著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュです。

掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や腹部の不快感が便通の変化と結びついて起こり、症状を説明する腸の構造的な異常が見つからない病気です。研究チームは、患者の人数を数えるだけでなく、どのような心理・社会的要因や生活習慣が、IBSの診断基準に当てはまる医学生と関連しているかを調べました。バングラデシュ北部では、こうした要因の関連の大きさに焦点を当てた研究が限られていたことが背景にあります。

何を、どのように調べたか

研究チームは2019年12月から2020年5月に、ランプル医科大学の18~27歳の学生500人を対象に、決められた質問に沿って面接する横断調査を行いました。対象者は無作為抽出ではなく、参加条件を満たす学生から選ばれました。消化器の器質的な病気や手術歴、原因不明の体重減少、貧血、血便などを申告した学生は除外されました。

IBSの判定には、繰り返す腹痛・不快感と、排便による症状の改善や便の回数・形の変化を組み合わせた「Rome III」という診断基準を用いました。ストレスの有無、親・きょうだい・子にIBSに似た症状があるか、自宅か学生寮かという居住場所、普段の食事の入手先、定期的な運動、現在の喫煙、非ステロイド性抗炎症薬の使用を尋ねました。身長と体重から体格指数(BMI)も算出しました。

ストレスは本人が「ある・ない」で答える方式で、点数化された心理尺度は使っていません。研究チームは、それぞれの項目についてIBSに該当する割合などを比較しました。複数の要因を同時に考慮する調整は行っていません。

主な報告結果

論文によると、500人中105人、21.0%がIBSの診断基準に該当しました。調べた項目のうち、IBSとの関連が特に大きかったのは、自己申告のストレスと家族の症状歴でした。

ストレスがあると答えた120人では84人(70.0%)がIBSに該当し、ストレスがないと答えた380人では21人(5.5%)でした。両群の割合の差は64.5パーセントポイントでした。また、家族にIBSに似た症状があると答えた77人では56人(72.7%)、そうした家族歴がない423人では49人(11.6%)が該当し、差は61.1パーセントポイントでした。

生活に関する項目では、学生寮に住む388人中90人(23.2%)がIBSに該当したのに対し、自宅に住む112人では15人(13.4%)で、寮生活との統計的に有意な関連が報告されました。一方、普段の食事が家庭料理・寮の食堂・飲食店のいずれかという違い、定期的な運動、現在の喫煙、非ステロイド性抗炎症薬の使用、BMIについては、統計的に有意な関連は認められませんでした。

この報告が示すこと

著者らは、この大学でIBSのある学生を把握する際には、食事の入手先や喫煙などを尋ねるだけでなく、現在のストレスや家族の腸の症状を尋ねることが重要な手掛かりになると結論づけています。

ただし、これは一つの大学で、無作為抽出によらず行われた質問調査であり、結果をバングラデシュの医学生全体に当てはめることはできません。ストレスと家族歴は自己申告で、ストレスの評価に検証済みの心理尺度は使われていません。また著者らは、腹痛があるために生活をストレスフルだと感じやすくなる可能性と、その逆の順序の両方に言及しています。この報告が示すのは、ストレスや家族の症状歴がIBSと強く結びついていたということであり、原因となる順序を確定したものではありません。

原著論文の著者・所属:Ahmed, Sultana Ashrafi(Assistant Professor, Department of Nephrology. Rangpur Medical College Hospital, Rangpur, Bangladesh)、Ali, Raihan(Resident Surgeon, Department of Orthopaedics & Traumatology, Rangpur Medical College Hospital, Rangpur, Bangladesh)、Begum, Julekha(Assistant Professor, Department of Medicine, Sylhet MAG Osmani Medical College & Hospital, Sylhet, Bangladesh)、Hossen, Mokaddem(Assistant Professor, Department of Anesthesiology, Sunamganj Medical College, Sunamganj, Bangladesh)、Banik, Sumon Kumar(Medical Officer, Department of Nephrology, Rangpur Medical College Hospital, Rangpur, Bangladesh)、Hosen, Jakir(Assistant Professor, Department of Nephrology, Rangpur Medical college, Rangpur, Bangladesh)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ahmed, Sultana Ashrafi, Ali, Raihan, Begum, Julekha, et al. Psychosocial and Lifestyle Determinants of Irritable Bowel Syndrome Among Medical Students: A Cross-sectional Analytical Study from Northern Bangladesh. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-11-03. DOI: 10.5281/zenodo.23919006. 原著ライセンス:CC BY.