この研究は、ペルー、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Processes
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
生食に向かないアボカドの果実は、食品産業や化粧品産業で価値の高い油の原料として使われることがあります。研究チームは、この油をどのような条件で搾るかによって、油の性質がどう変わるのかを調べました。
着目したのは二つの要因です。一つは搾油時の温度(20℃と80℃)、もう一つは原料となるアボカドの品種です。これらが油の色、抗酸化成分、脂肪酸の組成、物理化学的な性質、けん化価、栄養や健康に関する指標、そして安定性にどう影響するかを評価することが目的とされています。
調べた方法
著者らは、Fuerte(フエルテ)、Gween(グウェン)、Hass(ハス)、Topa Topa(トパトパ)、Zutano(ズタノ)という5つの品種の果実と、そこから得られた油を対象としました。搾油は圧搾によって行われ、20℃と80℃という二つの温度条件が比較されています。
評価項目には、葉緑素(クロロフィル)やカロテノイド、トコフェロール(ビタミンEの仲間で、油の酸化を防ぐ働きをもつ成分)といった抗酸化成分の量のほか、油の密度や粘度、酸度、屈折率、過酸化物価、ヨウ素価などが含まれます。また、油が酸化しにくさを示す「酸化安定性指数」を、110℃の条件下でRancimat法という装置を用いて測定しています。
報告された主な結果
論文によると、調べた項目の大半で、品種間にも、また二つの搾油温度の間にも、統計的に意味のある差(p≤0.05)が認められました。
生のアボカド果肉に含まれる脂質は100gあたり13.6〜15.7gと報告されています。搾油の収率は20℃で36.5%、80℃で49.8%であり、温度を上げたほうが多くの油が得られました。一方で、成分の面では低温のほうが有利な点がありました。クロロフィルは20℃で61.5mg/kg、80℃で43.8mg/kgと、低温のほうがよく保たれています。カロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンも、80℃で搾った試料では少なくなっていました。
トコフェロールについては、Gween由来の油が最も多く、平均229.8mg/kgと報告されています。内訳では、搾油温度の影響を受けやすいβ-トコフェロールが最も多く49.10%を占め、次いでα-トコフェロールが38.15%、γ-トコフェロールが12.75%でした。
物理化学的な性質では、80℃で搾った油は20℃で搾った油に比べて密度、粘度、酸度が高く、屈折率、過酸化物価、ヨウ素価は低いという結果でした。110℃での酸化安定性指数は、80℃抽出で9.1時間、20℃抽出で10.4時間と、高温で搾ったほうが低下しています。
この研究が示すこと
著者らは、圧搾によって得られたアボカド油は、どちらの搾油温度でも優れた品質的・技術的特性を保っていたと述べています。そのうえで、この油はサラダドレッシングをはじめとするいくつかの食品用途に適しており、熱に対する安定性を備えていることから加熱調理にも向くと指摘しています。
搾油温度を上げれば収量は増えるものの、クロロフィルやβ-クリプトキサンチンといった成分は減り、酸化安定性も下がる――この報告は、収量と成分保持のどちらを重視するかによって適した条件が変わりうることを、具体的な数値とともに示したものといえます。
著者:Liliana Llaure-Huingo(Instituto de Investigacion Tecnologica Agroindustrial IITA, Universidad Nacional del Santa, Av. Universitaria S/N, Chimbote 02712, Peru)、Fabio Citti(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, Via Celoria 2, 20133 Milan, Italy)、Elza Aguirre(Instituto de Investigacion Tecnologica Agroindustrial IITA, Universidad Nacional del Santa, Av. Universitaria S/N, Chimbote 02712, Peru)、Lorenzo Estivi(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, Via Celoria 2, 20133 Milan, Italy)、Arianna Cervi(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, Via Celoria 2, 20133 Milan, Italy)、Gilbert Rodríguez(Instituto de Investigacion Tecnologica Agroindustrial IITA, Universidad Nacional del Santa, Av. Universitaria S/N, Chimbote 02712, Peru)、Jasmin Zotelo-Villanueva(Instituto de Investigacion Tecnologica Agroindustrial IITA, Universidad Nacional del Santa, Av. Universitaria S/N, Chimbote 02712, Peru)、Andrea Brandolini(Research Centre for Animal Production and Aquaculture (CREA-ZA), Consiglio per la Ricerca in agricoltura e l’analisi dell’economia agraria, Viale Piacenza 29, 26900 Lodi, Italy)、Alyssa Hidalgo(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, Via Celoria 2, 20133 Milan, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Liliana Llaure-Huingo, Fabio Citti, Elza Aguirre, et al. Influence of Cultivar and Press-Extraction Temperature on Antioxidants, Quality and Stability of Avocado (Persea americana Mill.) Oil. Processes 2026-09-04. DOI: 10.3390/pr14172842. 原著ライセンス:CC BY.