この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Australian and New Zealand Journal of Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

妊娠中に血糖値が高くなる状態(妊娠糖尿病や、妊娠前からの2型糖尿病)は、母体だけでなく生まれてくる子どもの健康にも影響しうることが知られています。では、そうした女性が妊娠中にどのような食事をとっていたかは、子どもがその後どのように成長するかと関係しているのでしょうか。オーストラリアで行われた「PANDORAコホート研究」は、この問いを検証したものです。研究には、Menzies School of Health Research(メンジーズ健康研究所)やMonash University(モナシュ大学)、Baker Heart and Diabetes Institute(ベイカー心臓・糖尿病研究所)などオーストラリアの研究機関に所属する研究者らが携わっています。

どのように調べたのか

対象となったのは、妊娠中に高血糖であった女性224名です。内訳は妊娠糖尿病が168名、妊娠前から2型糖尿病であった女性が56名でした。また全体の58%は、オーストラリアの先住民(ファーストネーションズ)の女性でした。これらの女性には、妊娠後期(妊娠第3三半期)に食物摂取頻度調査票(何をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねる調査)が実施されました。

その後、生まれた子どもについて、中央値2.7歳(範囲1.5〜5.0歳)の時点で身体計測が行われました。測定されたのは、体格指数(BMI)、腹囲(ウエスト周囲径)、上腕周囲径、そして皮下脂肪厚(皮膚をつまんで測る脂肪の厚さ)です。研究チームは、母体の食事と子どもの身体計測値との関連を、多変量線形回帰という統計手法を使って調べました。その際、子どもの年齢・性別、母親の糖尿病の種類、母親のBMI、民族的背景、社会経済的な要因、出生時体重、母乳育児の有無といった要因の影響を差し引いたうえで分析しています。

わかったこと

分析の結果、母親のファストフード摂取頻度が週2回以上であった場合(週1回以下の場合と比較して)、子どものBMIが高いこと(β係数0.6kg/m²、p=0.03)、腹囲が大きいこと(β係数2.2cm、p<0.01)、上腕周囲径が大きいこと(β係数0.7cm、p<0.01)、皮下脂肪厚の合計が大きいこと(β係数4.0mm、p<0.01)と、それぞれ関連していることが示されました。

一方で、砂糖入り飲料の摂取や、果物・野菜の摂取量については、子どもの身体計測値との関連は見られなかったと報告されています。

この研究をどう受け止めるか

著者らは、女性とその家族が健康的な食生活を維持できるよう支える要因に取り組むことが、子どもの身体計測アウトカムを改善するうえで重要である可能性が高いと述べています。また公衆衛生上の示唆として、妊娠中の食生活パターンを変えるためには、食環境に焦点を当てたシステムレベルの変化が不可欠であるとしています。

この研究は、妊娠中に高血糖であった女性とその子どもという特定の集団を対象とした一つのコホート研究であり、示された関連は因果関係を証明するものではありません。食事内容は自己申告に基づく調査票によって把握されている点にも留意が必要です。特定の食品を子どもの体格を左右する原因と断定するものではなく、あくまで一つの研究として位置づけられるものです。

まとめ

本研究は、妊娠中に高血糖であった女性のファストフード摂取頻度が高いことと、その後の子どもの体格指数・腹囲・上腕周囲径・皮下脂肪厚が大きいこととの関連を報告したものです。一方、砂糖入り飲料や果物・野菜の摂取との明確な関連は認められませんでした。著者らは、妊娠中の食生活を支えるための社会的・環境的な取り組みの重要性を指摘しています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):妊娠中高血糖女性の母体栄養と小児期の身体計測値との関連:PANDORAコホート研究(オーストラリアン・アンド・ニュージーランド・ジャーナル・オブ・パブリックヘルス・2026年08月)

著者:Anna Wood(Menzies School of Health Research, Charles Darwin University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Julie Brimblecombe(Menzies School of Health Research, Charles Darwin University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Anna Traill(Menzies School of Health Research, Charles Darwin University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Emma Tonkin(Monash University, Melbourne, Victoria, Australia)、Jacqueline A. Boyle(Eastern Health Clinical School, Monash University, Victoria, Australia)、Jonathan E. Shaw(Baker Heart and Diabetes Institute, Melbourne, Victoria, Australia)、Alex Brown(Australian National University, Canberra, Australian Capital Territory, Australia)、Federica Barzi(Poche Centre for Indigenous Health, Brisbane, Queensland, Australia)、Angela Titmuss(Menzies School of Health Research, Charles Darwin University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Sian Graham(Flinders University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Louise J. Maple-Brown(Menzies School of Health Research, Charles Darwin University, Darwin, Northern Territory, Australia)、Elizabeth Barr(Baker Heart and Diabetes Institute, Melbourne, Victoria, Australia)