この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ果物の「搾りかす」に注目するのか

世界では、ビタミンやミネラルといった微量栄養素の不足が今も課題となっています。これに対し、食品の栄養価を高める「食品強化(フォーティフィケーション)」が、持続可能な対策の一つとして広がってきました。近年は、精製された栄養素を添加する従来型の方法に加えて、天然由来の食材そのものを使って別の食品の栄養を補う「食品による食品の強化(food-to-food fortification)」への関心が高まっていると、著者らは述べています。

著者らが着目したのは、果物の加工工程で大量に生じる副産物です。皮、種子、仁(核の中身)、搾汁後に残るパルプ(ポマース)などがこれにあたります。論文によれば、これらにはビタミン、ミネラル、食物繊維、植物由来の化学成分(フィトケミカル)が含まれており、実験研究では抗酸化・抗菌・抗糖尿病・抗炎症といった性質が示されてきました。食品に取り込むことができれば、栄養価の向上と廃棄物の有効利用を同時に進められるのではないか――これが本総説の出発点です。

どのように既存研究を整理したか

本研究は新たな実験ではなく、既存の研究を集めて整理する総説(レビュー)です。著者らは手順を定めた文献検索を行い、集めた知見を複数の観点で分類してまとめました。具体的には、副産物の種類、主要な生理活性成分・栄養成分、どんな食品(食品マトリックス)に加えたか、添加量、栄養面・技術面への影響、味や香りなど官能面の反応、加工中の安定性、体内での取り込まれやすさ(バイオアクセシビリティ)、安全性、そして産業としての実用性です。

とくに重点が置かれたのは、乾燥、焼成、押出成形(エクストルージョン)、保存、消化管での消化といった過程が、生理活性成分の安定性や利用しやすさにどう影響するかという点です。加工や消化を経ても成分が保たれるかどうかは、実際の食品で効果を考えるうえで欠かせない視点だと位置づけられています。

総説が報告した主な結果

得られた知見として著者らは、果物副産物の添加によって、パン・焼き菓子類、シリアル類、乳製品、飲料といった製品の食物繊維量、ポリフェノール(フェノール性化合物)の含有量、抗酸化能などの機能的な特性を高められることを示す証拠があると報告しています。ただし、その効果の大きさは一定ではなく、どの副産物を使うか、加工条件、添加量、そして加える食品の種類によって大きく左右されるとしています。

一方で、実用化を妨げる制約も整理されました。味や食感が消費者に受け入れられるか、原材料の品質がばらつくこと、汚染物質のリスク、規制上の要件、技術面・経済面での実現可能性が、産業応用における重要な課題として挙げられています。

この整理が示すこと

著者らの結論は、果物の副産物は食品による食品の強化や、資源を循環させる食システムにとって有望な「補完的」原料だというものです。同時に、従来の微量栄養素強化剤をそのまま置き換えるものとみなすべきではないと明確に述べています。

評価にあたっては、加える食品ごとに、栄養面・技術面・官能面・安全性・体内での取り込まれやすさの証拠を個別に確かめる必要がある――これが本総説の要点です。捨てられてきた部分を活かす発想の可能性と、その可能性を慎重に見極める必要性の両方を、この整理は示しています。

著者:Atul Khalangre(Department of Horticulture, Lovely Professional University)、Smruthi Jayarajan(Department of Horticulture, Lovely Professional University)、Anis Mirza(Department of Horticulture, Lovely Professional University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Atul Khalangre, Smruthi Jayarajan, Anis Mirza. Food fortification using fruit-processing by-products and their derived bioactive compounds: opportunities, challenges, and future perspectives. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-22. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1877575. 原著ライセンス:CC BY.