蒸しケーキは時間が経つと硬くなってしまうことがあります。これはデンプンが時間の経過とともに変化する『老化』という現象が関係しているとされています。今回紹介する研究では、小豆粉(Adzuki Bean Powder、ABP)を生地に加えることで、この老化を抑えつつ蒸しケーキの品質を高められないかが調べられました。

研究チームは、小麦粉・もち米粉・ヤマイモ粉・タロイモ粉を15:5:3:2の質量比で混ぜた『複合粉』をベースに、小豆粉を0%、8%、16%、24%、32%という5段階の割合で加え、それぞれの特性を比較しています。所属機関を見ると、著者らは中国の研究機関(山東省蚕業研究所、煙台南山学院など)に所属しています。

研究でわかったこと

まず複合粉そのものの性質として、小豆粉の添加量が増えるほど保水力(WHC)が0.97 g/gから1.43 g/gへと有意に上昇したと報告されています。一方、保油力(OHC)は増加した後に減少するという変化を示したとされています。

蒸しケーキに焼き上げた(蒸し上げた)後の品質については、比容積が1.80 mL/gから2.48 mL/gへ、たんぱく質含量が2.17%から2.72%へと増加し、硬さは683.95 gから498.59 gへと低下したことが示されています。また、色については赤み(a*)が有意に増加する一方、明るさ(L*)と粘着性は有意に低下したとされています。抗酸化活性に関しては、総抗酸化能・総還元力・ABTS+・ラジカル消去活性のいずれも、添加量24%のときに最も高い値を示したと報告されています。

保存試験では、4℃で7日間保存した後も、小豆粉を添加したすべての群で硬さが対照群(無添加)より有意に低く保たれていたとされています。

老化を抑えるしくみについては、低磁場核磁気共鳴(LF-NMR)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、X線回折(XRD)、示差走査熱量測定(DSC)という複数の分析手法を用いて調べられました。その結果、小豆粉はデンプンとグルテンからなる構造の中に、水素結合のネットワークを強めることで深く組み込まれていたとされています。特に16〜24%の添加により、水分が効果的に保持され、デンプンの短距離での分子秩序が有意に低下したことが確認されています。深く結合した水(深結合水)の割合は対照群に比べて12.13%から44.19%増加したとされています。さらに、長距離秩序と熱力学の両方の観点からもデンプン分子の再配列が抑えられており、相対結晶化度は12.08%から9.01〜9.15%へ低下し、老化に伴う熱量(老化エンタルピー)は対照群と比べて15.11%から41.49%減少したことが報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の配合比率の複合粉と小豆粉の組み合わせについて、実験室レベルで品質と老化抑制効果を検証したものです。結論として、16〜24%程度の小豆粉添加が蒸しケーキの品質向上と老化抑制の両面で効果的であったとまとめられていますが、これは一つの研究で得られた結果であり、異なる配合や保存条件、あるいは他の材料の組み合わせでも同様の結果が得られるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。

まとめ

本研究では、小豆粉を複合粉に加えることで、蒸しケーキの保水力や比容積、たんぱく質含量が高まり、硬さや粘着性が変化することが示されました。また、16〜24%という添加割合で、デンプンの老化を抑える働きが特に顕著であったことが、複数の分析手法によるメカニズム解析からも裏付けられたとされています。今後、実際の食品開発や消費者の嗜好とどう結びつくかは、さらなる研究の積み重ねが必要と考えられます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:小豆粉が蒸しケーキの品質と老化抑制特性に及ぼす影響(DOAJ(オープンアクセス学術誌ディレクトリ)・2026年09月掲載予定)