日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Food Quality and Preference

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食べ物の風味は、味覚だけでなく、視覚や触覚など複数の感覚が組み合わさって形づくられると考えられています。これまでの研究の多くは口の中での感じ方に注目してきましたが、包装を手に持ったときの触り心地も、口の中での食べ物の感じ方と関連することが報告されてきました。こうした、ある感覚の印象が別の対象の評価に移る現象は「感覚転移」と呼ばれます。

一方で、性質の異なる食感の層を組み合わせた「複合食品」について、手で触れる素材の触感がどう関わるかは十分に調べられていませんでした。そこで研究チームは探索的な研究として、パリッとした外側の皮となめらかなバニラアイスを組み合わせた「もなかアイス」を題材に、試食中に手に持つ素材の触り心地によって、口の中の食感の評価や好ましさの評価が変わるかを調べました。

どのように調べたか

実験1では、24人の参加者が8種類の素材の触り心地を評価しました。素材は、何も付けていない樹脂(ABS)製のホルダー、滑り止めシート、鉛、フェルト、紙やすり、綿、両面テープ、そして製品自体の包装フィルムです。この評価から、素材の触感が幅広く分散していることが確認されました。

実験2では、同じ参加者が各素材を手に持ちながらもなかアイスを試食し、パリパリ感、なめらかさや柔らかさといった口の中での触感、味、全体的な好ましさを評価しました。

主な結果

論文によると、パリパリ感の評価は、鉛を持ったときのほうが、綿や滑り止めシートを持ったときより有意に高くなりました。また、なめらかさと柔らかさの評価は、綿を持ったときのほうが紙やすりを持ったときより高くなりました。著者らは、こうした違いから、手で感じる外部の触感の手がかりが、複合食品の口の中の食感の評価と関連していることが示唆されると述べています。

好ましさの評価は、フェルトを持ったときのほうが、両面テープや滑り止めシートを持ったときより高くなりました。ただし、この好ましさの違いには、特定の食感の評価の違いは伴っていなかったと報告されています。

研究が示す意味

この研究は、複数の感覚が風味の感じ方に関わるという研究の対象を、食感の層を組み合わせた複合食品にまで広げたものです。著者らは、包装の触り心地が、複合食品の品質の感じ方に関わる要因の一つになりうると示唆しています。

原著論文の著者・所属:Masaki Ohno(Ritsumeikan University, Nojihigashi, 1-1-1, Kusatsu, Shiga, Japan; The University of Tokyo, Hongo, 7-3-1, Bunkyo–ku, Tokyo, Japan)、Yuto Ishizu(The University of Tokyo, Hongo, 7-3-1, Bunkyo–ku, Tokyo, Japan)、Kizashi Nakano(The University of Tokyo, Hongo, 7-3-1, Bunkyo–ku, Tokyo, Japan)、Takayuki Yamamoto(Morinaga & Co., Ltd., R&D Institute, Shimosueyoshi, 2-1-1, Tsurumi-ku, Yokohama, Kanagawa, Japan)、Ryo Tanaka(Morinaga & Co., Ltd., R&D Institute, Shimosueyoshi, 2-1-1, Tsurumi-ku, Yokohama, Kanagawa, Japan)、Hitomi Tsuchiya(Morinaga & Co., Ltd., R&D Institute, Shimosueyoshi, 2-1-1, Tsurumi-ku, Yokohama, Kanagawa, Japan)、Takuji Narumi(The University of Tokyo, Hongo, 7-3-1, Bunkyo–ku, Tokyo, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Masaki Ohno, Yuto Ishizu, Kizashi Nakano, et al. Extrinsic hand-feel textures and oral-somatosensory texture ratings of a composite food: A study with monaka ice cream. Food Quality and Preference 2026-10-27. DOI: 10.1016/j.foodqual.2026.106156. 原著ライセンス:CC BY.