著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。

掲載誌:British Journal of Contemporary Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

輸入小麦への依存を減らすために

パンやクッキーなどの焼き菓子には、世界的に小麦粉が使われています。論文によると、ナイジェリアのような国では小麦の多くを輸入に頼っており、2010年だけで約6350億ナイラ(約42億ドル)を小麦の輸入に費やしたとされます。著者らは、この依存が地元のクッキーや菓子づくりにとって費用と供給の両面で大きな制約になっていると述べています。

そこで注目されたのが、地元で手に入るキャッサバと大豆です。キャッサバは熱帯で広く栽培される炭水化物の豊富な作物ですが、収穫後24〜72時間ほどで傷みやすいという弱点があり、粉にすることで保存しやすくなります。大豆は手頃な価格で質の高いたんぱく質を得られる食材です。研究チームは、この二つの粉を小麦粉の一部の代わりに使うことを想定し、混ぜた粉が加熱されたときにどのようにふるまうかを調べました。

六つの配合で「糊化特性」を測定

研究チームは、小麦粉、キャッサバ粉、大豆粉を六通りの割合で混ぜました。三つは小麦粉を50%に固定し、キャッサバ粉を45%・40%・35%と減らしながら大豆粉を5%・10%・15%と増やした配合です。残りの三つはキャッサバ粉を50%に固定し、小麦粉を45%・40%・35%と減らしながら大豆粉を同じように増やした配合です。

調べたのは「糊化特性(ペースティング特性)」と呼ばれる性質です。粉と水を混ぜて加熱すると、でんぷんの粒が水を吸って膨らみ、のり状になって粘りが出ます。その後、加熱を続けたり冷ましたりすると粘りがさらに変化します。この一連の粘りの変化を、ラピッド・ビスコ・アナライザーという装置で記録しました。試料は50℃から95℃まで加熱して一定時間保ち、再び50℃まで冷やす温度の流れにかけられました。

装置は、加熱中に最も粘りが高くなったときの値(ピーク粘度)、加熱を続けて粘りが最も下がったときの値(トラフ粘度)、その差にあたる崩れやすさの指標(ブレークダウン粘度)、冷ました後の最終的な粘り(最終粘度)、冷却で粘りが戻る度合い(セットバック粘度)、そして粘りが最大になるまでの時間と、粘りが出始める温度を自動で記録しました。

キャッサバと大豆の割合で粘りが変わる

ピーク粘度は配合によって1203〜2653センチポイズ(粘りの単位)と大きく異なりました。最も高かったのは小麦粉50%・キャッサバ粉45%・大豆粉5%の配合で、最も低かったのは小麦粉50%・キャッサバ粉35%・大豆粉15%の配合でした。冷ました後の最終粘度やセットバック粘度も、同じく前者が最も高く、後者が最も低いという結果でした。

著者らは、キャッサバ粉の割合を増やすとピーク粘度、トラフ粘度、最終粘度、セットバック粘度が高まると報告しています。冷めたときに粘りが強く戻ることは、でんぷんが再び結晶のように固まる性質を反映しており、著者らはこれが焼き菓子のしっかりした形や固めの食感につながると解釈しています。

一方、大豆粉の割合を増やすと、ピーク粘度やセットバック粘度が下がる傾向がみられたと著者らは述べています。脂質やたんぱく質の多い大豆粉が加わることで、でんぷんの割合が薄まり、水を抱え込む力が弱まるためだと説明されています。また、加熱中の崩れやすさを示すブレークダウン粘度は大豆粉が増えるほど低くなる傾向があり、著者らはこれを加熱を続けても粘りが安定していることの表れと捉えています。

粘りが出始める温度は84.80〜86.45℃、粘りが最大になるまでの時間は5.40〜5.60分で、配合による差は比較的小さいものでした。著者らによれば、大豆粉を増やすとこの温度がやや上がる傾向があり、大豆のたんぱく質がでんぷんと水を奪い合うためだと考えられています。

配合比で食感や加工のしやすさを調整できる可能性

今回の研究で測定されたのは、粉と水を加熱したときの粘りの変化です。著者らはその結果から、キャッサバ粉を多くすればより固くまとまりのある生地に、大豆粉を多くすれば加熱に強く、よりやわらかい仕上がりになると解釈しています。

研究チームは、地元産のキャッサバ粉と大豆粉を組み合わせた混合粉は、割合を変えることで求める性質に合わせられ、輸入小麦への依存を減らす手段になりうると結論づけています。身近な作物の粉を混ぜる割合しだいで、粉の加熱時のふるまいが大きく変わることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Amodu S O(Department of Tourism Management Technology, Rufus Giwa Polytechnic, Ondo State, Nigeria)、Babatunde Ikare O V(Department of Hospitality Management Technology, Rufus Giwa Polytechnic, Ondo State, Nigeria)、James Salami A M(Department of Hospitality Management Technology, Rufus Giwa Polytechnic, Ondo State, Nigeria)、Bamisaye Funmilola(Department of Hospitality Management Technology, Federal Polytechnic, Ado-Ekiti, Nigeria)、Dejo P T(Department of Home Economics, College of Vocational and Entrepreneurship Education, Lagos State University of Education, Odo-Noforija, Epe Campus, Lagos, Nigeria)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amodu S O, Babatunde Ikare O V, James Salami A M, et al. Pasting Properties of Cassava, Wheat, and Soybean Flour Blends. British Journal of Contemporary Research 2026-09-10. DOI: 10.67693/bjcr-vbfqcgd9. 原著ライセンス:CC BY.