この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Agriculture Environment and Food Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
トルコ・トカット地方で栽培される「ナリンジェ(Narince)」は、同国原産の白ブドウ品種です。生食用としても使われますが、とりわけ白ワインの原料として重要な位置を占めており、他のアナトリア原産品種とのブレンドにも用いられています。
ブドウ栽培では、19世紀半ば以降、根に深刻な被害を与える害虫フィロキセラへの対策として、別の種の根(台木)に栽培したい品種の枝(穂木)を接ぎ木する方法が一般的になりました。台木は害虫への抵抗性だけでなく、水分や養分を穂木へ送る能力の違いを通じて、果実の収量や品質にも影響すると考えられています。
著者らは、ナリンジェのように白ワイン生産上重要でありながら台木との組み合わせに関する研究が限られている品種に注目し、4種類の台木(110R、140Ru、41B、5BB)がナリンジェの果実特性にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としました。
調査の方法
調査はナリンジェが集中的に栽培されるトカット県タシュルチフトリキの試験ほ場で、2020年と2021年の2つの収穫期にわたって行われました。この畑は2013年6月に植え付けられ、4種類の台木に接ぎ木したナリンジェが栽培されています。剪定は2月下旬に行い、収穫は9月中旬でした。試験は3反復の乱塊法で設計され、各反復は15本の樹から構成されています。
収穫は、果粒の可溶性固形分が18°Brixを超え、pHが3.5を上回った時点で実施されました。各区から代表的な果房を10房採取し、果粒の物理的・化学的・生化学的な特性を測定しています。
測定項目は大きく三つに分かれます。物理的特性としては、果房の重さ・幅・長さ、果粒の重さ・幅・長さ、そしてデジタル硬度計による果肉の硬さを調べました。化学的特性としては、屈折計による可溶性固形分含量(果汁中に溶けている糖などの量の目安)、水酸化ナトリウム溶液を用いた滴定酸度、pHを測定しています。生化学的特性としては、フォリン・チオカルトー試薬を用いた総フェノール量と、ABTS法による総抗酸化能を測定しました。得られたデータは、年次と台木の2要因について分散分析を行い、平均値の比較にはダンカンの多重比較検定を用いています。
主な報告結果
物理的な特性では、41B台木に接ぎ木したナリンジェがすべての項目で最も高い値を示したと著者らは報告しています。果房幅と果粒硬度については140Ru台木の組み合わせが高い値を示し、5BBの組み合わせも果房幅と果粒硬度で高い値となりました。一方110R台木の組み合わせは、硬度を除く項目で他の組み合わせより低い値にとどまりました。年による違いも大きく、100粒重は2020年が257.68 gで最も高かったのに対し、果房の幅・長さ、果粒の幅・長さ、果粒硬度はいずれも2021年で最高値が得られています。
化学的な特性では、5BBに接ぎ木したナリンジェで可溶性固形分(21.38 °Brix)とpH(3.90)が最も高く、滴定酸度は41Bとの組み合わせで最も高い値(0.78 g/L)となりました。年次で見ると、2020年はpHと滴定酸度が高く、可溶性固形分の最高値は2021年に得られています。糖と酸の比として表される成熟指数については、2020年は140Ru、110R、5BBに接ぎ木したもので、2021年は140Ruと5BBに接ぎ木したもので高い値が得られました。著者らは、この成熟指数の値が同地域での過去の研究結果と一致していると述べています。
生化学的な特性では、総フェノール量が5BB台木の組み合わせで最も高く(2818.6 μg GAE g⁻¹ fw)、41Bとの組み合わせで最も低い値(2228.6 μg GAE g⁻¹ fw)でした。総抗酸化能については、台木の平均値どうしの差は統計的に有意ではありませんでした。ただし2年を分けて見ると、総フェノール量(2920.1 μg GAE g⁻¹ fw)と総抗酸化能(8.55 μmol TE g⁻¹ fw)のいずれも2021年のほうが高い値を示しています。
この研究が示すこと
著者らは結論として、ナリンジェにおいて物理的特性では41B台木、化学的特性では140Ruと5BB台木、生化学的特性では5BB台木に接ぎ木した場合の値が統計的に有意であったとまとめています。つまり、一つの台木がすべての面で優れているというより、着目する特性によって好ましい台木が異なるという結果です。
同時に、測定したほとんどの項目で年次による差が現れており、台木と品種の関係だけでなく、その土地の生態条件や気候要因も収量と品質に関わっていることがうかがえます。地域の在来品種をどの台木と組み合わせるかという判断を、実際の栽培地で得られたデータに基づいて考えるための一つの手がかりを、この研究は提供しています。
著者:Seda Sucu(TOKAT GAZİOSMANPAŞA ÜNİVERSİTESİ)、Neval Topçu Altıncı(TOKAT GAZİOSMANPAŞA ÜNİVERSİTESİ)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Seda Sucu, Neval Topçu Altıncı. Yield and fruit quality evaluation of 'Narince' grapes (Vitis vinifera cv. Narince) grafted on four different rootstocks. International Journal of Agriculture Environment and Food Sciences 2026-08-31. DOI: 10.31015/jaefs.2026.3.8. 原著ライセンス:CC BY.