著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、中国の「農業グリーン化総合試行政策(GACP)」が化学肥料の使用削減につながっているか、また、どのような仕組みを通じて削減を促すのかを調べました。この政策は2017年末に始まり、技術、基準、管理、産業、政策、デジタル基盤を組み合わせて、農業の環境負荷を減らすことを目指しています。
著者らは、こうした包括的な支援による肥料削減の効果や仕組みは十分に明らかになっていないとし、地域による違いと、穀物生産への影響も検討しました。
何を、どのように調べたか
対象は、中国中部・東部の8省にある106の地級市です。研究チームは、統計年鑑などから2000~2022年の都市別データを集め、計2,323件の観測データを分析しました。試行対象となった都市と対象外の都市について、政策導入前後の肥料使用の変化を比較しました。
主に調べたのは、作物の作付面積当たりの肥料使用量です。分析では、農業労働力、灌漑、農業への財政支援、経済水準、気象条件などを考慮し、都市ごとの特徴や各年に共通する変動も調整しました。耕地面積当たりの使用量や使用総量を使った確認に加え、肥料の種類別の変化、削減に関わる仕組み、穀物の総生産量と単位面積当たりの収量、作付面積に占める穀物の割合も調べました。
主な報告結果
研究チームは、対象外の都市との比較などを踏まえ、政策導入によって試行都市の作付面積当たりの肥料使用量が9.9%減少したと報告しました。導入後の年別分析では、削減効果はいったん強まった後に弱まったものの、観察期間の終わりまで続いていました。
削減に関わる仕組みの分析では、農作業などの専門分業が最も大きく寄与し、次いで技術進歩が寄与したと著者らは報告しています。経営規模の拡大や、農業と加工・サービスなどの産業との結び付きも、削減に関わる経路として示されました。
効果は一様ではありませんでした。肥料使用量がもともと中~高水準の地域ほど削減効果が強く、低水準の地域では削減が見られず、使用量が増える場合もありました。肥料の種類別では、窒素肥料とリン酸肥料の使用が減る一方、複数の肥料成分を含む複合肥料の使用が増えたと報告されています。
穀物の総生産量については、政策による統計的に有意な変化は確認されませんでした。ただし、穀物の主要生産地域ではない地域では、単位面積当たりの穀物収量が5.1%低下したと報告されました。また、全体では作付面積に占める穀物の割合も低下し、その変化は主に主要生産地域以外で生じていました。
この報告が示すこと
著者らは、肥料削減を単独の規制だけで進めるのではなく、技術や農業経営の仕組み、産業間の連携を組み合わせて支えることに意味があると結論付けています。一方、肥料が減ったことだけで政策を評価せず、地域ごとの施肥状況や穀物生産の役割に応じて、削減と生産維持の両立を考える必要があるとしています。
研究の対象は中部・東部の都市に限られ、結論が主に当てはまる範囲もこの地域です。また、都市単位の統計の制約から、肥料の利用効率、作物別・施肥時期別の違いは十分に扱っていません。農家のデータも不足しており、政策が個々の農家の行動をどう変えたかは直接検証できていないと著者らは述べています。
原著論文の著者・所属:Yong Lan(College of Business, Hunan Agricultural University)、Min Jiang(College of Business, Hunan Agricultural University)、Xianxiong Xie(Economic College, Hunan Agricultural University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yong Lan, Min Jiang, Xianxiong Xie. Beyond single regulation: how does green agriculture comprehensive pilot achieve fertilizer reduction? Evidence from China. Frontiers in Sustainable Food Systems(出版社:Frontiers Media) 2026-11-03. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1970284. 原著ライセンス:CC BY.