著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:PLAKAT Jurnal Pelayanan Kepada Masyarakat

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

空いた庭先を家族の食卓につなげる

家族が毎日必要な栄養を安定して得られる状態は「世帯の食料安全保障」と呼ばれます。住宅が密集する都市部では、庭が狭いうえに生活費も上がっており、この状態を保つことは簡単ではありません。著者らは、インドネシア東カリマンタン州サマリンダ市スンパジャ・ウタラ地区の町内単位「RT 28」で、住民の女性グループと一緒に庭先を家庭菜園に変える地域貢献活動を行い、その経過と成果を報告しました。

対象は「ダサ・ウィスマ」と呼ばれる、最小の行政単位で活動する世帯ベースの女性グループです。著者らによると、この地域では多くのメンバー世帯に庭がありましたが、ほとんど使われておらず、庭で食べ物を育てるための計画もありませんでした。活動の目的は、メンバーの食料安全保障への理解を深めること、庭を野菜づくりに生かすこと、家庭での生産活動への参加を強めること、そして継続できる家庭菜園の計画づくりを支えることでした。

著者らは、園芸技術を教えるだけでは足りず、グループ自身が力をつけ、参加し、「自分たちの活動だ」と感じられる過程が必要だと考えました。また、成果の報告にとどまらず、その成果を生んだ過程を記録することを重視しています。

6段階で進めた参加型の取り組み

活動は2026年5月から8月までの4か月間、6つの段階で進められました。最初はニーズの把握です。チームが現地で庭の状態を確かめ、グループの役員と話し合い、課題や使える土地、育てたい植物を整理しました。次の計画づくりでは、メンバー同士で植える場所や品種、作業の分担、栽培の日程を決めました。

続いて、食料安全保障の考え方を学ぶ講習と、栽培の実習が行われました。実習では、ポリ袋製の栽培袋(ポリバッグ)や使い古した車のタイヤを鉢として使い、費用をかけずに育てる方法を学びました。狭く形も不ぞろいな住宅地の庭に合う方法として選ばれたものです。メンバーは、唐辛子、ネギ、ケール、そのほかの葉物野菜など、早く育ち日常的に使う野菜を育てることに決めました。毎日の手入れは、各栽培場所の近くに住む世帯が交代で担当しました。

7月に土づくりと植え付けを行い、共同の菜園を立ち上げました。7月から8月にかけては、大学関係の支援者やボランティアが定期的に訪れ、水やりの頻度や害虫被害の早期発見、困りごとの解決を手伝いました。評価は、数値の測定ではなく、現地での観察、グループでの話し合い、出席記録、活動前後の庭の写真などに基づく質的な方法で行われています。

知識・技能・参加・庭の様子に変化

著者らは、活動の前後を「知識」「技能」「参加」「庭の環境」の4つの面で比べました。活動前のメンバーは、食料安全保障や庭の役割についての理解が限られていました。活動後は、庭を活用することが家族の食料を守る方法の一つだと理解するようになったと報告されています。技能の面では、実際に庭で栽培した経験がほとんどなかった状態から、栽培袋や古タイヤを使って自分たちで野菜を育てられるようになりました。

参加の面では、それまで庭での食べ物づくりはあっても個人がたまに行う程度でした。活動後は「ゴトン・ロヨン」と呼ばれる助け合いの精神のもと、グループで一緒に取り組むようになりました。環境の面では、むき出しのまま使われていなかった庭が、安価な栽培資材による家族の菜園へと姿を変えました。

メンバーからは、共同の菜園を通じて日々の交流が深まったという声や、いくつかの世帯で野菜や香辛料にかける日々の出費が減ったという声も寄せられました。また、一度きりの講習ではなく支援者が継続して関わったことが、意欲や自信を保ち、自分たちで菜園を管理するうえで大きかったとも報告されています。

「何を植えるか」より「どう進めるか」

著者らは、これらの成果は苗や資材の提供だけで得られたのではなく、主に段階を踏んだ参加型の過程によってもたらされたと考えています。そして、家庭菜園の取り組みが続くかどうかは、何を植えるかだけでなく、その過程をどう支えるかにかかっていると論じています。一方で、菜園の手入れが女性メンバーに時間と労力の負担をかける点には、引き続き注意が必要だとも指摘しています。

著者らは、今後の同様の取り組みでは、見守りの期間を長くとり、食費の変化や食事の多様さといった世帯ごとの成果をより体系的に記録することを勧めています。この報告は、身近な女性グループが庭先という限られた空間を生かし、助け合いながら家族の食を支えていく過程を具体的に示した事例です。

原著論文の著者・所属:Jamiah(Universitas 17 Agustus 1945 Samarinda)、Diana(Universitas 17 Agustus 1945 Samarinda)、Maya Preva Biantary(Universitas 17 Agustus 1945 Samarinda)、Salasiah(Universitas 17 Agustus 1945 Samarinda)、Wulan Sari(Universitas 17 Agustus 1945 Samarinda)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jamiah, Diana, Maya Preva Biantary, Salasiah, Wulan Sari Strengthening Dasa Wisma Productivity through Home Garden Utilisation to Support Household Food Security. PLAKAT Jurnal Pelayanan Kepada Masyarakat 2026-10-13. DOI: 10.30872/plakat.v8i2.29155. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。