この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:npj Science of Food

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ「皮の色」を測るのか

マンゴーは熱帯・亜熱帯アジアで広く栽培され、食べられている果物です。消費者が店先で熟しているかどうかを判断するとき、まず頼りにするのは皮の色です。緑がかったものよりも黄色みを帯びたものが甘そうに見える、という経験は多くの人が持っているでしょう。原著の著者らによれば、こうした色の変化は見た目だけの問題ではなく、熟す過程で起きる生化学的な変化と深く結びついています。緑色のもとであるクロロフィルが分解され、黄色やオレンジ色のもとであるカロテノイド色素が増えるためです。同時に、でんぷんが糖に変わり、有機酸やビタミンCは減っていくと報告されています。

研究チームは、この皮の色を数値として測り、果肉の中身、具体的には可溶性固形分(TSS、いわゆる糖度の目安)とビタミンC含量を推定できないかを検討しました。論文では、これまでの研究は皮の色と甘さや酸味との相関関係を論じるにとどまっていたとされ、そこから一歩進んで色を手がかりにした予測モデルを作ることが本研究の目的だと述べられています。

何をどう調べたか

著者らは、インドネシア西ジャワ州スメダン産の「ハルムマニス」と「ゲドン」という2品種のマンゴーを用いました。熟度70%、80%、90%の3段階の果実を14日間保存し、当初125サンプルから外れ値を除いて50サンプルを解析に使ったと報告されています。なお、TSSの解析とビタミンCの解析では、データの適合性に応じて別々にサンプルが選ばれており、必ずしも同一の果実ではないと明記されています。

皮の色は反射色分光測色計で測定しました。これは果実の表面に当てた光の反射を検出し、色を客観的な数値に変換する機器です。得られる数値はL*(明るさ)、a*(緑から赤への傾き)、b*(青から黄への傾き)という3つの指標です。果実1個につき上部・中央部・下部の3か所を、2つの面でそれぞれ3回測り、平均値を用いています。一方、比較の基準となる中身の値は実際に果実を壊して測定しました。TSSはミキサーにかけて濾した果汁を屈折計にかけ、%Brixという単位で表しています。ビタミンCは高速液体クロマトグラフィーで測定し、100gあたりのmgで表しています。

測定された範囲を見ると、TSSは7.23〜17.71%Brix(平均12.68)、ビタミンCは0.97〜8.12mg/100g(平均4.21)と、かなり幅のあるサンプルが集まっていました。色のほうはL*が37.01〜59.66、a*が−11.63〜−3.37、b*が21.95〜39.89でした。a*がすべて負の値であることは、皮に緑色が残っていることを示します。

報告された主な結果

まず個々の指標の関係について、著者らはa*の値とTSSの間に中程度の正の相関(R=0.52)を認めたと報告しています。つまり赤みが強いほど糖度が高い傾向です。一方、TSSとビタミンCの相関はR=0.098と非常に弱く、この2つの間ではほとんど関係が見られませんでした。

そして色の測定値から中身を推定するモデルの精度について、TSSでは検量(キャリブレーション)時の決定係数R²c=0.94、交差検証時のR²cv=0.93、RPD=4.08という値が得られました。決定係数は1に近いほど予測が実測とよく一致することを意味し、RPDは予測誤差がサンプル間のばらつきに比べてどれだけ小さいかを示す指標です。ビタミンCについてはR²c=0.87、R²cv=0.85、RPD=2.60でした。論文では、TSSのほうがビタミンCより精度が高く、散布図上でも点が回帰直線の近くに密に並んでいたと述べられています。著者らはこれらを「まずまず満足できるモデル」と評価しています。

ただし著者ら自身が限界も挙げています。サンプル数が比較的少ないこと、実験条件が限定されていること、対象とした品質項目が少数であることです。これらがモデルをより広い場面に当てはめられるかどうかに影響しうるとし、さまざまな品種や環境条件での検証が必要だとしています。

この報告が示すこと

皮の色が中身の手がかりになるという、消費者が日常的に行っている判断を、この研究は測定機器を使って数値の関係として確かめようとしたものです。著者らの報告によれば、色の測定値からTSSやビタミンCをある程度推定でき、反射色測定は果実を壊さずに中身を推し量る手法の候補になりうるとされています。特に、糖度とビタミンCの間にはほとんど相関がなかったという結果は、「甘いから栄養が多い」といった単純な結びつけができないことを示しており、色という一つの手がかりからでも、別々の成分をそれぞれ個別に推定する必要があることを物語っています。

著者:Kusumiyati Kusumiyati(Department of Agronomy, Faculty of Agriculture, Universitas Padjadjaran, Jatinangor, Indonesia)、Wawan Sutari(Department of Agronomy, Faculty of Agriculture, Universitas Padjadjaran, Jatinangor, Indonesia)、Unang Supratman(Department of Chemistry, Faculty of Mathematics and Natural Sciences, Universitas Padjadjaran, Jatinangor, Indonesia)、Agus Arip Munawar(Faculty of Agriculture, Universitas Syiah Kuala, Banda Aceh, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kusumiyati Kusumiyati, Wawan Sutari, Unang Supratman, et al. Color-based prediction of mango total soluble solids and vitamin C using reflectance color measurement. npj Science of Food 2026-09-11. DOI: 10.1038/s41538-026-01120-y. 原著ライセンス:CC BY.