パンやパスタの原料であるデュラム小麦。製粉の過程では、ふすま(表皮部分)や胚芽といった副産物が生まれます。これらは栄養素を多く含む一方で、パンなどの主食に活用する取り組みは発展途上にあります。今回紹介する研究は、こうした製粉副産物を乳酸菌で発酵させることで、パン作りに役立つ「バイオ原料」に変えられないかを調べたものです。
サワードウ(酵母や乳酸菌を使った伝統的な発酵種)がパンの風味や栄養に良い影響を与えることは知られていますが、この研究では、通常は廃棄されがちな製粉副産物を発酵させることで、サワードウのような役割を果たす原料を作れないかという発想で実験が行われました。
研究でわかったこと
研究チームは、小麦のふすま粉または胚芽粉を、Lactiplantibacillus plantarum ITM21Bという乳酸菌株を用いて37℃で14時間発酵させ、それぞれ「Bio21B-B」(ふすま由来)、「Bio21B-G」(胚芽由来)と呼ばれる2種類のバイオ原料を作製しました。
発酵後の分析では、どちらの原料も乳酸が豊富になっていた一方、総タンパク質含量はBio21B-Bで87%、Bio21B-Gで95%減少していたと報告されています。また、胚芽由来のBio21B-Gでは、遊離アミノ酸全体とL-グルタミン酸の含量が増加していたことも示されています。
まず、これらのバイオ原料を小麦粉の4~7%を置き換える形でパン生地に加える予備的な試験が行われましたが、この配合レベルでは、パンを機能性成分でしっかり強化するには十分でないことが示唆され、より高い配合割合が必要と考えられました。
そこで研究チームは、凍結乾燥させた発酵バイオ原料を用い、小麦粉の24%を置き換えたパンを作製しました。栄養面の分析では、発酵バイオ原料を使ったパンは、未発酵の粉を使った対照パンや標準的なパンと比べて、有機酸やアミノ酸(L-グルタミン酸、アラニン、アスパラギン酸、グリシン、アルギニン)、そして総タンパク質含量が高くなっていたと報告されています。
食感についての評価では、発酵させた胚芽ベースの原料を使ったパンにおいて、対照となるパンと比べて硬さが低減し、噛みごたえ(咀嚼性)やパンの体積が改善するという、発酵によるプラスの影響が見られたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、製粉副産物を活用した新しいパン用原料の可能性を探る一つの取り組みであり、これによってパンの健康効果や品質が確定的に証明されたわけではありません。論文中でも、パンの配合や製パン特性をさらに最適化するための研究が今後必要だと述べられています。
特にふすまベースの原料を使った際の食感面の変化については、要旨の中で詳しく触れられていない部分もあり、今後の研究成果を待つ必要があります。あくまで一つの研究結果として捉えることが大切です。
まとめ
この研究では、デュラム小麦の製粉時に生じるふすまや胚芽を乳酸菌で発酵させることで、パン作りに活用できるバイオ原料を作る試みが行われました。特に胚芽由来の発酵原料を24%配合したパンでは、有機酸やアミノ酸、タンパク質含量の増加に加え、食感面でも良い変化が見られたと報告されています。食品ロス削減や副産物の有効活用という観点からも、今後の研究の展開が注目されるテーマといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:デュラム小麦製粉副産物の発酵凍結乾燥バイオ原料生産によるパン製造への高付加価値化(フード・アンド・バイオプロセス・テクノロジー・2026年07月)