著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Revista Multidisciplinar do Nordeste Mineiro
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
グルテンを避ける必要がある人向けのグルテンフリーパスタは、市販品の多くが精製した米粉やトウモロコシ粉、でんぷんを主原料とするため、栄養価が低いと指摘されています。ブラジルの研究チームは、この弱点を補いつつ、食品加工で出る副産物の有効利用にもつなげることを目指しました。
注目したのは三つの原料です。一つ目はソルガム(モロコシ)で、乾燥に強い穀物です。ブラジルでは主に家畜の飼料に使われていますが、フェノール化合物やミネラルを含み、食用としての可能性があります。二つ目はピーチパームで、若い茎の芯が缶詰のパルミット(ヤシの新芽)になります。茎の根元に近い部分は繊維が硬くて缶詰に向かず、捨てられてきました。三つ目はキャッサバで、でんぷんを取り出した後に繊維質の搾りかすが残ります。研究チームは、これらの副産物を粉にしてパスタに加え、栄養面と技術面への影響を調べました。
何をどのように調べたか
パスタの基本材料は、グルテンフリー食品でよく使われる米粉、サイリウム、キサンタンガムです。サイリウムとキサンタンガムは、グルテンの代わりに生地をまとめる働きをします。米粉の一部を、ソルガム粉(30〜60%)、ピーチパーム副産物粉(5〜15%)、キャッサバ副産物粉(5〜15%)に置き換えました。三つの粉の配合割合を高低で組み合わせた8通りに、中間の配合を2回加えた計10試料のパスタを作りました。三つの粉をすべて最大量にした配合8は、米粉を含みません。生地はフェットチーネ状に成形して乾燥させました。
評価した項目は次のとおりです。栄養成分(水分、たんぱく質、脂質、灰分=ミネラルの目安、食物繊維など)、植物由来の成分であるフェノール化合物の総量、そして試験管内の化学的な測定で調べた抗酸化能です。さらに、ゆで時間、吸水率、ゆでた時に湯へ溶け出す固形分の割合(ゆで溶け)、硬さ、色も測りました。配合割合と各結果の関係は、統計的な回帰モデルで分析しました。
主な結果
原料の粉を比べると、ピーチパーム副産物粉とキャッサバ副産物粉は食物繊維が特に多く、100gあたりそれぞれ49.97gと47.11gでした。ソルガム粉は9.42gでした。ソルガム粉はフェノール化合物も比較的多く含んでいました。
パスタでは、食物繊維の量がピーチパーム副産物粉の割合とともに統計的に有意に増えました。100gあたり20gを超えたのは、この粉を10%以上含む配合だけでした。最も栄養面で充実していたのは配合8(ピーチパーム15%、ソルガム60%、キャッサバ15%)です。100gあたりの食物繊維は24.32g、脂質5.24g、灰分2.91g、フェノール化合物211.56mg(没食子酸換算)でした。抗酸化能もABTS法で3.42mg(トロロックス換算)/gと報告されています。著者らは、この繊維量が既存研究で報告されたグルテンフリーパスタの値を上回ると述べています。一方、たんぱく質量には配合による有意な差は見られませんでした。
ただし、配合8はゆで溶けも最も大きく、15.39%でした(全試料では5.54〜15.39%)。ゆで溶けが大きいほど、ゆでた時に形が崩れやすく、歩留まりも下がるため、調理品質の面では望ましくありません。回帰分析では、ピーチパーム副産物粉とソルガム粉の割合が増えるほどゆで溶けが増える傾向がありました。キャッサバ副産物粉には有意な影響は見られませんでした。著者らは、この結果を栄養面の充実と調理品質のトレードオフだとしています。
そのほか、ゆで時間は副原料を多く加えるほど長くなり、5.0〜7.65分の範囲でした。色については、ピーチパームとキャッサバの副産物粉が明るさを増し、ソルガム粉は明るさを下げて赤みを強めました。硬さについては、配合割合で説明する統計モデルが有意になりませんでした。
研究が示すこと
この研究は、捨てられがちなピーチパームとキャッサバの加工副産物を活用して、食物繊維の多いグルテンフリーパスタを技術的に作れることを示しました。同時に、栄養を高める配合ほど調理品質が下がるという関係も明らかにしました。
著者らは限界も挙げています。実際に食べた人の評価(官能評価)は行っておらず、消費者に受け入れられるかは今後の確認が必要です。また、キャッサバに含まれうるシアン化合物の残留量は今回測定しておらず、利用の前にはロットごとの測定が必要だとしています。さらに、分析に使った統計モデルは調べた配合範囲内の直線的な傾向を示すものであり、最適な配合を決めるためのものではないと説明しています。
原著論文の著者・所属:Ellen Nunes Marçal(Universidade Estadual de Ponta Grossa (UEPG), Brasil)、Débora Kwiatkovski(Universidade Estadual de Ponta Grossa (UEPG), Brasil)、Aline Noffke Oliveira(Universidade Estadual de Ponta Grossa (UEPG), Brasil)、Renata Dinnies Santos Salem(Universidade Estadual de Ponta Grossa (UEPG), Brasil)、João Carlos Monteiro de Carvalho(Universidade de São Paulo (USP), Brasil)、Eliane Dalva Godoy(Universidade Estadual de Ponta Grossa (UEPG), Brasil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ellen Nunes Marçal, Débora Kwiatkovski, Aline Noffke Oliveira, et al. Cassava (Manihot esculenta) and Peach Palm (Bactris gasipaes Kunth) By-Products as Potential Raw Materials for the Nutritional Enrichment of Sorghum (Sorghum bicolor)-Based Gluten-Free Pasta. Revista Multidisciplinar do Nordeste Mineiro 2026-10-20. DOI: 10.66104/4ng35m67. 原著ライセンス:CC BY.