著者の所属・活動拠点の国は、エジプト、サウジアラビアです。

掲載誌:Journal of Clinical Medicine

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

季節が移り変わると、気分や睡眠、食欲、活力、人付き合いの度合いが変わることがあります。こうした季節による変化の感じ方には個人差が大きく、著者らは、加齢による体の変化を抱える高齢者は特に影響を受けやすい集団だと位置づけています。

人には、朝早く活動するのを好む「朝型」と、夜遅くまで活動するのを好む「夜型」といった体内時計の傾向の違いがあります。また、夜間にたくさん食べてしまう行動が目立つ「夜間摂食症候群」と呼ばれる状態も知られています。季節による変化、朝型・夜型の傾向、夜間の食行動の関係は、それぞれ個別には調べられてきました。しかし、その間を睡眠の質がつないでいるかどうかを、地域で暮らす高齢者についてまとめて検討した研究はなかったと著者らは述べています。

そこで研究チームは、年間を通じて日照時間や気温の変化が大きいエジプトで、地域在住の高齢者を対象に調査を行いました。季節による変化と、朝型・夜型の傾向や夜間の食行動との関連のうち、どの程度が睡眠の質を通じた関連として説明できるかを調べることが目的です。

何を調べたか

調査は、ある一時点で多くの人のデータを集めて関係を見る「横断研究」として、2025年6月10日から9月15日にかけて実施されました。対象は、エジプト社会連帯省の監督下にある高齢者向け社交クラブに定期的に通う60歳以上の人たちです。認知機能の低下が疑われる人や、臨床的に問題となる抑うつ症状がある人は、事前の簡易検査で除外されました。

参加者は質問票に答えました。内容は、季節による睡眠時間・気分・体重・食欲・活力・社交の変化の程度、朝型・夜型の傾向、夜間の食行動、過去1か月の睡眠の質です。睡眠の質は「ピッツバーグ睡眠質問票」で測りました。点数が高いほど睡眠の質が悪く、5点を超えると睡眠の質が悪いと判定されます。身長と体重も測定されました。

分析では、各項目どうしの関連を調べたうえで「媒介分析」を行いました。これは、季節による変化と朝型・夜型の傾向や夜間の食行動との関連を二つの部分に分けて見積もる方法です。一つは睡眠の質を経由する部分、もう一つはそれ以外の部分です。

主な結果

参加者は336人で、平均年齢は66.8歳でした。全体の68.2%が、中等度から重度の季節による変化を報告しました。冬には睡眠時間が長くなる(69%)、食べる量が増える(64.6%)と答えた人が多くいました。夏には眠りにくさ(67%)や食べる量の減少(64%)を挙げる人が多くいました。

朝型の傾向を持つ人は56.9%で最も多く、夜型は27.4%、中間型は15.8%でした。夜間の食行動については、23.2%が夜間摂食症候群の基準を満たしました。軽い症状を含めると、73.2%に何らかの夜間の食行動の症状が見られました。睡眠の質が悪いと判定された人は85.1%にのぼりました。

項目どうしの関連を見ると、季節による変化が大きい人ほど睡眠の質が悪い傾向がはっきり見られました。季節による変化や睡眠の質の悪さは、夜間の食行動の症状の強さとも関連していました。また、夜型の人ほど季節による変化が大きく、睡眠の質が悪く、夜間の食行動の症状を持つ傾向がありました。

媒介分析では、季節による変化と朝型・夜型の傾向との関連のうち約41%が、睡眠の質を経由する部分として推定されました。夜間の食行動との関連では約37%でした。どちらの場合も、睡眠の質を考慮した後も季節による変化との直接の関連は残っていました。このため著者らは、睡眠の質が関係の一部を担う「部分的な媒介」と結論づけています。

この研究が示すこと

著者らは、この結果を因果関係の証明ではないと強調しています。データは一時点で集めたもので、季節による変化も参加者が振り返って答えたものです。そのため、どちらが先に起きたのかは分かりません。睡眠の質は、統計モデルの上で両者をつなぐ要因として位置づけられたにとどまります。気温や光を浴びる量などの環境要因も直接は測っていません。

それでも、エジプトの地域在住高齢者では、季節による変化の感じ方、朝型・夜型の傾向、夜間の食行動が互いに結びついていました。その関係の中で、睡眠の質が重要な位置を占めていることが示されました。高齢者の食行動と季節や体内時計の関係を考えるとき、睡眠の質にも目を向ける意義があることを、この研究は示唆しています。

原著論文の著者・所属:Noha Gamal El-Sayed Ghoniem(Department of Gerontological Nursing, Faculty of Nursing, Zagazig University, Zagazig 44519, Egypt)、Mona Metwally El-Sayed(Department of Community, Psychiatric, and Mental Health Nursing, College of Nursing, Qassim University, Buraydah 52571, Saudi Arabia)、Basema Alharbi(Department of Community, Psychiatric, and Mental Health Nursing, College of Nursing, Qassim University, Buraydah 52571, Saudi Arabia)、Wagida Wafik(Department of Community Health Nursing, College of Nursing, Zagazig University, Zagazig 44519, Egypt)、Amira Mohammed Ali(Department of Psychiatric Nursing and Mental Health, Faculty of Nursing, Alexandria University, Smouha, Alexandria 21527, Egypt)、Sahar Mohammed Mohammed Aly(Nursing Leadership and Management, Faculty of Nursing, Port-Said University, Port-Said 42526, Egypt; Nursing Leadership and Management, Makkah National College, Makkah 21995, Saudi Arabia)、Fatma Mohammed Ahmed(Department of Community Health Nursing, College of Nursing, Zagazig University, Zagazig 44519, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Noha Gamal El-Sayed Ghoniem, Mona Metwally El-Sayed, Basema Alharbi, et al. Seasonal Variation, Circadian Patterns, and Night Eating Syndrome Among Older Adults: The Mediating Role of Sleep Quality. Journal of Clinical Medicine 2026-10-20. DOI: 10.3390/jcm15208163. 原著ライセンス:CC BY.