豆類は植物性タンパク質の重要な供給源ですが、豆に含まれるタンニンやフィチン酸といった成分が、ミネラルの吸収やタンパク質の消化を妨げる場合があることが知られています。こうした課題に対して、発酵という昔ながらの加工方法が、栄養価や機能性を高める手段として注目されてきました。今回紹介する研究は、黒緑豆(ブラックグラム、学名:Vigna mungo)を対象に、カビの一種であるAspergillus awamoriを使った固体発酵(原料に直接カビを生やして発酵させる方法)が、豆粉の栄養面・機能面にどのような変化をもたらすかを調べたものです。さらに、発酵させた豆粉を小麦粉に混ぜた「複合粉」としての活用可能性についても検討されています。
研究では、黒緑豆を0日から12日間にわたって発酵させ、その過程での変化を追跡しています。その結果、栄養や機能性の観点から最も良好な結果が得られたのが「発酵6日目」のサンプルであり、これが以降の複合粉づくりのための素材として選ばれました。
具体的には、発酵によってタンニンとフィチン酸の含有量が減少したと報告されています。これらは消化やミネラル吸収を妨げうる成分とされているため、この減少は望ましい変化と位置づけられています。一方で、抗酸化に関わるとされる総フェノール含量は2.69から3.37 mg GAE/g、総フラボノイド含量は0.83から1.65 mg QE/gへ、DPPHラジカル消去活性(抗酸化力を評価する指標の一つ)は2.13から4.09 mg AAE/gへと、発酵6日目までにいずれも増加したことが示されています。
タンパク質含量についても、24.14%から27.11%へ増加したとされ、消化のされやすさを示す「in vitroタンパク質消化率」も70.86%から82.89%へ改善したと報告されています。総アミノ酸含量も発酵6日目までは88.71から98.24 g/100 gタンパク質へ増加しましたが、それ以降さらに発酵を続けると減少に転じたとされています。加えて、鉄・亜鉛・カルシウムといったミネラルの含有量も発酵によって向上したことが述べられています。
さらに、この6日発酵させた黒緑豆粉を小麦粉に配合した複合粉についても検討されており、タンパク質や粗繊維の含量、保水力・保油力、そしてin vitroタンパク質消化率が、配合によって高まったことが報告されています。これらの結果から、A. awamoriによる固体発酵は黒緑豆の栄養・機能的な質を改善し、タンパク質を豊富に含む素材として、穀物と豆類を組み合わせた強化複合粉の開発に活用できる可能性が示唆されています。
この研究を読むうえでの注意点
この研究はあくまで一つの実験室レベルでの検討であり、黒緑豆や発酵食品を摂取することで健康効果が得られると断定するものではありません。ここで報告されているのは、特定の発酵条件下における豆粉の成分や機能特性の変化であり、実際の食品としての利用や、ヒトが摂取した場合の効果については、今後さらなる研究が必要と考えられます。また、発酵期間が長すぎるとアミノ酸含量が減少する傾向も示されており、発酵条件の最適化が重要であることもうかがえます。
まとめ
今回紹介した研究では、黒緑豆をAspergillus awamoriで固体発酵させることで、タンニンやフィチン酸が減少する一方、フェノール類やフラボノイド、抗酸化活性、タンパク質含量、タンパク質消化性、ミネラル含量などが向上したと報告されています。特に発酵6日目のサンプルは、小麦粉との複合粉としての活用にも適した特性を示したとされ、豆類を用いた栄養強化食品の開発における一つの知見として位置づけられます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:黒緑豆の固体発酵:複合粉用途におけるタンパク質消化性と機能特性の改善(フーズ・2026年07月)