1 が最も多く、次いで T2 でした。主成分分析では、発酵後の T1・T2 がエステル・アルコール・アルデヒドと、T3・T4 がラクトンやフェノール、酸、テルペノイドなどと結びつく形に分かれています。

この研究が示すこと

この研究が伝えているのは、コンブチャに何を加えるかという選択が、酸味やアルコール分、香りの成分、そして抗酸化に関わる指標を同時に、しかも必ずしも同じ方向へではなく動かすということです。サトウキビ果汁を多く使うと有機酸や香りのエステルは増えましたが、アルコール分は上がり、フェノール量と抗酸化活性は最終的に低下しました。

著者らの結果は、原料を変えれば「よくなる」という単純な話ではなく、狙う性質に応じて原料と濃度を選ぶ必要があることを示しています。同時に、カカオ加工の副産物であるカカオハニーを飲料づくりに使う道を検討した点は、廃棄物を減らす取り組みとも重なるものです。

著者:Sandy Rodrigues Dias(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Gabriela Fonsêca Leal(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Ana Paula Pereira Bressani(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Gabriela de Fátima Ribeiro(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Suzana da Silva Moreira、Sthefania Ferreira Vilela(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Énio Lúcio Mussa José(Department of Food Science, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Rosane Freitas Schwan(Department of Biology, Federal University of Lavras, Lavras, Brazil)、Eduardo Valério de Barros Vilas Boas

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sandy Rodrigues Dias, Gabriela Fonsêca Leal, Ana Paula Pereira Bressani, et al. Enhancing kombucha composition: Effects of sugarcane juice and cocoa honey on antioxidant properties, physicochemical, and chemical profile. Journal of Food Measurement & Characterization 2026-08-26. DOI: 10.1007/s11694-026-04831-8. 原著ライセンス:CC BY.